るかの過去
ある日の夕方。るかは勉強の息抜きに久しぶりに海に散歩に出かけた。しばらく歩いて砂浜に腰をおろすとなつかしい鳴き声が聞こえてきた。周りを見渡しても誰もいない。イルカたちだ!と思って立ち上がるとちょうど近くまで来たところだった。
[久しぶり。元気だった?あら今日は妹さんはどうしたの?]
「久しぶり。愛は友達と遊びに出かけているわ。私は勉強の息抜きに来てみたの。高校生になってから勉強が忙しくて姉妹で遊ぶことはもうなくなっちゃった。」
[そうなのね…でも久しぶりに来てくれて嬉しかったわ。また息抜きにおいでね。]
「はーい。あ、もう帰らなきゃ。またね。」
るかはイルカたちに手を振って家に帰っていった。
それからるかはたまに海を訪れてイルカたちと話し、勉強の疲れを癒すようになった。
ある時、いつもよりも早い時間にるかは海にでかけた。砂浜に人影はなく、めずらしいな、もう寒くなってきたからかなと思っているとすぐイルカたちが現れて話しかけてきた。
[るか、今日は時間が少し早いからお話しするだけじゃなくて思い出の場所に行ってみない?]
「思い出の場所?」
[そう。じきにわかるわ。ほら乗って。]
るかはよくわからないまま、一匹のイルカの背中に乗った。イルカたちはすぐに泳ぎだし、浜から見えない場所にある大きな岩についた。その岩は洞窟になっており、中に入っていくと開けた場所についた。一家族くらいなら住めそうなスペースがあり、岩を削って作ったであろう棚などがみえる。
「すごい。どうしてこんな場所があるんだろう。誰かが住んでいたのかな。」
[るか、覚えてない?まだ幼かったから覚えてなくても不思議はないけど…]
「え?」
[るか、あなたはここで生まれたの。ここには優しいお母さんと無口だけど強くてしっかりしているお父さんがいた。るかが二歳の時、るかのおばあちゃんが亡くなっておじいちゃん一人じゃかわいそうだからって言って今の家に移ったの。るかは毎日私たちと一緒に海を泳いで遊んでいたわ。私たちの言葉がわかるのも小さいころずっと一緒にいたから。愛ちゃんは今の家に移ってから生まれて私たちとあまり一緒にいなかったから私たちの言葉がわからないのかもね。]
るかは驚きのあまり言葉も出なかった。ここに小さいころ住んでいたなんて…
「あ、もしかしてあの光景きれいな海の景色は私がここに住んでいた時に見たものなのかな。」
[あー、あの透き通った水の場所でしょ。あそこはサメも来ないし人に汚されたりもしていなかった。安心安全で遊ぶにはもってこいの場所だったの。そうだ、今から行ってみよっか。]
「え、いいの?」
[もちろん。昔ほど綺麗ではないけれど、まだ何とか保っているわ。]
るかはわくわくしながらイルカたちに続いて潜っていった。しばらくいくと目の前に記憶にあるのと同じ光景が広がっていた。とてもきれいで見ていて飽きない。イルカたちとゆっくり泳ぎながら思い出の場所を記憶した。ここには次いつ来られるかわからない。そう思ったらどれだけ見ても満足することができなかった。
帰りもイルカの背中に乗せてもらった。砂浜の近くまで送ってもらい、いつものように別れた。心の中は温かく足取りも軽い。思い出の場所に行けたこと、自分が幼いころ住んでいた場所に行けたことがとても嬉しかった。