まずい飯しか作れないという理由で婚約破棄されました。いつも私をバカにしてきた妹が後釜です…。料理下手が悪いのですかねえ、そんな私がこの特技を生かして竜殺しと呼ばれるまでのお話。
「……凶器といえるこの不味い飯しか作れないのは死活問題だ……」
「はあ」
「さすがに料理を直接は作らないだろうが、茶すらろくに入れられないのは少し……」
私はずらずらと婚約破棄理由を殿下に言われて困ってました。
どんなものを作っても、毒になるとはどんな特技だ? と怒られています。
「わざとではありませんわ」
「それはわかっているが、婚約は破棄させてもらう! 茶を入れてもらっただけで人を殺しかける妻は持てない」
「殺すなんて……」
「この見た目で、この不気味な物体で! 魔法でスキャンさせてみたら竜すら殺せる毒に匹敵するといわれたぞ!」
紅茶を入れただけですが、まるで泥というか、何か怪しい色になっています。
普通にいれただけですが……。
「わかりました……」
お茶なんて入れることがあるなんて思いませんでした。どうしてお茶を入れさせられたのか後で理由がわかることになるのですが……。
私は家に帰るも、恥ずかしい理由で婚約破棄された娘として家を追い出されました。
そして後釜は妹だということです。妹は料理上手で知られてますけど……。
よく私の料理を馬鹿にしましたわ、まあそれは仕方ないのですけど……。
「竜殺しというのなら、本当に死ぬか確認しようかと思いまして……」
「だからといって冒険者になるか普通?」
「はあ」
私は冒険者になり、手に持ったクッキーを仲間に見せました。
お前のくそまず料理は確かにモンスターを殺すけどさ、と剣士のリアンがため息をつきながら言います。
「口に突っ込むだけで死ぬなんてすごく簡単かなって」
「匂いを嗅いだだけで死ぬのもいたぞ、人間は大丈夫か?」
「出来立ては封印してますから」
「……わけがわからねえ」
あれから私は料理を生かして、モンスターを退治し続け、とうとう最高ランクに近づきました。
竜退治のクエストに行ってみたいといったら、みなが嫌がったので、リアンだけがついてきてくれましたわ。
「しかし、あっけなかったですわ」
「クッキーを口に放り投げただけで死ぬなんて……」
「これで陛下に謁見できますわね~」
「まあそうだがな」
竜殺しの英雄は王と直接会うことができるのです。私はこれを狙っていました。
ウフフと笑うと、恐れるように身を引くリアン。
しかしねえ、竜殺しといわれるようになるとは思いませんでしたわ。あの妹が何度も私に料理をさせて馬鹿にしたからでもありますけどねえ。
私ははあとため息をつくリアンに復讐の第一歩ですと笑いかけたのでした。
「……メシマズで婚約破棄? 知らなかったが」
「はあ、私の作る料理がまずいから破棄すると」
「いや初耳だ」
陛下に謁見して破棄の理由を言ってみると、やはり知らなかったと首をふるばかりでした。
私はそれと合わせて、妹がこれまで料理好きを武器に男を落としてきた遍歴も伝えるとますます驚く陛下。
「……情けない……」
「やっとお伝え出来ましたわ」
私は陛下に、すまなかった竜殺しの英雄となった貴方に褒美をと言われたので、そんなものはいりませんわと笑ったのです。
冒険者って意外と楽しいですし、リアンが苦笑しているのをちらっと見てうふふと笑うと陛下がそうかとうなずきます。
そして……。
妹が私の料理下手を殿下に伝えるために私がお茶を入れるのが上手だから入れてもらったら? などと後で言っていたことが判明。
そして妹の数々の男遍歴がわかって、辺境送りとなり、うそをついて私と婚約破棄した殿下は廃嫡。
あ、私はあれから特技を生かして相変わらずリアンと冒険者をやっています。
クッキーで竜退治をしたのは内緒ですけどね。
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