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組合のこれからと王の休日



本部の2人に国の将来像を教えてあげる。

俺の死後、国の運営は組合に任せ、産業はすべて組合が運営していくこと。

老後の冒険者の仕事の斡旋や、移住に関してもすべて組合に渡すこと。

調味料を含めた権利や製造もすべてノウハウは組合に教えていくことを含め、2人に詳しく説明していく。



「本部長、私はケン様のご提案に賛成です。しかし、よろしいのですか? 国なんてご自分の子孫やなんかに財産として残していかなくて」


「俺が死んだ後、俺の道具無しでの国の運営をしていくことを考えれば、立地も含めてこれが最善だと思う。俺はそれまでに国の安定と産業の発展、国内での仕事を増やすことに専念する」


「ケン様の国ができてから冒険者組合が頭を悩ませていた問題が次々と好転しています。各国の冒険者組合、総本部もケン様には感謝していました。この件についても直ぐに総本部に連絡し、改めてご連絡差し上げます」


「ケン様。老後の冒険者の件を含めて、心から感謝申し上げる。ケン様には本当に………。ありがとうございます………」



本部長が泣き出してしまった。

ゴリラの目にも涙。



「ということで、国の運営なんかを教えていくために今日は頭がいい人間を誘拐しに来たよ。誰か生け贄ちょうだい!!」


「生け贄………。本部長。私、ケン様についていきたいのですが………」


「分かった。本部の運営が大変になるが、将来を考えればお前が最適だ。頼めるか?」


「下の人間も育ってきました。2人ぐらい私の代わりにお付けします。ケン様いつ頃向かえばよろしいですか?」


「言ったじゃん。誘拐だよ? そっちから来てどうすんのさ。荷物まとめて明日出発だよ。ちんたらすんな!!」


「急過ぎて無理です!! 仕事の引き継ぎなんかもありますので!!」


「………しょうがないな。さっさと来いよ!! ちんたらしてたら冒険者に拐わせるからな」



2人に送られて受付ホールにでると、その場にいた冒険者全員が整列して俺を見送る。



「いつの間に………」


「宗教みたいなものだ。気にすんな」



そのまま組合から出ると、今度は衛兵が整列して俺を出迎える。

こっちはなんで?



「ミヤジマ陛下。突然失礼致します。ミヤジマ陛下が王都に来た知らせを聞いて、レイナード陛下が是非お食事にお誘いでもとお迎えに上がりました」


「そういうことね」



そのまま王城に案内され、大層な出迎えと共に豪華なダイニングルームに案内された。

王様も直ぐに到着するようだ。



「いきなりお呼びして申し訳ない。いろいろと聞きたい話があったものでな」


「別に問題ない。お誘いいただき感謝する。王城に来るような格好ではないが、許していただきたい」


「いきなりお呼びしたのはこちらだ。そのようなことは気にしなくても問題ない」



堅苦しい挨拶を終えると食事が運ばれてきた。

王にしては質素な食事だ。



食事中、戦争のことや今回王都に来た訳を話したが、国ごと組合に渡すことに大層ビックリしていた。

後は森を貫通する街道の設置が完了したことを説明し、森を回り込まなくてもよくなったことを伝える。



「国ごとあげてしまうか………。権力に興味は無いのか?」


「ないな。王様なんて面倒なことはしたくない」


「確かに面倒だな。跡目争いも激しい。そこについては賛同する」


「いっそ町に出して修行させては? いい勉強になると思うぞ」


「確かにな。そういうことも視野に入れていこう」



ついでに丁度食事時なので、俺が作った調味料を披露する。

トマトだけを潰したもの。

トマトと唐辛子を一緒に潰したもの。

油も入れて全部潰したもの。

アンチョビに魚醤。



「魚が調味料になるか。これだけ味が増えれば民も喜ぶだろう。トマトや唐辛子の評判もとてもいい」


「これの作り方は教えよう。広めて民の生活を豊かにしてほしい」


「いいのか? これだけでも稼げると思うが」


「調味料は広めなくては意味がない。使い方も料理も増えないからな」


「感謝する。必ず広めると約束しよう。感謝の気持ちとして、何か欲しい物はないか?」


「なら番の家畜が欲しいな。うちは冒険者が多いので安全に増やせると思っている」


「そういうことなら任せてくれ。もし増えたら我が国にも卸してほしい。家畜はもはや絶滅しそうになっている。魔物以外で肉が取れれば民も喜ぶだろう」


「後は魔道具だな。今研究していて、もしかしたら安く魔道具が卸せるようになるかも知れない。なんなら購入でも構わない」


「いろいろやっているな。分かった。宝物庫からいくつか提供しよう。金ならいらないので、魔道具が完成したら余にも送ってほしい」


「今出回っている魔道具は故意に性能が落とされている可能性が高い。だが構造は意外と簡単だ。すでに性能の向上には成功している」


「さすがだな。余も民のためにいろいろ考えているが、なかなかいい案が思い付かなくて困っている。トイレのスライムの案を含めて、ミヤジマ王には学ぶ物が多い」


「一度湖に遊びに来るといい。のどかでいいところだぞ。ゆっくりできるしいろいろ見てみてもいいかもしれない」


「是非伺わせていただこう。我が国でできることもあるかもしれん」



そのまま王城に泊まらせてもらい、翌日早朝に向かうのだが、なんとそのまま王様がついてきたいと言い出した。

宰相と護衛含めて6人、護衛が少ないのは気を使ったのだろう。

馬車も準備していたが、遅いので車で案内する。



「しかし仕事は良いのか? 忙しいだろう?」


「必要なことは任せてきた。3日ほど国を見せていただきたい。馬車は置いていくが帰りも送っていただけるのか? なんなら後から馬車についてこさせるが」


「それも大変だ。帰りもうちの人間に送らせよう」


「感謝する。何日ぐらいかかるのだ?」


「3時間だ」


「は?」



ナビゲーターに全員を乗せるとパンパンなので、王様はリーフで俺が連れていく。

王都を出て、スピードをあげて運転していく。



「は、速いな。馬抜きで良くここまでスピードが出るものだ」


「この魔道具は俺が死ねば使えなくなる。今だけの物だ」


「………もっと恐ろしい人間だと思っていたが、なんでそんなに悪者に見せようとするのだ?」


「利用されるのが嫌でな。ただのイタズラのようなものだ」


「イタズラか………。ミヤジマ王は人生を楽しんでいるな」


「レイナード王も楽しめ。それを見て下も勝手に生きていくさ」



湖に案内したらどこに泊めよう?

テントはさすがに無いな。

たしかmachineryzoneにプレハブがあったからそれでいいか。

トイレとシャワーはうちの使わせればいいし。



湖に到着。

早速家のすぐ横にプレハブ小屋を設置して、中を案内する。

2段ベッドは収納して普通のベッドに換えて、ソファーなんかを置いてくつろげるようにした。

ユニットバスついてるじゃん。

でも配管通してないし使用はやめてもらおう。



「十分だ。感謝する」


「荷物を置いたら教えてくれ。湖を案内しよう」


「直ぐに終わる。待っていてくれ」


「服は汚れるかもしれないから動きやすい物でいい。威厳を見せる相手もいないんだ。寝間着でも構わない」


「ミヤジマ王の服は動きやすそうでいいな。王になると服装もうるさいからな」


「ジャージでいいのか? これぐらいならプレゼントしよう」



レイナード王にジャージを渡して、外のガゼボで休憩する。

セバスチャンには王についてもらい、アマンダが俺の相手をしてくれるらしい。

アマンダにお茶を入れてもらい2人でクッキーをつまみながら王が出てくるのを待つ。



「これは軽くて着心地もいいな。良かったらいくつか売ってくれないか? 普段着にしたい」


「帰りに持たせよう。それぐらいならプレゼントする」



王を連れて一番近い燻製機から見ていく。

足が悪くても働けるし、何より旨い。

その場で七輪を出して王と燻製された魚をつまみに日本酒を飲む。



「旨いな。しかも燻製だから保存も利くのだろう? 港町の新しい産業になりそうだ」


「それは燻製時間が短いから3日も持たない。時間が長いのはこっちだ」


「固いな。………だがこっちも旨い」


「低い温度で1週間、きつめに干した魚を燻してある。それなら半年ぐらい持つんじゃないか?」


「そんなにか。保存食としては十分だ」



燻製機の次は道場。

自慢の庭を見せて、のんびり話しながら酒を飲んでいく。

昼前からベロベロになるんじゃないか?



「セバスチャン。昼はここで食べる。というかつまみだな」


「かしこまりました」



俺は縁側の上に火鉢を置いて、炭で魚介や野菜を焼いていく。

最初は軽く野菜から。

ナスやキノコを焼いていき、ハケで醤油を塗っただけ。

酒が旨い。



「簡単な料理だが、旨い。酒にも合うのだな」


「酒のアテに難しい物なんていらないさ。塩分と旨味があれば酒はすすむ」


「………真理だな」



ホタテを焼いていき、今度は塩だけを振って頂く。

幸せ。



「たまらんな。宮廷の料理にはない旨さだ」


「火から直接だ。どんな物でも旨いさ」


「そっちが本当の口調なのだな。余はもう癖になってしまったが、懐かしい気分だ」


「たまには昔から付き合いのある人間とこういうこともやってみればいいさ。意外と楽しいものだぞ?」



火鉢に小さい鍋を置いて、貝でスープを作っていく。

味付けは塩と胡椒だけ。



「小さいコンロだが、いろいろできるのだな」


「1人2人なら十分だ。小さいほうが雰囲気がいい」


「確かにな」



スープを飲み終わり、さっきの燻製の魚を炙りながら横で塩をきつめに振った鶏肉を焼いていく。



「フルコースか。これ一つで全部作るのだな」


「なんでもいいのさ。まあつまみ兼昼食だからな」


「嵌まりそうだ。余も帰ったらやろう」


「おすすめだ。野菜だけも旨いしな」



その後も俺が作った調味料まるごと使った乾燥トマトのアヒージョに炙ったパンを浸けながら食べたり、ホタテをおかわりしながら酒を飲んでいく。



楽しんでもらえたようで何より。

3日もあるし、休暇だと思ってゆっくり視察していってもらおう。

とりあえずは道場でのんびりしてもらおう。

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