不思議な絵本
「あれ、私なにして…」
「お姉ちゃん!」
るかが横を見ると泣き顔の愛がいた。
「愛!どこにいっていたの?こんなに泣いて。怪我してない?」
「お姉ちゃんの方こそ大丈夫?急に倒れて。私すごく怖かったんだから!」
そう言うと愛はまた泣き出してしまう。るかは自分が倒れていたなんて思いもしていなかったので、驚きながらも泣きじゃくる妹を抱きしめた。
「ごめんね。怖い思いをさせて。お姉ちゃんは大丈夫だから安心して。でも、こんなことがあったって言ったらお父さんとお母さん心配して海に行っちゃダメって言うかもしれない。これは2人だけの秘密にしようね。」
るかがやさしく言うと愛はまだ泣きながらもうなずいた。
2人だけの秘密の出来事があってから1週間後。
お父さんとお母さんは買い物に出ていて、るかと愛の2人でお留守番をしていた。屋根裏で2人で遊んでいると愛が古い絵本を見つけた。表紙にはイルカの絵が描いてある。
「イルカだ…」
愛の声にるかも本をのぞき込む。
「これ読んでみようよ。」
るかが言って2人は本を読み始めた。
本に出てくるのは愛とるかという名前の女の子。海に遊びに行くとイルカたちがやってきて一緒に遊ぶという話だった。本を読み終わると愛とるかは顔を見合わせた。
「私たちと同じ名前だね。偶然なのかな?イルカと遊ぶのって絶対楽しいだろうな。」
うらやましそうに愛が言う横でるかは考え込んでいた。本に出てきた透き通った水も海藻の緑色や赤色、珊瑚のピンク色もたくさんの魚が優雅に泳いでいるのも全部るかがあの時見た光景のまんまだったからだ。
(なんで同じなんだろう。私前にこの本を読んだのかな。でもこんな古い本読んだことないよ。正夢っていうやつなのかな。でも…)
「お姉ちゃん?どうしたの?」
気が付くと愛が不思議そうな顔でるかを見ていた。
「ううん。大丈夫。なんでもないよ。」
るかは笑顔で答えて今考えていたことを頭の隅に追いやった。