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「将棋とやらは面白いな」


「今クリージュで確か作ってるぞ。ちゃんと文字も変えてあるやつがな」


「帰ったら取り寄せよう。こちらでも軍棋というものがあるが、動きも自由で運要素が強い。これはよく考えられている」



食後の腹休めで将棋を始めたのだが、嵌まってしまい視察にはまだ出ていない。

まあ狭い村だから視察もなにも1日で見終わるのだけど。



「これは………負けたな」


「単純に攻めるゲームじゃなく相手の動きを予想して行動をコントロールするゲームだからな」


「やはり良くできている」


「そうだな。歴史が古いからな」



午後3時くらいまで将棋をしてから視察に行く。

王を連れて家の裏のタンクを見に行く。

そこでタンクの説明をしながら、水の供給と排水について説明。

スライムがいるので必要ないが、古代ヨーロッパでも水道橋なんかはあったはずだ。



「なるほど、これで川から水を引いているのか。井戸は掘らぬのか?」


「大量に使う場合、汲み上げるのが大変だからね。水を流し続けるだけでも、衛生は大分良くなるぞ」


「井戸とは別で水場を増やすのは良いかもしれんな」



次は塀を案内する。

こっちも蛇籠だから珍しいとは思う。



「塀か? 些か低いのではないか?」


「この回りで出る魔物がゴブリン、コボルト、オークの3種類だからそれを避けられればいいさ。こんな森の中で戦争用の塀は必要ない。それに小さな村だったらこれすら過剰ではある」


「なるほど。しかし不思議な形だな。金紐か?」


「それを編んだ物だな。石の塀より早くできるからな。本当は普通の木を編んだ籠で十分なんだがな」


「これは、お主の国では平均的な塀なのか?」


「これ自体は元々土木工事のための物だ。他にも袋に土を入れた物を重ねた土嚢という物もある」



元々河川工事の物だしな。

歩いてる途中の道路と砂利道も質問された。



「こっちはあの綺麗な道ではないのだな」


「こっちのほうが安いし楽だからな。土よりは砂利を利用した方が雨で掘り返されることも少ないし、整備が簡単だぞ。ならして叩くだけだ」


「こちらでも砂利はよく使うが、もっと増やしても良いかもしれんな」



そこからガゼボで休憩する。

土木系はこんなものだろう。

コンクリートは成分が分からないでごまかした。

これってどうやって作るんだ?

知識が無いから教えられん。

こういうものだ。



ここまでの土木すべてに俺が関わっていることに王はとても驚いていたが、国の住民数を考えてくれ。

便利人間の俺が休める訳がないだろう。

俺の収納だけで工事が2倍は早く終わる。

ショベルカーやクレーンと同じ括りに入る。

俺はそういう人間だ。



「しかし国ができてから1年も経っていないだろ。発展が凄まじいな」


「もう少ししたらそれも落ち着く。そしたらゆっくり隠居生活に戻るつもりだ」


「まだ若いだろうに、もう隠居か?」


「釣りと酒さえあれば楽しく過ごせる人間だからな。隠居というよりは遊びだ」



どうせパーチュに全部押し付けるつもりだし、俺は裏でフィクサーでもやっていよう。

冒険者の裏にいる親玉みたいなポジションがいいよね。

昔テレビで見た政治家みたい。



「国なんて任せて、こちらは口を出すぐらいが丁度いい。死んでから任せたら口なんて出せないぞ」


「たしかにな。余もいい加減隠居してもいいかもしれん。皆余が死ぬのを首を長くして待っている」


「じゃあ勝てないと分からせてから隠居した方がいいな。後で絡まれると厄介だ」


「………今初めてお主の気持ちが分かった。たしかに厄介だ」



俺みたいに派手に見せつけたり、圧倒的にやっつけたり、面倒臭いことこの上ない。

利権を持ったまま隠居するのが一番だ。

俺なら魔石だったり、組合だったり。

誰にも文句を言われないような仕組みを作ってきた方がいい。



「たしかにな………。宰相と相談してみよう」


「王子たちにも政治というものを分からせた方がいい、跡目争いなんか可愛く思えるような政治を」


「ふむ………。これも教育か………」



どうやら決心がついたようだ。

跡目争いとか面倒臭いなら頭いい奴に全部任せちゃえばいいのに。

やっぱり王様なんてやるもんじゃないな。

やらせるもんだ。



その日の晩は全員うちに招待して、恒例の海賊料理でおもてなし。

マナーすらない食卓はさぞかし新鮮だろう。

ザルにあけた魚介類を新聞紙を敷いたテーブルにぶちまけて、全員手掴みでモリモリ食べていく。

俺絶対将来痛風だな。



「これは………どうやって食べれば?」


「俺たちと同じ食べ方すればいいさ。美味しく食べればそれでいい。味付けはそっちで勝手にやってくれ」


「そうか。やってみよう」



宰相がはしたないと咎めるのを無視して食べていく。

宰相も記念に食べていけ。

酒が旨いぞ。



「旨いな。何か特別な調理でもしてるのか?」


「旨いものはどんな食べ方しても旨いさ。早く食べないと取られるぞ」


「王様なんじゃからもっと豪快に食わんか!! 誰も文句言えない人間じゃろうが」


「そうか………。そうだったな。どんな食べ方してもいい人間だった」


「ガハハハハハ!! 飲め飲め!! 飲んで暴れてしまえ!!」



暴れられるのは困る。

だが、もう少し力抜いてもいいんじゃないだろうか。

どうせ休みなんだし。

飲む以外この湖でやることなんてないぞ?

冒険者でも目指すか?



結局、食べて飲んでを繰り返しているうちに寝落ちしてしまい、衛兵に担がれて帰っていった。

最後まで優雅だったが、ある程度は柔らかくなったような気がする。

潰れる前の最後の言葉が"迷惑をかける"はさすがだわ。





「昨日は迷惑をかけたようで申し訳ない。久しぶりに酔ってしまった」


「まあ楽しそうで何より。今日は長屋という集合住宅から見せていくつもりだ。スラム管理なんかには良いかもしれないぞ」


「よろしく頼む」



王様を長屋に連れていき、共同トイレや土間なんかを見せていく。

作るのが簡単なことや、壁を抜けば大きさを変えられることを説明。

空いてる土地があるならやってみても良いかもしれない。



そこから食料品店や商店、工務店なんかを見ていく。

まあここら辺は見るものあまり無いしね。

というかもう終わりじゃないか。



「まあここはこんな感じだ。何か質問は?」


「ないな。聞くことも無いくらい単純な国だが、みんな楽しそうだ」


「それは良かった。何か向こうでできることもあるかもな」



午前中で終了。

好きに見てもらって、俺はデッキで釣りしに行こう。

何かあったら呼んで。

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