Vendetta.1 幼馴染
「薬草取り?」
「うん。 この籠一杯に」
「うへぇ⋯⋯」
先ほど母さんから言い渡された事を伝えると、目の前の少女はゲンナリした顔を隠さず、大袈裟な動作で首を振る。
この子がヨゥちゃん。明るい緑髪を肩にかかる程度に伸ばす、平均より小さめな女の子だ⋯⋯色々と。
「ユウ、何か失礼なこと考えてない?」
「うぇ!? ⋯⋯なんで?」
「頭の上と胸の辺りを交互に見やる視線が根拠」
しまった。考え事が視線に現れていたか。
「や、やだなぁヨゥちゃん。今更そんなところ見るわけないじゃない」
「今更?」
墓穴ッ! 要らない単語が彼女の怒りに火をつけ、僕の寿命を削っていく!
くぅ⋯⋯こうなれば致し方無し。惚けられないなら対応方法を変えるまで!
「⋯⋯だ、大丈夫! ヨゥちゃんまだ成長期だし! これからグングン大きくなるよ!」
「⋯⋯ホント?」
僕もヨゥちゃんもまだまだ15歳。これからが成長期本番だし、希望はあるよね。
「ホントホント! 僕がヨゥちゃんに嘘ついた事ある?」
「ある」
うはー即答。そこは多少目を瞑ってくれても良いじゃん。
「うーん⋯⋯どうしたものか」
「じゃあ責任」
「えっ?」
「大きくならなかったら責任とって」
責任って何だ? 責任とって大きくしろと?
「えっと⋯⋯ごめん聞いて良いかな?」
「どうぞ」
「責任ってどういう⋯⋯」
「お、お嫁さん⋯⋯」
「えっ?」
「だから、大きくならなかったらお嫁さんにして」
何という事だ。幼馴染が許嫁にジョブチェンジしてしまった。いや、別に嫌なわけじゃないし、ヨゥちゃん可愛いからむしろありがとうございますって言うか⋯⋯あれ? という事は僕は彼女が大きくならない様に願ったほうがいいのか? んんん?
「ユウ?」
「⋯⋯わかったよ」
「ホント?」
「ホントホント」
「⋯⋯んふふ〜」
僕がそう答えると彼女はあからさまに嬉しそうな顔をし、くるくる回りながら怪しい笑い声をあげる。
一頻り笑い回った彼女は不意に動きをピタリと止め、僕の顔を見て言う。
「早速薬草取りに、行く?」
「うん。よろしくねヨゥちゃん」
「お任せ侍〜」
そう言い村の裏の森へ歩き出すヨゥちゃんの後を追い、僕も歩き出すのであった。