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食材改革


8月も終わりという頃、工務店が完成した。

これから建築や土木なんかは全部任せていくつもりだ。

俺は建材の提供だけ。



どうやらもう仕事は無いようだ。

ブラブラしながらみんなの仕事を見ていき、足りないものを補充したり、分からないことを教えてあげる。



燻製小屋もコンテナを2つ出して増設した。

この人数でやるならこれぐらい必要だろう。

干すカゴも網に変えた。



「ジェイソン。新しい家だぞ」


「確かに住めそうっすけど、臭くなりそうっすね」


「この仕事始めてからずっと臭いぞ」


「………え?」



ジェイソンに事実を教えてあげる。

毎日煙に晒されながら魚捌いてるんだ。

臭いに決まってるだろ。



ショックを受けているジェイソンを放置して、俺は道場へと足を運ぶ。

道場では、セバスチャンがアマンダにナイフ格闘術を教えていた。



「それでは良いメイドになれませんぞ!!」


「はい!!」



ナイフ格闘術ってメイドと関係無いだろ。

使用人=殺戮マシーンじゃないぞ。

セバスチャンだけだ。



そんな2人を横目に、縁側で茶をすする。



子供たちもちゃんと職業訓練しているようだ。

将来が楽しみだな。



庭の落ち葉なんかを掃除しながらこの湖に足りないものを考えていく。

衣料、家畜、学校、酒蔵なんかは必要だろう。

鍛冶師も見つけたい。

セルゲイ王に聞いてみよう。



調味料を作る工場も欲しいな。

醤油味噌はほとんど俺しか使わないし、こっちに合わせて魚醤とアンチョビ、乾燥トマトと唐辛子のオリーブオイル漬けなんかが保存にはいいと思う。

海ではないが、調味料としてのアンチョビなら生で食べるわけでもないし、淡水魚でもできるはずだ。



一回自分で作ってみるか?

久しぶりに料理するか。



取れたてのレイクパーチを捌く。

アンチョビ用は皮も中骨も頭も取ってしまう。

その身をタッパーに塩と交互に積み重ね、蓋をして2ヶ月ほど置いておく。

完成したらオリーブオイルに浸けて完成。



魚醤用は鱗、内臓、ヒレ、エラを綺麗に取った物に、総量の3割ぐらいの塩と一緒にタッパーに落し蓋と一緒に入れて放置。

これは様子を見ながら魚が崩れるまで置いておこう。

1年ぐらいかかるはずだ。



洗ったプチトマトに塩を振って乾燥させる。

これを唐辛子、ハーブ、ニンニクをオリーブオイルで揚げて味を移した油に、入れてこっちは完成。

使うときに唐辛子とトマトをすりつぶして調味料として使うものだ。

オイル漬けなので保存もバッチリ。

缶詰めもビン詰め作れないうえに保存も利かないので、こういう形の調味料にした。

ペーストにすればそれだけでトマトソースのようにいろいろな料理に使えるはずだ。



乾燥トマトは市販の物を使って味の確認だけしてみる。

ペーストにして、水分と塩を足したトマトソースを作る。

これでスープやパスタ、煮込み料理を作っていく。

油も調味料として使えるし、無駄になることも無いだろう。



できた料理は、マリナーラ風な味付けで、パンにもとても合う。

魚醤のスープ、炒め物も作り、アンチョビを使った炒め物なんかも作っていく。



「みんな、味見してくれないか?」


「これは? 普通の料理じゃないか」


「いや、これに使った調味料をここで生産したい。保存も利くし、このトマトを使った物に関してはすぐできる予定だ。この近隣の国で流通させれば、これがここら辺の家庭の味になる予定だから、みんなの反応がしりたい」


「そうじゃったんか。確かにお前さんが居なくなった後に、塩とハーブの料理だけに戻るのは辛いのぅ」



みんなに料理を食べてもらって、反応をみる。

魚醤なんかは臭いが、炒めたりして火を通せばそれも弱くなる。

いけるようだったら、人を使って生産を始めよう。

冒険者に売れれば、勝手に各地で広まってくれるだろう。

普通に安価だしね。



「この調味料は醤油っすか? ちょっと味がいつもと違います」


「それは魚の塩漬けの汁だ。塩に漬けてから1年から2年経った物の絞り汁だな。ちょっと臭いが、塩のように使えて、保存も利く。ニンニクと砂糖、油なんかと合わせれば肉にも合うはずだ」


「うまいっすね。この塩漬けの魚もそのまま調味料として使えそうっす」


「トマトのソースも旨い。この煮込みは流行るのではないか?」



反応はいいな。

燻製とは別で調味料工場の建設もグスタフにお願いして、人間の確保もお願いしておいた。



後は衣類か………。

麻の袋なんかは売ってるんだし、ロバートさんに植物の種を探してもらおう。

服なんかを作れるようになれば、女性も働けるしな。



明日、相談してみよう。



「麻ですか? 吸うんですか?」


「違うわ!! そっちじゃなくて、麻布になる植物ありますよね? ここで服作りも始めようかと思いまして」


「分かりました。布をこちらで買い取るよりも、そちらのほうがいいと思います」



これで衣食住はある程度大丈夫かな?

後は組合にも話しておかないとな。

誰かこっちに町の運営できるやつを送ってもらおう。

将来のことを考えれば、俺の横でいろいろ見ていく奴も必要だろう。



「本部から優秀な人間をですか?」


「パーチュさんでもいいですよ?」


「本部が潰れますので無理ですね。というかご自分で拐ってきたほうが早いのでは?」


「誘拐ですか? いいですねそれ」


「冗談で言ったんですが………」




王都に行って拐ってくるか。

将来のことも相談しないといけないし。



「セバスチャン。王都に行くぞ!! 誘拐だ」


「ホッホッホ!! 面白そうですな!! 直ぐに準備致します。アマンダさんはここに残って勉強の続きをしておいてください」


「はい!!」



セバスチャンを迎えに行くと、アマンダがお茶の入れ方を勉強しているところだった。

なんでナイフを持っているのかは分からないが、ちゃんと勉強するように。



「明日には帰ってくる予定だから、そんなに置いておく物もないな」


「新しい街道を通れば、王都には3時間で着く予定でございます。街道ができてから、冒険者たちに混ざって時折商人も通るようでございます」


「もう来てんのか。知れるまではもうちょっと時間かかると思ってた」


「冒険者の方たちが護衛依頼の際に連れてきてくださるようです。どうやら近道として案内しているようですぞ」


「そうなんだな。西の村も軽く見ておくか」



西の村によると、丁度新しく宿屋を建てているようだったので木材をプレゼントしておいた。

そのままセバスチャンの運転で王都に到着し、組合本部の場所を聞いて乗り込む。



本部に入っていくと、見知った冒険者が何人かその場で整列して俺を迎える。

それを見た他の冒険者が唖然としていたが、それを無視してカウンターに向かう。



「ケン様!! いきなりどうなされたのですか!? 用が御座いましたらこちらから伺いましたのに!!」


「本部長かパーチュさんはいるかい? ちょっと国のことで相談したいことがあるんだ」


「どちらもおります!! 直ぐにご案内致します!!」



受付での対応を見た冒険者が、さらに唖然としていたので、俺は忠犬たちに酒を渡してお友達を増やすように伝えておく。

愉快な仲間たちを増やしておくように。



組合員に案内され、豪華な待合室に通される。

ソファーでセバスチャンが入れたコーヒーを飲んでいると、本部長とパーチュさんが入ってきた。



「お待たせ致しました。お久しぶりでございますケン様。なんでもご相談があるようで………」


「国をあげるよ」


「「へ?」」



よし。

掴みはバッチリだ。



それを見たセバスチャンが後ろで大笑いしていた。

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