40話 枷外し
「うわああああぁぁぁぁッ!!!?!???」
悪夢と言っていいほどの最悪な夢。
いや…夢だったのかすら怪しい。
「…はぁ…はぁ…」
あの貫かれた感触…!
お腹を触るがそこにはしっかりと肉があった。
『大丈夫かァ?』
「…ろ…ギア」
ロギアだ。
「はぁ…はぁ……すぅぅ……はぁぁぁ…。うん、大丈夫」
あれはただの夢だ。
何も心配することなんてない。
それよりも
「ごめん。僕の注意力もそうだし、甘かった。この場所を危険に晒したのは許せることじゃないけど、本当にごめん」
『…いや、俺様も悪かったァ。ついカッとなっちまったァ』
「言ってることは正しいよ」
『……起きてすぐ言うようで悪いが、自分の力量はしっかりと把握しろォ?何ができて何ができないのか、それを知るだけでも危険は少なくなるからなァ』
「わかった」
「「………」」
どうにも気まずい空気が流れるが…そういえば
「ギガントパスは?」
気配を感じない。
『あいつァ賢いからなァ。集約した魔素を感じて一目散に逃げていったぞォ』
「そっか」
なら当初の目的は達せれるわけだ。
「…ちょっと一回お墓行っていい?」
『トイレ行くみたいに言うなァ』
「…ふふ!」
『ヒヒャヒャヒャ!また何かあったら怒鳴ってやるからヨォ、いつも通りでいやがれ』
「…うん!」
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
『いいかァ?オマエはいつも本気で何かをする時、どんくらいの力でやってやがる?』
「本気なら全力でやってるけど?」
『そうだよなァ。だがそれは全力じゃねェ』
「…いや…全力でやってるよ?」
本気で何かをするとき、全力でやってないわけない。なのにロギアは全力じゃないと言う。言ってる意味がわからなかった。
『何言ってんのかわかんねぇ顔してるなァ。少し話は変わるがァ、悪魔が最強な理由はなんだァ?』
悪魔が強い理由。
それは
「古代魔法とか魔力伝導率の高い角とかがあるからじゃないの?」
『マァそれもあるがァ、だからってここまで差はひらかねぇもんだ。よぉく聞けェ?悪魔ってぇのァ、【枷】を外せるんだァ』
枷
それはこの世界にいるすべての生物が生まれながらに持っている抑制の鎖。
人は本気で全力で何かに取り組む時、100%力を出している。そう脳は解釈をしているが、実際のところは30〜40%ほどしか出せていない。生物の体は壊れないように上手くできている。
しかし、この枷を外すことができるタイミングというのもある。それは、危機的状況に陥った時。
『オマエも一度経験があるだろォ?』
「竜との戦いの時?」
『ちげェ』
それ以外に思い当たることなんてないけど…
『いただろォ?路地裏でオマエをボコボコにしたやつがァ!』
「…あっ!あの時か!」
『そうだァ!あの時放った一撃はァ、枷がしっかりと外れていたァ!悪魔は危機的状況じゃなくても自分の意思で枷を外せるからなァ!常に100の力を出せちまうからクソツェぇんだァ!』
たしかにあの時、自分でもびっくりするほど脳が落ち着いていたし最高の一撃が出せていた。
悪魔はそれが自分でできる…。でも…
「体が壊れないように枷があるんでしょ?その枷って外せていいものなの?」
『よくねェ。だが外してもいいように体を作り変えるぞォ♪』
それは悪魔の微笑み。
これから起こる何かに、僕の頭は警鐘を鳴らしていた。
ーーー絶対にやばいと。
『オマエはいつも空気中の魔素で魔法を使ってるだろォ?どんな感じだァ?』
「ど、どんな感じ?」
『あァ。体が疲れたりするかァ?』
「いや、疲れないし、たぶん動ける時間が長い…かな?」
『そうだァ。普通の魔法は自分の魔力を使うから無くなったらもう使えねぇ。だが古代魔法は別だろォ?しかも魔力っつぅのは体にねぇと動かせねぇ。つまりィ…』
「…つまり?」
『吸収すればするほど体は動くし疲労も回復するわけだァ。テメェは慣れてないから少し疲労が出る時もあっただろうが本来は逆だァ。魔力ってのはあればあるだけ体にいい影響を及ぼす』
だから
ーーー・・・テメェにはまず自身の魔力の使い方と魔力容量を増やしてもらう
『魔力容量が増えれば、吸収できる魔素も多くなる。最高の循環の出来上がりだァ。この状態ができたら次ァ枷の外し方と悪纏魔装の練習だァ。てんこもりだがァ、ざっと半年ぐらいでマスターしてもらうからなァ……覚悟しとけェ!』
「お、おう!!」
もう何言ってるのかよくわからなかったけど…めちゃくちゃきつそうなのだけはわかった。
しかし、全てを全力で取り組む。
それしか僕ができることはないし、強くなれるならなんでもするよ。
こうしてここから、エクスの進化がまた始まる。
☆☆☆☆☆→★★★★★
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