32話 華麗な土下座
それからしばらくロギアを待っていたが一向に出てくる気配はなく……
「もしかして出口ここじゃない?」
そんな不安がよぎった。
ぐぅぅぅ
と腹の音が部屋に響く。
「はぁ……どうするかなぁ」
部屋の外に出て食べれそうな魔物でも狩ってこようか。
そう思い、扉を開けようとした時、嫌な予感がした。うまく説明はできないが、もやもやっとした、変な感じ。
「なんだ?」
それは急に来た。
ゴゴゴゴゴッ!
と洞窟が揺れ、次には
ドスッ……ドスッ!と何かが地面を強く踏む音がした。
とても聞き覚えのある。
ついさっきまで聞いていた音。
おそらく、この扉の先には、
ーーーギガントパスがいる
しかしこの部屋に面した洞窟はギガントパスが入れるほど大きくない。
(一体どうやって…)
扉を開けて見たい気持ちはあるが、ここでは逃げれないし、暴れられたら一瞬で生き埋めになるだろうこともわかる。
剣もない状態では無謀すぎるためただ過ぎ去るのを待つこと。
それが最善だった。
ドスッドスッ
ドスッドスッ
…ドスッ……ドスッ
…………
「ふぅ…」
上を向くと一面、絵。
「強いんだろうな…」
龍と悪魔と天使。
地面にいる人が逃げ惑っている様はその3種族が圧倒的な存在なんだとわかる。
もしかしたらランクXと同じぐらい強いのかもしれない。
もう生きていないのだろうか。
生きていればぜひ、一度は戦ってみたい。
ロギアにも聞いてみよう。
昔の大戦の話や種族のこと。
その強さの秘密なんかも聞いてそれを身につけていったら…もっと強くなれる。
「ふふふ」
夢が広がるエクスだが、まずは合流しなければ話にならない。
休憩を終え、外に出ようとドアノブを回してみると洞窟内は真っ暗だった。
「あれ?」
こんなに暗かったっけ?
「……んなわけあるか。【雷装雷魔】」
ーーーチャージ
「【刺雷】」
ランクllの技を黒い空間向けて放つ。
雷を凝縮した遠距離でできる攻撃だ。
当たったところが熱で溶け始め、その瞬間、断末魔が響いた。
ぐろぉぉぉおおお!!
洞窟が揺れ動くが、部屋が崩れることはない。
開けたドアの先には苦しんだギガントパスがいた。
三つ目が一斉に僕をみる。
ニヤァ
苦しんでいたのは嘘なのか、演技なのか、口角を吊り上げて笑う姿は痛みなど感じていないかのようだった。
通路いっぱいに敷き詰まったギガントパスの体は洞窟を壊す勢いで動き始めた。
しかし…どういうわけかエクスのいる部屋は全然揺れもしないしギガントパスは壊そうともしない。
「干渉できないのかな?」
ヘルへイムにある部屋だ。
何か古代魔法とかで守られていてもおかしくない。
ギガントパスはその大きな三つ目でひたすらエクスを見ていた。
ただただ見て、口角を吊り上げていた。
「気味悪いな」
人間が大好物なら普通すぐに食べようとするはず。
そうじゃなくても干渉できないなら悔しい反応をするのではないか。
そんな考えが脳裏をめぐるが、魔物の習性や考えてることを理解することは無理と結論を出し、部屋の中でギガントパスを警戒することにした。
もしかしたら油断するのを待っているのかもしれないから。
そんな思いはまったくの的外れで、しばらくしてもギガントパスが襲ってくることはなく……待望の魔法陣が青色に輝き出した。
そしてそこから現れたのは、真っ黒な剣。
ロギアだった。
『まずは土下座ァ!話はそれからだァ』
「はい、すみませんでした!」
無駄な動きのない、華麗な土下座をしてロギアを出迎えた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
『テメェが俺様を投げたことは万死に値するがァ、こうして生きてここまで来れたからなァ。そこのデカブツぶっ飛ばしたら許してやるよォ』
「いや、それ万死だ。絶対死ぬやつだ」
ランクlllだぞ?
あのでかいのランクVllの災害指定魔物だぞ?
無理だろ。
『まァ、オマエじゃプチっと食われて終いだァ。だがなァ、ちっとは抗えるようにこれからオマエにはもう一つの魔法【悪纏魔装】を覚えてもらうぞォ。と言ってもクソ簡単だがなァ』
「よかった…。ちなみに悪纏魔装ってどういった魔法なの?」
僕は魔法名しか知らない。
あの時、それ以外のことを教えてくれなかったから。
『テメェは悪魔って知ってるかァ?』
「うん、昔にいた最強種ってさっき聞いた」
『んア?誰にだァ?』
「赤ん坊に…あ、サ『大丈夫だァ。赤ん坊でわかったァ』」
「そ、そっか」
あいつ、ロギアにも赤ん坊って思われてたんだな。
「ていうか、なんで死んだ人間がここにいるの?過去の亡霊って言ってたけどどういうこと?腕を見つけるのもすごく気になるけど、この壁の絵のことも知りたい」
いざロギアを目前にすると知りたいことがいっぱいありすぎて、次々質問してしまった。
『ちょうどいい機会だァ。色々教えてやる』
☆☆☆☆☆→★★★★★
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