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計算ドリル


翌日は、朝から大量の二日酔い患者が出た。

祭りに浮かれて初日から飲みすぎたようだ。

俺になついている野良を集めて患者たちを湖にぶん投げる治療を施す。

聞いたことない?

まあ国が違うから。



トイレを朝もう一回ホースで丸洗いして、寝ていた野良もきれいに洗ってあげた。

外道?

ありがとう。



「すげぇ………弟子入りしようかな………」


「見習ってください。冒険者も手懐けて組合に利益ももたらす導師です」


「やめてください。野良犬だと思えば簡単です」


「こら!! 立ちションしたら国王に言いつけますよ!! シッシッ!!」


「ほら。ここの組合員もできますよ」



俺はステージに上がってマイクを握る。



「500人居て1人見つけられないなんてだせぇ」



全員がシュババッと荷物を纏めて出発した。

ほら。簡単でしょ?



そこから商店に案内して、自分が卸してる物なんかを紹介していく。

本部でも最近話題になっているようだ。



「じゃあブロンズ商店を通して、魔石を持ってきた馬車に卸すのはどうですか? 結構売れると思いますよ。便利ですし」



メタルマッチやなんかを紹介して、売値を決めていると、町の組合長がベア君と一緒に入ってきた。



「組合長、楽しんでますか?」


「ベア君もかわいいし礼儀正しいしうちの子供にしたいくらいだわ!!」



ベア君は困惑している。

孤児だしおばちゃんにうちの子とか言われてもそりゃあ困惑するわな。



「ベア君はもう家族なんでダメですね。100万fくれてもあげません」


「じゃあしょうがないわね。嫌だけど諦めるわ」


「そりゃあ無理だ!! 誰もここから出ていきたがらねぇ!!」


「うるさい筋肉だわ。ベア君あっちいきましょ」



組合長も口悪いな。


ブロンズ商店での商談も終わり、組合にも卸している商品があるので紹介する。

こちらも包帯なんかが充実しているので見ておいた方がいいだろう。



「これは? 軟膏と胃薬? なるほど、あった方がいいですね。これは組合に直接卸しているので安いですし、全組合に置くべきだと思います」


「たしかに現役時代はこういうのあれば便利だったろうな」



そこでも取引が決まり、大体説明が終わったのでガゼボでゆっくり会談する。



「そういえば、明かりの魔道具を購入しましたよね? あれはなんのために買われたのですか? こちらの魔道具の方が優秀だと思いますが」


「調べるためですね。ばらして調べました」


「………なるほど? いかがでしたか?」


「多分ですが、意図的に能力を下げられていると思います。自分が改良したらもっと明るくなり、時間も3日間動き続けました」


「3日!! 大発見じゃないですか!!」


「ですが、もうちょっと違う種類の魔道具も調べてみたいですね。分かれば実用的な魔道具が作れるかも知れません。それも安価に」


「………分かりました。こちらでも探してみましょう」


「取り敢えず改良した物をここで見せますね」



俺は収納から金属板とコードを2本取り出して、それぞれ取り付ける。



「これです」


「ちっちゃ!! これがあの魔道具か!?」


「見ててください」


そのコード2本を魔石につける。

ちゃんと昼間でも分かるくらいの光量は出ている。

ろうそくとは大きな違いだ。



「これで3日持ちます」


「これでも十分商品になるのでは?」


「いえ、魔石の値段から考えれば、さっき見たオイルランプの方が安く上がりますね。冒険者には良いかも知れませんが、売った方がいいでしょう」


「たしかに、明かり油の方が安く済むかも知れません」


「だから出回っているのかも知れませんね」


「なるほど………」



魔道具の説明を終えたので、組合で困ったことはないか聞いてみる。

どうやら、魔物の肉の供給量が少ないのが、冒険者への風当たりを強くしているようだ。

家畜になるような魔物がいればいいが、どれも暴れて家畜には向かないらしい。

普通の動物も魔物に襲われやすく、数が増えないので高い。

食肉は難しい。



後は事務仕事ができない人間が多いそうだ。

文字はまだしも、計算は壊滅的らしい。

算盤を渡してあげたが、使い方が分かるかどうか。

取り敢えずパーチュに四則演算で使い方を教えてあげ、かけ算は左側で掛けながら右で足し算を繰り返していくという教え方。

九九を覚えれば計算が楽なことを教える。



「素晴らしいですね………。取り敢えず持って帰って、九九から覚えさせていきます!!」


「最初は紙に書いて表にすればいいですよ。最初は見ていても、そのうちスラスラ出てくるようになります。違う色で10倍100倍も書いておけば仕事で使う数字も出てきますから。例えば好きな二桁数字を2つ言ってください」


「36と72でいいですか?」


「62・12の32・6で72、67・42の37・21で252の10倍で2520さっきの72を足して2592ですね」


「………合ってるか分かりません」



紙に筆算で教えていく。



「この式も便利ですね………」



四則演算すべての筆算も教えてあげた。

ワイト本部長は寝てしまっている。



こっちの計算を教えてもらうと、24×31なら×10を3回やって、24を足しているようだ。

面倒臭ぇなおい。



「取り敢えず、これで教え方を考えてみます。ありがとうございます」


「一応こういう魔道具もありますよ」



電卓を見せて、数字をこちらの数字に書いた表と共にパチパチ計算する。



「ずるいです。それ下さい!!」


「組合員の数学能力が上がったら販売してあげます。いつか壊れた時に自分が死んでいたら悲惨なことになるんで」


「………ごもっともで」



数学のドリルをいくつかあげて、自分が計算に強くないと教えられないことを伝えておく。

精進するように。



鬼だった冒険者がこちらに向かってきたらしい。

一応装備は次の人間に回すように伝えてあるので、次の鬼が隠れていることになる。



「俺悔しいっす!! あんな装備まで貸してもらったのに………」


「まあ飲んどけ。お前が見つけ直せばいいさ」


「グビッ………一生ついていきます!!」


「別にそこまでしなくていいぞ」



そろそろ夕食の時間なので、ワイト本部長を叩き起こして広場に向かう。

もう宴会を始めている奴らもいるようだ。

マイクで鬼の交代を伝える。



「今標的が交代した。繰り返す、今新しい標的に交代した」



みんなザワザワしているが、モチベーションが上がってくれたら嬉しい。

みんなやる気ならグラスを置けよ。



取り敢えずセバスチャンに差し入れをまたお願いし、こちらも広場で食事にする。

大体組合員やうちの人間は交代で旅人亭で食事を取っているのだが、忙しい時間に被らないように遅いか早いかのどちらかだ。



「あの執事何者なんすか? 真っ直ぐこっちに向かってきて、目の前に差し入れ置いて帰っていきましたよ」


「執事は大体そんなもんだぞ」


「嘘つけ!!」



こうして2日目も終了。

今日はそんなに潰れる人間はいないようだ。

ちょこちょこ川の方に向かう冒険者はいるが。




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