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相棒と世界最強  作者: だんちょー
18/43

18話 修行の成果

 



 歩くこと小一時間、山の麓に着いた。


 そこには大きな滝と滝壺、そして川が流れていた。


 凄まじい水量が何十メートルも高いところから落ちてくる様は綺麗ではあるが…自然が怖いものだと嫌でもわかる。


『あれはヤベェなァ。打たれたら骨粉砕だァ。行ってみるかァ?』


 頭おかしいのかこいつは。

 骨粉砕って聞いて行くわけがない。


『ジョーダンだァ!!ロギアジョークだァ!まァ昔、俺様の適合者だったやつァバカすぎてイっちまったがよォ…』


 そのイったは二重の意味じゃないか。

 頭おかしすぎないだろうか、その前の適合者さん。


「水だけ浴びて帰るよ」


『ヒヒャヒャヒャ!帰る場所ねぇだろ何言ってんだ?頭逝ったかァ?』


 「僕はいってないよ!」


 本当に殴れるなら殴りたい。

 このちょくちょく煽ってくる性格治らないものだろうか。

 まじで。


『無理ィ〜♪』


 僕はロギアを無視して川下の方へ歩いて行く。

 流れが緩やかになったあたりまで来て、水浴びをしようと服を脱ごうと思った時、


「ん?こいつ罪人じゃねぇか?」


 先にいた冒険者らしき人にそう言われた。


「……ああ。僕のことか」


 最近色々ありすぎてそんなことはすっかり忘れていた。


 そういえば僕は能無しで罪人でゲロ吐きだった。


 あんなに辛かったことなのに今は特になんとも思わなかった。

 これも全てこのロゲスのおかげだろうか。


『ロギアだァぶち殺すぞ』


 鞘に収まった剣がカタカタ震える。


 冒険者は鼻をつまんでいかにも僕に近寄りたくないアピールをしてきた。


「前見た時よりも汚ねぇしクセェな。今街ではよぉ、お前がいなくなってみんな悲しんでんだ。バカにする相手がいなくてヨォ?」


 ニヤニヤしながら話すその顔は外道そのもの。

 安い挑発すぎて怒りなんて湧かないし言わせておけばいいと思った。

 まだ魔物の方が僕は仲良くできる気がする。


『なんだこのチンピラァ。やんのか?あァ?性器全部削いでやろうか?ゴブリンミテェな顔しやがって人間以下だてめぇはヨォ』


 ロギアが喧嘩売っても聞こえないよ。


「聞いてんのか罪人!!」


 …よくみると、たしかにちょっとゴブリンだった。

 図体が人間サイズのゴブリン。


「…ふふ」


「…笑ったな?てめえ調子乗ってんじゃねえぞ。俺ぁランクllだぞ?能無しのてめぇじゃ一生勝てねえ相手だ。今すぐ土下座しろ」


 額に血管を浮かばせ迫ってくる姿は腐ってもランクll


『いい相手じゃねェかァ。よし。戦ってみろォ♪』


「…え?」


 …相手ランクllだけど。

 山の中だから戦略的撤退する気満々だったんだけど。


『大丈夫だァ。テメェなら勝てるさァ。たぶんなァ』


 ヒヒャヒャヒャ笑う姿は本当に悪魔を想像できる。


『いいかァ?この数週間でテメェは何をしてきた?』


(山の中の移動だけど…)


『そうだァ。自分の腕っぷしだけが全てじゃねぇ。周囲を利用することも大事な戦闘技術だァ。今のテメェにはそれがあるからなァ。ランクllごときにゃ負けねぇよ』


(そう言われても…)


 昔は違ったみたいだけど、

 今はランクを持つものに下の者が勝てるほどこの世界は甘くできていない。


『いざとなったら魔法使えばいいんだよォ!さっさと行ってこい!!』


 剣が鞘に収まったまま、前へと僕を引っ張って行く。


「うぇぇぇぇ!?」


 ごつっ。


 僕の額は冒険者の胸に頭突きをした。


 してしまった。


「…いい度胸だ」


 拳が降りかかってくる。


 僕は咄嗟に後ろに飛んで避けた。


(やっちまったああああ)


 どうしてくれんだロギアさんよォ!!


 テレパシーで講義しまくると、頭の中に手が浮かんだ。


 親指を下にして…横にスライド。


 ……首チョンパじゃないか!!!


 最悪だ。

 もうこうなったらヤケだ。

 できるだけ嫌なところ突きまくろう。


 僕は全力で地形の不安定な山の中に入る。

 冒険者も追うように僕の後を追う。


 少し移動して…足場が悪いところで止まった。


 後ろを振り返ると…鬱蒼とした木や岩があるだけで着いてくるものはいなかった。


「あ…あれ?」


『ヒヒャヒャヒャ!だから言ってんだろォ?魔法使いならバッタバッタ薙ぎ倒して迫ってくるかもしれねぇが、剣士なら別だァ。周囲を利用する戦い方をしてれば…』



 ーーーランクllぐらいまではわけねぇーーー



 その言葉に僕は生唾を飲んだ。

 能無しの僕が、山の中…森の中ならランクllを相手にできる。

 勝てるかはわからないが、少なくとも早く動ける。


『さらにィ…』



 まだ何かあるの?


 そう思った時、背後から何かが迫ってくる感覚があった。

 僕はそれを無意識に避けた。


「!?」


 誰かが驚愕したような気がした。


 後ろをみると先ほどの冒険者が蜘蛛の巣や葉っぱを体につけて立っていた。


『ソウソウソウソウッ!!!それだァ!!テメェの新しい能力…!!まだ近場だけだろうがァ…気配を察知できるのは超便利だぜェ!?!?』


 気配を察知?

 たしかに最近、後ろに誰かいたり魔物が近寄ってくるとなんとなくわかるような気がしてたけど…


『山の中での生活はなァ。思ってるよりもむジィんだ。蜘蛛の巣や蔦、根なんかの自然なトラップに視界、行く手を遮る木や岩、気候の変化もそうダァ。さらに魔物まで出てきやがる。いくら弱い魔物だとしても自然の中での戦闘はそいつらの方がうめェ…。この数日テメェはどうダァ?転んだか?糸に引っかかったか?迂回しようなんて考えたかァ?攻撃を受けたかァ?目も肉体も判断力も直感も…てめぇはだいぶ成長してんだァ』



 ーーー自信持てクソ雑魚ォ



 捲し立てられた言葉だけど、どれも脳に心に響く。

 

 ただ速く動けるようになれ


 その修行がまさかこれほど大きな成果になるなんて思ってもいなかった。


 それに


 ここまで僕のことを考えてくれていることに

 正直、胸が熱くなった。


 嬉しかった。


 昔から僕を見てくれる人なんてほとんどいなかったから。


 最高に幸せ者だ。


『第二ラウンドだァ。とりあえずそいつァボコせ』


「わかった」


 この恩は成果で返す。



 ーーー誰よりも強くなること



 元からそのつもりだが再度、そう思い僕は拳を構えた。







☆☆☆☆☆→★★★★★

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