01 特使騎士
『リヴァイス 04.5B くのいちと旅の事情』の続きで、
チームモノカのお話しです。
お楽しみいただければ幸いです。
私、特使騎士こと秘崎萌乃果は今とても不機嫌である。
誓い合った旅の仲間たちからの理不尽な仕打ちは、か弱き乙女である私の繊細な心を深く傷つけた。
永遠を誓った騎士ノルシェは、
「乙女にあんな非道な行いをするような人とは思わなかったです」などと言って、大変にご立腹である。
『乙女』というキーワードが絡むと、普段はそれなりに普通の女の子しているノルシェが厳格厄介な堅物女騎士へと変貌するのだ。
地雷を踏んだ私も悪いのかも知れないが、本来の旅の目的を思い出してもう少し斟酌してくれても良さそうなものなのだが。
新メンバーのアイネさんは、
「あれはちょっとやりすぎでしたね」と、残念な娘を見る目で見つめてくる。
同い年であるにも関わらずソロ冒険者としてギルドのトップランカーまで昇り詰めた尊敬すべき女性からのあのまなざしは、私の健気なぼっち魂を抉るように削っていく。
同じ殿方に好意を寄せる者として、もう少し斟酌してくれても良さそうなものなのだが。
何より堪えるのが娘のマクラからの仕打ち。
「お母さん、ひどいよ」
訳あってマクラの母となり、我が生涯を賭けて守護すると誓った愛しい愛娘からの非難のまなざし。
マクラのためにと不殺を誓い、襲いかかってくる刺客は全て無事に生かして帰していたのに、先日リベンジに訪れたえろクノイチの告白を聞いてからはまともに口も聞いてくれぬ。
まさに理不尽。
このもやっとした想い、どこへぶつければ良いのだろう。
ここで、閃いた。
私こと秘崎萌乃果は、国のお墨付きを得た特使騎士。
ぶらりと訪れた場所で見つけた悪を、誰はばかることなく叩っ斬るのが国より賜わった我が使命。
遠慮も斟酌も要らぬ、私がやりたいようにやれば良い。
もちろん不殺は守るがな。
この秘めたる怒り、晴らさずにはおくものか。