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始まりの森とスライム

この小説をご覧いただきありがとうございます。


初めての作品なので、読みづらいところやわかりにくいところなど多々あるかと思いますが、頑張って続けたいです。


ブックマーク登録や評価をいただけますと励みになります。


よろしくお願いいたします。WAKYO

 村が唯一外部と交流するのは月に一度、定期的にやってくる商船のみ。だが基本は人の運搬はやらず、道具や薬の調達、海産物と穀類の取引を小規模に行うだけだ。


 なので、村からはこの深い森を抜けなければどこにも行くことはできない。


 木が鬱蒼と生い茂り、陽光は半分以上遮られるので昼間でも薄暗い。風に揺らされた枝のこすれる音、鳥の鳴き声、虫の声。そして時折、ガサガサッと獣の駆け抜ける音が入り混じる。


 足を踏み入れた瞬間から、毒蛇や危険な虫に気を配らないといけないが、さらに深く入れば虫や獣だけでなく魔物との遭遇が避けられない。少しばかり腕に自信のあるものでも、魔除けの魔道具なしに単独で抜けることは厳しい。


 整備された道らしき道はなく、地面は太い木の根やツタ、岩や礫のせいで足場が悪い。油断して足でも傷めようものなら残酷な運命が待っているだけだ。


 そんなこともあって、そもそもこの森に入ろうなどと考えるものは少ない。


 普通は……だ。


 オレは幼いころから道具屋の手伝いと漁の合間に何度も森に入っているのだが、なぜか一度も魔物に遭遇したことがない。


 村のものが魔物を見たとか襲われたという話を幾度となく聞いたのだが、オレだけはただの一度も見たことがない。それは村でも有名な話で、魔除け代わりなるとよく駆り出されたものだ。


 運がいいだけなのかと思っていたが、じいちゃんの手紙にあった神託のことを考えると、もしかしたらなにか不思議な力が働いているのかもしれない。


 ただ、じいちゃんに鍛えられたオレは多少だが剣も扱える。それほど強力でない魔物なら撃退する自信がある。


 楽観的かもしれないが、万一遭遇しても何とかなるだろう。


 森を避けて海沿いに進む道もあるにはあるが、恐ろしく遠回りでかなり時間がかかってしまう。多分、村の者たちもオレなら森を抜けていけると考えたのだと思う。止める様子もなかったしな。


 不思議な現象の理由はわからないが、目指す西の村まではこの最短ルートでも7日はかかるだろうから、この旅でその真偽がわかるかもしれない。


「さて……」


 村を出てからかれこれ5,6時間は歩いただろうか。この世界に時計なんて便利なものはないので感覚でしかないが……日はすでに一番高い位置にあるようだ。


 相変わらず道らしい道はないが、岩山や川にあたることもなくいいペースで進めていると思う。方向感覚には自信があるしな。


 西の村からさらに海沿いに北上すれば大きな港町があると聞いている。港町からは王都への船が出ているらしく、王都からは他の大陸へも渡ることができるらしい。


 正直、現時点でこれといった目的があるわけでもない。どこまで範囲を広げるかも考えていないので、行き当たりばったりな旅と言えるがそれでいい。


 この世界の広さがおおよそですら把握できていないので、交通機関の未発達な中、どう進むかなんて決められっこないしな。


 オレはふと足を止めて周りに意識をやる。


 魔物の気配は無数にあるが、やはり近づいてくる様子はない。


 ここまで歩いて目にしたのは、すべてごく普通の獣だけだ。こうなるともう確信に変わってくるな。


 もちろん無防備にするのは危険なのである程度は警戒を続けるけど、子供の頃に行った遠足の気分になってきちゃったよ。


 なんてことを考えていると、不意に目の前にたたずむ緑色の丸い物体に気づいた。


 オレは昔から魔物の気配には敏感だ。そこそこ距離があっても不思議と分かる。


 だが目の前のそれは違った。いつからそこにいたのかわからないが、少しも魔物の気配を感じなかった。


 手の平に乗るくらいのサイズの、半透明のゼリーのようだ。


 生物か?


 うーん……と首をひねっていると、その物体は突然ぴょこん、ぴょこんとカエルが跳ねるようにオレの方へやってくる。


 オレはとっさに腰の剣を握り、身構える。


 が、いやまて、この見た目と動きは……もしかして。


「……スライム?」


 この森に生息する魔物の特徴はじいちゃんに何度も聞いている。特徴からいってスライムに他ならないだろう。


 だが、スライムといえば水色だったはず。もしかしたらこの世界のスライムはそうでないものもいるのだろうか……毒を持ってるから緑色だったりするとか?聞いていた話と違うな。


 だが、目の前のそれに敵意はないらしく、攻撃する素振りはみえない。すでにオレの足元まで来ていて、ぽよんぽよんと小さく弾んでいる。


 ちゃんとした魔物を見たのは生まれて初めてだ……。ということは不思議な力で魔物に遭遇しないという仮説は間違いだったことになる。


 つまり、たまたまということか。すごい偶然が重なり続けてきたのか?今日まで?うーん、そんなことあるのかな。


 まあなんにせよ、これからは気を引き締めて旅を続ける必要があるか。


「さて……と」


 目の前にスライムがいる件。


 オレがしゃがむとスライムは弾むのを止めた。だが逃げ出す素振りも見せない。こちらの反応を窺っているみたいだ。


 淡い緑色に毒々しさはなく、むしろ優しい色という感じ。半透明なので地面が透けて見えるんだな。


 じいちゃんの話では戦闘力はゼロに等しく、全くの無害。知恵はなく、どこにでも存在する。


 雑食で手あたり次第取り込んで消化するが、人間を取り込んで溶かしてしまうような事はない。それはゲームの世界だけなのかな。服だけ溶かしちゃうとかね。


 そこまで研究する必要がないのか、じいちゃんが持っていた魔物に関するどの書物にもスライムに関しては簡単な説明があるだけだった。


 しかもたいがい最初のページに。まあ伝説級に最弱のモンスター代表みたいだったしな、前世でも。


 指で軽く突いてみると、ぷにぷにしている触感。子供の頃に遊んだ水風船を思い出させる。


 結構弾力があるんだな。指に力を入れてぐっと変形させても、離せばすぐ元に戻る。


 持ち上げてみると、思ったより軽いな。見た目、水分99%でずしっとしてそうだが、そうでもないのか。


 目や口は見当たらないな。ひっくり返しても別になにもない。


 まあ……害はなさそうだし放置しておくか。オレはスライムをそっと地面に戻した。


 少々道草を食ってしまったな。急ぐ旅ではないが先は長い。明るいうちにもう少し進んでおきたいところだ。オレはまた歩き始める。


 そうだ、もうとっくに昼だっけ。思い出したように革袋から干し肉を出す。食べながら歩くのは行儀悪いかもしれないがこの世界なら別に咎める人もいないしね。


 長旅だとつい食事を忘れがちだが、気を付けないと知らず知らず体力を失ってしまうからなあ。そんなことを考えていると、ふと違和感を感じて立ち止まった。


「む……」


 すぐ足元に、先ほどのスライムが静かにたたずんでいる……てか、なんなんだよこいつは。ついてきちゃったのか?それとも別の個体?


 数歩歩いてみる。やはりぽよん、ぽよんと跳ねながらついてくる。


「……」


 オレが立ち止まると、スライムもすぐ横でぴたりと止まる。


 ……それじゃ。


 タタタ…!とオレは駆けだした。


 ちらりと横を見やると……やはりついてきている。こいつはなかなかの速度だ。スライムがそんなに早く走れるとは意外だ。


 オレはさらに速度を上げて、ダダダダダダ…!!とほぼ全速力で森を駆け抜ける。


 走りながら横目で見るがもうスライムの姿はない。さすがにまいたらしいな。


「ふぅ……」


 引き離したところで、オレは近くの木によじ登り、通ってきた道をじっと見る。


 しばらくすると、ぽよん、ぽよんと追いかけてくるスライムが見えた。


 が、どうもオレの姿を見失って、どっちに行くべきか迷っているようだな。


 行きかけては戻り…また別の方向に行きかけては戻る。


 ……なんだか可哀そうになってきたなぁ。


 木から降りて近づいていくと、スライムの方も気づいたらしく、慌ててぴょんぴょんと駆け寄ってくる。


 そして、目の前まで来たところひときわ大きく跳ねるとオレの腕に飛び込んできた。


 ……なんだよおまえ。オレと一緒に行きたいのか?


 言葉を理解したように、プルプルと身体を震わせる。すり寄ってきているのか?可愛いやつだな。


 知恵はないという話だが……どうもこちらの言葉を理解しているようにしか思えない。もしかしたら広く知られていないだけで、スライムにはこういう個体もいるのかもしれない。


 肩に乗れるか?試しに聞いてみると、腕から肩に飛び移った。険しい森を歩くのに手がふさがっているのは危険だが、肩ならそうは邪魔にはならないだろう。


 ……というかお前やっぱり言葉通じてるよな?


 旅に出てものの半日で不思議な相棒ができてしまった。


 オレはふと、前世で小さい頃飼っていたインコのことを思い出した。良く懐いていて肩や頭の上にも止まっていたっけ。


「さて……んじゃ一緒に行くか」


 スライムを肩に乗せて歩くなんてちょっとおかしい人みたいかな?まあ、いいか誰も見ていないし。


 それからオレ達はさらに進んでいき、薄暗くなってきたところで野営にちょうどよさげな岩穴を見つけた。


 ここまで深く入ったことはなかったけど、結構小高い丘や岩山などが点在しているんだな。大きく迂回しないといけないようなことがなければいいんだけど。


 じいちゃんの話では、森のほぼ真ん中あたりに竜の住まう山というのがあるらしい。竜の逆鱗に触れるので、これまで森を切り開くことができなかったのだという。


 現実に怒れる竜の炎で焦土と化した国もあるようだが、そんな竜の姿が最後に目撃されたのはもう五十年以上前らしい。一説によるともう死んでいるのではないかという話もあるくらいだ。


 いずれは調査隊の派遣や森の開拓などもあるのかもしれないと聞いた。


 もしもこの森が開拓されて他の町や村との交易が可能になれば、村も大きく変わる可能性がある。いいことも悪いことも、どちらも。


 今回オレの通るルートはジョゼ村から西の村まで一直線、方角としては西北西となる。竜の住まう山は村から真北にあり、大きく外れているのでよほど大丈夫だろう。


 竜よりも獣や魔物に警戒が必要だ。


 岩穴とその周囲を注意深く確認するが、中にも辺りにも獣や魔物の気配はない。入ってから穴をふさいでおけばカムフラージュになりそうだ。


 と、そんなことをしている時も、スライムは相変わらず肩の上。


 肩に貼りついてでもいるのか、歩いても走っても落ちることはない。邪魔にはならないので助かるがちょっと不思議だね。


 この世界にも普通に四季はあり、今は夏真っ盛り。夜中も暖を取るほど冷え込まないので、旅にはちょうどよかったかな。ただ、木が生い茂っていることもあり、日が傾き始めると一気に暗くなる。寝床は早めに決めてさっさと寝るのがいいだろう。


 地面を整え、腰を下ろす。


 と、スライムもぴょこんと肩から降りた。


 なにか言いたげにぴょんぴょん跳ねている。


 腹でも減ってるのだろうか。


 鞄からパンを出すと、すこしだけちぎってスライムの前に置いてみる。


 スライムはぴょこんとパンの上に乗り、取り込んでいる。


 透明なので、取り込まれたパンがだんだん消えてなくなっていくのが見えた。どこに行くのだろう?


 プルプルと身体を震わせて喜んでいるようだ。


「もっといるか?」


 スライムはぴょんぴょんと跳ねて答える。


 さっきより大きめにちぎってやると、またにゅるりと取り込んでいく。


 やっぱり嬉しそうにプルプルしている。なんかペットの餌やりみたいだな。結局丸2つ分パンを与えたところで満足した様子だ。


 際限なく食べたらどうしようかと内心焦っていたが、ちゃんと常識の範囲で上限があるようで一安心だ。ていうか雑食だからなんでもいいんじゃなかったっけ?まあいいけど。


 この季節なら手持ちの食料が厳しくなっても、森の恵みを頼れば大丈夫だしな。


 オレもパンと干し肉をかじり、ぬるい水で流し込んで横になった。天候にも恵まれたし、順調に距離を稼げたな。旅の初日としてはまあこんなもんだろ。


 こんなに村を離れたのは生まれて初めてだな。もちろん野宿するのもだ。だが、不思議と怖くもないし不安も感じない。むしろ楽しんでいる自分がいる。


 スライムが頬にくっついてくる。少しヒンヤリするのが気持ちいいな。オレは心地よい疲れの中、スライムとともに深い眠りについた。


--


 次の日は夜明け前からあいにくの雨。雨の音で早くから目を覚ましてしまった。どしゃ降りといってもいいレベルだが、少し高い位置にあるから、この場所に水が流れ込んでくる様子はないな。


 スライムと軽い朝食をとり、しばらく雨の様子をながめていたが……こりゃ、もうしばらく降り続きそうだ。


 ……暇だな


 誰に言うわけでもなくつぶやくと、スライムがぴょんぴょんと相槌を打つように二度跳ねる。お前も一緒か。うんうん。


 やることもなくぼんやりしていると、奥からかすかな空にの流れを感じた。


 夕べは暗かったし特に魔物の気配もないのでろくに調べていなかったが、この岩穴にはもう少し先があるようだ。もしかして洞窟の入口だったか?


 やることもないし見てみるかな。スライムには待っているように言い聞かせる。


 スライムは小さくぴょんぴょんと二度跳ねた。分かったよ、の合図だろうか。


 しばらく奥へ行くと段々立って歩けるほどの高さがなくなってきた。身をかがめながらさらに進んでみる。


 突き当りまでいくと腰ほどの高さの小さな穴がさらに続く。小柄なオレでもさすがにこの先は入れそうもないな。


 覗き込むと、奥には淡い光を放つ石がいくつも転がっているのが見えた。なにかの鉱石だろうか。


 ゴブリンあたりなら無理なく入れそうだから、もしかしたら巣として貯め込んでいたのかも知れないな。宝石とか集める習性があると聞いたしな。


 魔物の気配はないので、思い切って穴に手を突っ込んでみるが、届きそうで届かない。棒でもあれば……と思った時、いつの間にかついてきていたスライムがぴょんぴょんと奥に入っていく。


 あれ……おいおい大丈夫か?


 奥で何事かやっているようだが、薄暗いのでそこまで見えない。


 ほどなくスライムが戻ってきた。ぴょんぴょんと穴から出てくると、どこからともなく光る石をコロンコロンと出した。


 1個、2個、3個……て、お前の身体よりずっと大きいけどどこにしまってたんだ?


 気づけば目の前に10個近い光る石が積まれていた。


 すごいな……お前。言ってることもわかるし、めちゃくちゃかしこいやつだ。


 スライムはぴょんぴょんと跳ねて見せる。ほめられたのがうれしいのか?可愛いやつだな。


 うーん、この石はじいちゃんに昔見せてもらった鉱石に似ているな。宝石っぽいのもいくつか混じっているようだし、やはり意図的に集められていたものだろう。


 町で売ればいくらかになるはずだ。とりあえず一通り拾い集めて鞄に入れておいた。労せずして、というやつだね。


 今日がもしいい天気だったならすぐ出発してしまい気づかなかっただろう、幸先いいな。


 それにどうやら雨が止んだようだな。雲の切れ目から青空が見えている。日もまだ高いし進んでもいいだろう。


 スライムを肩に乗せると荷物を片手に洞穴を出る。拾い集めた鉱石を入れたので鞄がパンパンだ。それなりの重さだが、これくらいならどうということはない。


 さて行きますかね。


 相槌を打つようにスライムが2度、肩の上でぴょんぴょんと跳ねる。


 ガサガサ……。


 歩き始めてすぐに、角を生やした茶色いウサギが目の前を横切っていくのが見えた。毛色からしてたしかホーンラビットという獣だな。こいつはよく見るやつだ。


 毛色は異なるが似た形のデスラビットという魔獣もいると聞いている。そっちの方だと間違いなく人間を見ると襲ってくるらしい。


 この世界の獣と魔獣の区分けがちょっと分からないが、じいちゃんの話だと魔力を帯びているかどうかによるんだと。目に見えないが、大気中には魔力分子が存在すると考えられており、その濃度の濃さによって影響を受けるのが魔獣や魔物なのだという。


 今は平和なので魔力分子の量は少なく、魔獣や魔物の力は抑えられているが、その昔魔王がいた頃は目に見えるほど空気を淀ませる魔力分子が存在したらしい。


 そんな時代に生まれなくてつくづく良かったな、とじいちゃんの話を聞いた時に思ったものだ。


 途中、木の実と果物を見つけたので鞄に放り込んでおく。もちろんスライムの分も含めていつもより少しだけ多めに。


 あとこの森はキノコもよく採れるのだ。


 子供の頃から森でよく採っているので、食べられるかどうかの選別はお手の物だ。村に詳しいものがいたので、最初は手当たり次第に持ち帰っていたが、選別してもらっているうちに覚えてしまった。


 ただ、それらは経験に基づくものだ。鑑定というスキルがあると初見でも判断できるらしく、重宝されるのと聞いたな。


 食料確保は順調だったが、日暮れまで歩いても身を隠せるような場所を見つけることはできなかった。まあそう都合よくはいかないか。


 しばらく雨は降らなそうなのでまあいいか。


 朝の雨のせいかやや気温は低めだ。夜中は若干冷え込みそうなので火だけは起こしておくことにした。


 焚火をするにはなるべく乾いた枝を集めなければならない。湿った枝では燃えにくいだけでなく煙がでやすい。まあ、森の真ん中で誰かに怒られるわけではないから別に構わない気もするけど。


 夜は道中で収穫したきのこを焚火で焼いて食べた。


 手持ちの塩しかかけていないが香ばしくてなかなかうまい。スライムにもやってみたが、嬉しそうに食べていた。熱いものも大丈夫なんだな。


 その後村を出て4日目に、この旅で初めて川を見つけた。流れは緩やかで水も澄んでいるので底の方まで良く見える。魚も大小さまざまなでたくさん泳いでいる。


 村では海の魚しか捕ったことがなかったが、川魚も同じように捕まえることができた。ちなみに釣り竿や網などはないので木の枝を削って作った簡易の銛で突くだけだ。


 内臓を出して干してやれば保存もきく。10匹ほど捕まえた内、半分は夜食べるつもりなので開かずに絞めて血抜きだけしておき、残りは腹を開いて塩をすりこみ、ひもでくくりつけてやる。


 村を出るときにもらった食料が残り少なかったのでこれは助かるな。これだけあれば当分食料の心配はいらないだろう。


 そんなこんなでオレ達の旅は順調にすすんでいる。今日は村を出てから7日目の朝だ。元々道らしい道もないが、オレは方向感覚には自信がある。一直線に進んできたので、おそらく最短距離で歩いてきたはずだ。


 計算が合っていれば、そろそろ森を抜ける頃だな。


 オレはパンと干し芋をかじりながら歩いている。スライムは定位置であるオレの肩に陣取り、同じくパンと干し芋を食べている。すっかり慣れたものだな。7日も一緒にいると当たり前になってきたわ。

 

 結局このスライム以外の魔物に遭遇しなかったのがちょっと心残りではあるが……。


 目の前の木々がまばらになり、向こう側に違う景色が広がってきた。うん予定通り、村が見えてきたな。


 スライムは鞄の中に入ってもらった。害がないとはいえ村の中に連れ込んで騒ぎになっても困るしな。


「んじゃ、悪いけどそこで頼むな。

 宿屋に着いたら出してやるから」


 軽くポンポンと鞄をたたいた。中から微かな反応が戻ってくる。さて行くか。


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