不思議な人
不思議な人だ。
私のつらい話も嬉しかった話も聴いてくれる。
悲しいときは、落ち着いた声で。
喜ぶときは、少し明るい声で。
話にあわせて声色を変えてくる。
お金を払っているのだから、あなたはお金にあったぶんだけ聞いているだけかもしれない。
それでも、不思議だ。
他人からすれば私の不幸は蜜の味で、私の幸せは木炭のように食べられるものじゃないと思っていた。
違和感なくスムーズに進む会話、この世に存在するんだ。
あれ。あれあれ。
いつのまに私は憎たらしい人になったんだ?
他人の不幸は悲しい。
他人の幸せは、幸せだ。
そう思っていた頃があったはずなのに。
それは私自身にもあてはまる話のはずなのに。
いつ? どこから?
そんな人はいないと思い始めたのは、どこから?
不思議な人に救われた。
喜びは共有していい。
悲しみも話して大丈夫。
この人は、私を否定しない。
心がふわふわしている。