03 迷走
おかしい。
目指す町にはとっくに着いて良いはずの時間と距離。
よもや人を惑わす怪異の仕業かと身構えた私は、
とてもとても大事な事を思い出す。
そう、私は筋金入りの方向音痴。
修学旅行で迷子になって、見知らぬ街でひとりさまよった末の大乱闘事件は今でも母校の語り草。
はたと気付く。
幌馬車状態のシブマ1号は完璧なまでに幌馬車。
つまりバトルモード時のようなナビゲーションシステムは使えぬ。
ゆえに、そこから導き出される答えは、
「もしかして、道に迷っちゃったのですか」
すまんノルシェ。
「面目ない。 一度変形して地図を確認しようと思う」
「いいですって、うるさくしてマクラちゃんたちを起こしたくないですから、このままこの道を進んでみましょう」
後ろを見ると、アイネさんもおねむ。
起こさぬように慎重に幌馬車を操る私。
いや、見た目は幌馬車だが揺れひとつ起こさぬオーバーテクノロジー完備だったと若干混乱気味の私の前に一軒の建物が見えた。
「あそこで町の方角を聞きましょう」
安堵したようなノルシェの小声。
何だか最近、良いとこ無しだと落ち込む私。
建物の門の脇、馬車置き場へと幌馬車を停めた。