10 お手柄
お久しぶりのマクラ成分に癒されていたら、
王都からの来訪者です。
『転送』して来たのは毎度お馴染み、藪雨銘寺さん。
召喚者仲間のメイジさんは、得意の『転送』魔法を活かして王都との連絡係を勤めてくれています。
「お疲れさまです、モノカ特使騎士」
本当、疲れていますよ。
「すごいですね。 この間任命されたばかりなのに、もう大手柄ですか」
大手柄?
「この連中、ずいぶん前から広域指名手配されていた重罪人なんです」
はぁ、
「なんか、結構な昔によその王国で大規模な人身売買グループ使って荒稼ぎしてたらしくて、一斉検挙で逃げられてから行方が分からなくなってたとかで」
ほう、
「この辺りに怪しい動きがあるって情報はあったんですけど、決定打が無くて動けなかったんですって」
そうですか、それはよござんしたねぇ。
「なんか元気無いけど、これを見たら疲れも吹っ飛びますって」
なんすか、これ。
「とりあえず今用意出来た分の懸賞金ですね。 組織の全容が解明されればこんなもんじゃないと思いますよ」
何かどえらい重たい袋だけど、この重さの分だけ犠牲者がいるってことですよね。
「そういうの引き摺らないで、モノカ特使騎士は今まで通りガンガン悪者退治してくれれば良いんですって」
みんなから励まされてばかりだな。
「この連中の犠牲者はこれで打ち止め、今までの被害者救済は僕らの方で頑張っちゃいますから」
生まれて初めて男性からウインクされて、思わず固まっちゃいましたよ。
「あの、ちょっとよろしいですか」
私たちの話を聞いていたミスキさんが、突然メイジさんに声を掛けた。
深刻そうな表情に、私は席を外す。