とうとう人類の敵は勇者に
この世界の空も、元いた世界の空も対して変わらないんだという結果に残念。そう思いながら夜明け前の空を飛ぶ。
(にしても本当になんで私がこんな世界に呼ばれたんだろ?絶対に不適切だろ)
黒龍はこの意味不明な運命に、意義を申し立てるかの様に低く唸る。
そしてまだ出てない、太陽をキッと睨みつけると
(・・・・あ)
それに怒ったのか、徐々に空が明るくなり、雲の間から本当の太陽が顔を出す。
なんだろう、いつもより眩しく感じる!
私は目をそらす意味を込めて地上を見下ろし、城を探した。
(あれかな?)
眼に映るは、大きな城下町そして立派なお城。
私の中の本能が、あれだ!と確信したので、この場から急降下し、地面にぶつかりそうな所で、人間の姿に戻った。
「よっと・・・・さて」
辺りを見渡す。
まだ朝が早いのに、もう人の行き来が出始めている。
さすがは立派なお城を持つ国だ、田舎とは違う、ならば私もそれに会うように社会的に行動しよう・・・・
「かなー?」
と思い始めた矢先、
周りに気配を感じたので、素早く付近の状況を確認すると
兵士らしき人達が武器を持って、私を囲んでいるのに気づく。
「何用ですか?私は姫様と話がしたいだけですが」
「なんだと!!。・・・・。いやそれよりお前さっき何処から入った!?」
ニヤァ
「どこからって空からさ」
不敵な笑みを浮かべ空を指差す私を見てと兵士たちは、さらに警戒を強める。
周りの人達はというと、野次馬と距離を取る人達とで別れている。
「お前は魔王の手先なのか!?」
首を横にふり、否定する。
そして、
「質問が多いなぁ。私はただ周りから勇者勇者と言われ続けてる哀れな人類の敵」
「人類の敵!?、お前みたいな奴が姫様に会えると思ったのか?!姫様の元へと行かせるわわけがない!!」
と団長らしき人に、振られた私は
「あーそう残念、じゃあ」
術で槍を形成し
「潰しあうしかないようだ」
殺る気満々な表情で槍を構える。
「待ってください!」
いざ戦闘が始まろうとする空気の中で、一人の女性が止めに入る。
「なるほどー、これは良いタイミングってやつだねー」
槍を消滅させて、彼女と向き合った。
「罰様!・・・お待ちしておりました!。皆さんこの方こそが伝説の勇者様です!」
ミネル姫が高らかに宣言すると、うおぉー!と熱い歓声と勇者様コールも出てきて少し恥ずかしい。
でも今は恥ずかしがってる場合じゃないだろう。
「も・・・申し訳こざいません!勇者様!そうとは知らずとんだ無礼を」
団長含め兵士達は凄く重く受け止めた顔で謝り出すので「どうでもいいよ、そんなこと」
の一言で簡単に流した。
「それより、姫、貴方が言う勇者になってあげても良い、その代わり」
「話の続きは王位の間で聞きます。ここでは落ち着かないでしょう?」
ニコリ、そう笑った姫は私の手を引いて、城まで連れてってくれた。
道中で、何でかは知らないがお菓子みたいな食べ物を買ってくれた。普通に美味しかったけどさ、買う必要あったのか?なんてひねくれた私は感謝を述べず疑問の言葉を口にした。
そしたら彼女は
「こうやって友達と、城下町を歩き回るの初めてだからかもしれません」
貴方は今姫としてではなく、一人の少女として優しく微笑んだ事に意外で目を見開く。
でも
それで終わりではない。
だって私は
[生き物の命を糧として生きる者]
だからさー
普通の人間ごときが、しかも罪を犯す事も知らないであろう姫が私を友と呼ぶのは間違ってる。
だけどそれをあえて言わず目を細めて
お得意の偽りの笑顔で肯定した。
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さて今まで色々あったが何とか無事に辿り着くと
すぐに姫の自室に連れ込まれて今は二人きりの状態。
「・・・・ここなら誰も来ません。用件を、勇者様」
さっきとは別人みたいな真面目な表情で、私を見る。
「簡潔に言うと私はこの世界の人じゃない。だから」
「私の力で元の世界へ戻して欲しいと」
「話がはやくて助かる」
「歌にもありました、他世界から来る者は優しき勇者であると、いずれこの力を使わなければ事は予想していました。きっとこの為の力なんでしょう。
分かりました、ですがこちらからも条件が」
「分かってる、私は勇者になって魔王を討伐すればいいんだろ?」
「罰様!」
キラキラな眼差しを向けられ、目をそらす。
「勘違いするな、一時的な約束だ」
「それでも!本当にありがとうございます罰様!いえ勇者様、国の代表として私からお礼を申し上げます!」
「では早速魔王を討伐しに」
部屋から出ていこうとして、ドアノブ触れた時。
「お待ちください、罰様!お一人では無謀です!」
「じゃあどうしろと」
「まずは仲間を集めましょう、私もその旅についていきます!ので・・・・改めまして、よろしくお願いします!」
てれれーテレレッ!
効果音と共に現れる
ミネルが仲間になりましたというテロップ。
「ねぇこの世界ではテロップとか出るものなの?」
と聞いたら
「??どうゆうことでしょうか?罰様」
なるほど、私が異常なだけか
と一人悲しく納得した。