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酒は百薬の長


「私もエリーちゃんとリリーちゃんと宿屋やりたい!!」


「僕は冒険者になりたい!!」



双子の要望は宿屋と冒険者か。

女の子は宿屋が多いな。

お手伝いしているからかな?



取り敢えず兵士と冒険者志望はバラバラにいろんな仕事させてみよう。

おやっさんも了承済みだ。

ベア君が代わりに入るからね。



長屋の方は、壁に合板を設置するところまで来ている。

そこに防水シートを張り付けていき、壁材を打ち込むところまで今日中にやるようだ。



俺はタンクの設置だ。

タンクに川からパイプを引くのだが先に下水管に繋いだり、バルブを繋いでおかないと後で工事が大変だ。

一回一回びしょびしょになってしまう。

下水管も先に埋めておく必要がある。



水道設備組は俺の指示のもと、大元の下水管を通す。

ショベルカーにビビっていたがそのうち慣れるだろう。

ここはまだいいが、一番南に設置するタンクは1.5kmも離れている。

今回はそれも見据えて3本の下水管を埋めていく予定だ。

500mも短縮できれば十分だろう。



道場の森の入り口辺りからはそのまま露出させるので、そこまで繋がればいい。

途中で家の下水管に合流するが、ここからはスコップで掘らなくちゃいけない。

ショベルカーで下水管を破壊してしまう。

糞が噴き出してくるぞ。



今日は1日穴掘りで終わってしまう。

まあしょうがない。



長屋はもう内装工事に入っている。

俺とセバスチャンとグスタフはちょっと残業して、ソーラーパネルと電装の設置。

モンケもアマンダは先に帰した。

今日は授業で長屋の子供たちとも仲良くなれたようだ。

帰りにみんなと挨拶を交わしていた。



長屋ってパネルいっぱい設置できるからいいね。

明かりと給湯しか使わないけど。



「王様の乗った箱すげぇな」


「穴掘りがあんなに速くできるなんて………」


「………一番遅くまで働いてたな」


「そうだな………」



今日は家でベア君に卵焼きを教えてあげた。

店では死ぬほど作った。

出汁はコンソメで、中にソーセージを巻いている。



「すごいです。フライパンの振り方がカッコいいです!!」


「最初は食材が無駄にならないように、濡れたハンドタオルで練習するんだ。畳んでフライパンに乗せて、お箸で巻いていくようにね」


「はい!!」



洋風卵焼きは意外にも好評で、ベア君も食後に一人で練習していた。

精進するように。



「明日で完成じゃな。人数がいるから早いわい」


「こっちは明日水をタンクに入れ終わるかどうかだな。断熱材やフローリングなんかは出しておくから頼んだ。後車椅子の人たちの家は坂と手すりも家につけてやってくれ」


「了解じゃ」



酒を飲みながら、組合から渡された目録に目を通していく。

希望は仕事ができるならなんでもいいがほとんどで、特技の欄には料理に計算、魔法や解体なんてのもある。

スキル持ちも何人かいるようだ。

怪力だの遠視だの。

スキル持ちでも職にあぶれるのか。

できればスキルを生かした仕事に就かせてあげよう。



車椅子や怪我で体が不自由な人間の仕事も考えよう。

手を使う仕事、足を使う仕事、頭を使う仕事。

うちには仕事しかない。




翌日からパイプを埋めていく人間と、パイプを上に上げる人間に分かれて工事をしていく。

川からスタートして、途中まで元々のパイプと並べて進ませていく。

途中で分かれて南に進ませ、タンクにドッキング。

下水管も長屋と繋がった。



長屋も内装が終わり、後は釜戸と流しを設置するだけ。

一応今日から住めるので、みんな荷物を運び込んでいる。

今はまだ荷物が少ないが、棚と衣装箪笥を先に設置しておこう。



やっと医療要員が組合についたようだ。

なんでも、組合に所属している人間が少なくて派遣できなかったらしい。

一応ハイヒールまで使える人間のようだ。

ひとまずは十分だろう。



明日、長屋にベッドや流しを設置したら終わり。

必要な物は金を渡して商店で買ってもらおう。

ついでに次建設するものに人間も割り振らないといけないしな。






「みんなの家が完成した。これから金を渡していくので、必要な物は揃えるように。後毎月の給料だが、取り敢えずは全員一緒だ。一律大人が1000fで子供は300f。毎月月末に支払う」


「おぉ………」


「明日から漁師小屋や八百屋なんかのみんなの職場の建設に入ってもらう人間と、塀を作る人間に分かれて働いてもらう。店なんかはできたら人間を割り振っていくし、塀の外に大きめの畑なんかも作っていく」


「おぉ………」


先に今月の給料から払っていく。

丁度8月の終わりなので、今月分。

まだ数日しか働いてないが、いろいろ必要な物はあるだろう。



「すげぇ………。こんなに貰っていいのか?」


「やっと安定した暮らしができるな………」


「本当、来て良かった………」



みんな苦労してきたのだろう。

まあ冒険者の現役も短いしな。

まだ体力が残っていても、昔のようには戦えないだろう。



今回みんなの給料を一律にしたのは、金額によって人気の職業と不人気の職業を出さないためだ。

売り上げによって多少ボーナスは出すし、不人気な仕事にも手当てを弾ませる。

完全に国営にしてしまう。



共産主義のように働かない人間が出る可能性もあるが、それはみんな苦労してきたし大丈夫だと思う。

ダメなら森のキャンプ場の管理をさせよう。

遠いしキツイから。



「旦那様、皆嬉しそうでございますな」


「そうだな。俺もいい暇潰しができて良かった」


「ホッホッホ!! 大分規模の大きな暇潰しでございますな」


「セバスチャンも国貰ったとき大きなオモチャぐらいに考えてたじゃないか」


「人が増えたら管理が大変ですぞ?」


「国民というか遊び友達だろ? みんな生活に余裕ができたら楽しんでくれるさ」



今日は移住者と宴会だ。

みんなも仕事が終わったら来るだろう。

ついでに冒険者も呼んで盛大にやるか。



ピィィィィ!! ピィィィィ!! ピィィィィ!!

宴会の合図を出す。



「キャンプ場で準備しろ!! 肉も組合から持ってこい!! お前らは火をおこして料理の準備だ」



移住者が冒険者の団体を見てビックリしている。

お前らも元冒険者だ。

直ぐに愉快な仲間に入れる。

動物王国のな。



ジェイソンに無線で燻製を持ってくるように伝え、ケビンにも野菜をお願いした。

女性陣は無線を聞いて直ぐに料理の支度を始める。



その動きはまるで軍隊のよう。

移住者も買い物を忘れてその光景を眺めている。



「お前らも買い物を終わらせたら準備を手伝え!! 宴会だぞ!!」


「は、はい!!」


「お前、組合に行ってサイレンを3回鳴らすように伝えろ。森のキャンプ場でも宴会の合図なら聞き逃さないはずだ」


「は!!」



元冒険者たちも俺の酒を飲んでイチコロだった。

奥さんが白い目で見ているぞ。

そこに遅れてきた冒険者も参加。

200人ぐらいはいるかもな。



「セバスチャン殿!! 一度手合わせを願いたい。初めて見たときからタダ者ではないと思っていた」


「私で良ければ喜んで」



お前来たときヨロヨロだった奴じゃないか。

なんでそんなに元気になっている。

しかも強そうだし。



セバスチャンとおっさんの戦いを見て、血が騒いだのだろう。

他のおっさんやおじいちゃんまでもが模擬戦をはじめだした。



ちょっと待て。

お前車椅子はどうした?

酒を飲んだら治った?

んなわけあるか。



ヨロヨロのおじいちゃんが剣を握った瞬間にバーサーカーに変わった。

あれ? 俺魔剣なんて買ったっけ?



しかも普通に現役に勝ってるし。



どうやら労働力じゃなくて戦力の方が上がったようだ。

セバスチャンも骨のある相手と戦えて嬉しそうだ。

どれ、俺も一戦やってくるか。



「お相手致します」


「ザジか。よろしくたのむ」



速ぇ!!

こいつ斥候か!!

動きづらいように地面にレンガを撒き散らす。



「なに!!」


「隙あり!!」



ガンッ!!



俺もレンガに足を取られて転けた。

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