るかの悲劇
愛は海辺の小さな町に生まれた。幼い頃は暖かくなると姉のるかと一緒にいつも海へ行って遊んでいた。
ある夏の日のこと。いつものように海で遊んでいると突然大きな物音が聞こえた。音のした方を見るとるかが倒れている。
「お姉ちゃん!大丈夫?ねぇ、起きてよ。」
いくら呼びかけても返事はない。愛はどうすればいいのか分からないのと、怖いのとで泣き出してしまった。
るかは暗い海の底にいた。さっきまで妹の愛と遊んでいたはずなのに姿が見えない。目を離した隙にどこかへ行ってしまったのか。
「愛ー。どこにいるのー。」
いくら名前を呼んでも返事がない。気がつくと綺麗な場所に来ていた。水は透き通っていて、海草の緑や赤、珊瑚のピンク色が眩しい。魚もたくさんいて優雅に泳いでいる。
「きれい…」
るかは愛を探していたことを忘れ、その光景に見入っていた。気がつくとるかの周りをイルカの群れが取り囲んでいた。驚いて叫び出しそうになったが、イルカの優しい目を見て落ち着いた。
[るか、あなたはここにいてはダメ。]
「え?」
[早く妹の元へおかえり。]
るかはイルカが話し始めたことにびっくりしたが、ここにいてはいけないという意味が分からなくて首を傾げた。でもそれより愛を見つけなければいけないという気持ちが勝ち、イルカにお礼を言って光が射す方へと泳いでいった。
愛は泣きじゃくっていたが遠くから聞こえた鳴き声で顔を上げた。見ると、たくさんのイルカがこちらに向かって泳いでくる。
「お姉ちゃんを助けに来てくれたの?」
愛が尋ねるとイルカはまた一声鳴き、るかの周りを1周した。その直後、るかはゆっくりと目を開けた。