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相棒と世界最強  作者: だんちょー
19/43

19話 成長

 



 まだロギアには見せたことがなかった僕の技。

 今できることを全力でしよう。


「うざってぇ。とりあえず100発は殴らせろ」


 憤慨した冒険者は拳をぼきぼき鳴らしながら歩み寄ってくる。


 ランクll


 それはこの前戦ったオークよりも強い相手。

 この冒険者は、オークを瞬殺したルークと同レベル。


 油断は一切できない。


 右拳が迫ってくる。


 オークの筋力はランクll

 いなすのに腕が壊れていくのは記憶に新しい。


 僕は体の右側に拳を逸らすため全力で技を使った。


「!?」


 いなされた相手は衝撃を隠せないのか硬直していた。

 そして僕もまた衝撃的すぎて硬直した。


(…なんか軽かったんだけど)


 ランクllの筋力だ。

 この前みたいに腕が壊れるのを覚悟で使ったのに、全く衝撃はこなかった。


「もしかして…ランクllって嘘?」


 僕の一言は相手の硬直を破るのに申し分なかった。

 大激怒した冒険者は短刀を抜く。


『テメェこんなこともできんのかァ!…夢が膨らむぜェ…!!…さすがに拳で剣はいなせねぇよなァ!?』


「…なんかできるかも」


 なんとなく…この人の剣ならいなせる気がした。

 嘘のランクを言うぐらいだ。

 たぶん、ランクlで見栄を張りたかったのだろう。


『頭いかれてやがるぜぇ!!!オマエは俺様よりクレイジーだァ!!』


「そんなわけないだろ」


 断固拒否する。


 そんな会話をしていると顔を真っ赤にした冒険者が短刀で刺突をしてきた。


「うん。よく見える」


 剣先も相手の表情も体の動きも。


 ゆっくりと…迫ってくるそれの腹に…手を添えてみる。軌道は確実に反れていき、僕に当たることはなかった。


 何度も


 何度も


 何度も


 何度も


 何度やられても無駄だった。


『ひゅ〜♪ 圧巻だなァ』


 いくらでもいなせる。

 いくらでも躱せる。


 その剣は一生僕に当たることはない。




 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆





 その冒険者は焦っていた。


(くそくそくそくそくそッ!!……くそぉぉお!!)


 手に持っているのは予備の短刀。


 この鬱蒼とした木々の中で背中に背負った剣は大きすぎると判断し、能無しなら短刀で十分だと考え、殺す気で振っていた。


 この世界での人の命はとても軽い。

 魔物がいる。

 天災がある。

 ダンジョンがある。


 そのため、ばれなければ別に殺しても問題はなかった。

 ばれたとしても印象が少し悪くなるだけで罪に問われたりはしない。

 …一般人は別だが。


 こいつは一般人ではなく冒険者。

 ギルドには登録できていないみたいだが…罪人が死んだところでみんな笑い話だ。


 俺を笑った。

 馬鹿にした。


 ランクllじゃないと言った。


 許されることではない。


 こんなゴミに馬鹿にされてては周囲に何を言われるかわかったもんじゃない。


 死ね。


 殺意を込めて放つ短刀はことごとく躱されるかいなされる。


 おかしい。

 こんなはずはない。


 能無しがランクllの力を反らせるはずがない。

 実際、街や地元のやつらは俺の力に耐えられず死んだ者もいる。


 なんだこいつは。

 おかしすぎる。


 刃物だぞ。

 なんで



 ーーー素手で対応できている?



 おかしい。


 何度振るっても何度突いても全てが空を斬る。


 蹴りを入れても…これも躱される。


 なんだ。なんなんだこいつは。


「いい加減…ッ…死ねぇぇ!!」


 少し体勢が揺らいだ罪人の目向けて刺突を放つ。


 当たる。


 そう思った時、罪人はブリッジをして、その足で手首を蹴られ…短刀は山の中へ消えた。



 ゾワッ…!



 目があった。


 瞬間…罪人の背後にでかい何かが見えた気がした。


 それは………?


 無意識に出そうとした声はなぜか出ることはなかった。


 代わりに出たのはカチカチカチカチという音。


 どこから出ているのか。


 それは自分の口からだった。


 手足は震え…歯が音を止ませることはなかった。


 心が恐怖した。


 この得体の知れない何かに。


 もう…戦意が湧くことはなかった。




 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆




『殺さなくていいのかァ?』


「いっぱい学べたしいいよ」


 さっきの冒険者は見逃した。

 短剣を飛ばしたら戦意を喪失したからだ。


『あれはテメェの気迫に呑まれたんだろぅぜェ?よかったなァ!これでランクllは敵なしだァ!』


 そんな簡単に言うな。

 山の中での話だ。

 第一さっきのはランクllじゃないだろうし。


 でも、手応えはあった。


 このまま精進していけば……いずれは。


『大丈夫ダァ。誰がいると思ってやがる』


「…うん」


 心配するのも失礼か。


『てかテメェ身長もねぇのにそっちもちいせぇのかァ?』


「え?」


『小さすぎんだろォ!何ダァ?そんなんじゃ手前でストップだぞォ?』


「な、なんの話?」



 今、僕は当初の目的通り水浴びをして体と服…のような布を綺麗にしていた。



『ち○こだろぉが!強いやつには女が群がるもんだぞォ?そんなんで未来の嫁さんどうやって気持ちよくすんだァ?』


「やめなさい!流せなくなったらどうすんの!」


『こんな低級下ネタでバンされたら笑えるなァ!』


「笑えないからまじでやめろ」


『いいかァ?強さとHのうまさは比例するぞォ?これ俺様の経験談』


「…いずれ、まだ僕には早いし」


『かァァァ!!これだから坊ちゃんはよォ!?

 ズッコンバッコンしねぇで何が男の幸せだァ!?

 それでもち○こつい……』


 僕は剣を水に沈めた。


【斬るか】


 頭に響いた声。


 全力で逃げた。





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