第09話
はじめまして、火野陽登と申します。
至らぬ点もあるかと思いますが宜しくお願い致します。
小説投稿サイト【カクヨム】にて同名で投稿しております。他にも色々と謎の文字列どもを投稿しております。
素人の拙い作文ですが、もしご興味あればお越しいただけると幸いです。
お忙しいと思いますのでホントにお時間可能な限りで結構です。
いやもうホント、私のしょーもない謎の文字列を読むくらいなら、作った折り鶴に片端から制汗スプレーをかけ続けていた方が幾分マシかと思いますが………もし「それでもいいよ」と仰って下さる貴徳な方がおられましたら、下記URLより御一読いただけると幸いです。
どうぞよろしくお願い申し上げます。
⇒【カクヨム】
https://kakuyomu.jp/users/hino-haruto
俺に卓球の才能があったのは意外だが、所詮は高校レベルということか。
ならば、こんな才能は持っていたって意味がない。この歳で卓球をやる機会なんて友達や彼女(居ないけど)と遊びに行った時くらいだろう。
俺はもう一度女の書き出した才能に目を落とした。
”パーカーを上手く着る才能” … 3,800円
”誤魔化しの才能” … 9,800円
”酒に酔いにくい才能” … 6,200円
”卓球の才能(高校レベル)” … 12,000円
酒に強いとは思ってなかったけど、言われてみれば酔って記憶を無くしたり、ゲロったことさえ一度もない。
パーカーを上手く着れなくなるのは少し悩むけど、そもそもパーカーを着なければいい話だし、下手クソでも着れるならいいだろう。
あとは”誤魔化しの才能”か……遅刻した時の言い訳とかが出来なくなるのかな。でも9,800円というのは正直おいしい。
「う~~ん…」
俺はまた腕を組んで唸った。
――チリン、チリン…。
ノスタルジックなベルの音が店内に響いた。
振り返ると、スーツ姿の若い男が入ってきた。見た目は俺と大して変わらないのに、着ているものに品がある。
「いらっしゃいませ」
女が丁寧に頭を下げた。どうやら客のようだ。
「いやあ、以前は才能を買い取って下さって、ありがとうございました! 嘘を吐く才能が無くなったおかげで「最近変わったな」と上司から褒められました! お陰で新しいプロジェクトも任せて頂きましたよ!」
男は明るく自信たっぷりに笑った。女は相変わらず微笑みを崩さない。
「お役に立てて何よりです」
「それで今日は、先週お願いしていた”パワポ(PowerPoint)の才能”が入荷してないかと思って来たんです」
「はい、ご用意しております」
丁寧に頭を下げると女は奥のドアを開けた。初めて見せる動きだ。
小さなトレイに包装済カプセルを乗せて、女はカウンターから出て男の前に立つ。
「こちら税込み価格50,000円となります」
「はい」
スーツの男は内ポケットから財布を取り出した。たぶんブランド物だ。
「カードか電子決済、いけますか?」
「申し訳ございません。当店は現金のみとなっております」
「そうですか」
渋るでもなく困るでもなく、男は財布から一万円札を5枚取り出しトレイに乗せた。
「これで」
「ありがとうございます。こちら”PowerPointに関する才能”の”中級”で御座います」
女は商品のカプセルを手渡した。
「ありがとうございました!」
カプセルを懐に仕舞い男はバカ丁寧に頭を下げると、俺にも会釈して店を後にした。
――チリン、チリン…。
ドアが完全に閉まるまで頭を下げていた女は、カウンターに戻りレジに納めた。
なるほど、才能が無くなって良いこともあるのか。
俺はまた一つ、この店の利用価値を見出した。
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