道路が貫通しそう
やっと魔道具が手に入った。
ただのランタンに見えるが、魔石を嵌めるくぼみがついている。
試しに魔石を嵌めてみると、たしかに光る。
ろうそく1本分ぐらいの小さな明かりだ。
早速分解してみよう。
光る部分はフィラメントなどではなく、ただの金属に模様が書いてあるだけだ。
多分この模様が光るのだろう。
さらに分解してみると、中には金属線が2本入ってるだけで、それが窪みに繋がってる。
試しに電池を窪みから出ている金属線に繋いでみる。
ピカァァァァァン!!
「ギャー!! 目がぁ!! 目がぁぁぁ!!」
魔力は電力なのか?
今度は逆に魔石を豆電球に繋いでみた。
光らない。
魔力は電力じゃないが、電力は魔力になるのか?
意味が分からない。
手動で発電するライトの銅線を切って、魔石に繋いで発電してみる。
それを魔道具に使ってみるが、反応はさっきと同じ。
逆にライトを魔道具に繋いでみる。
めっちゃ光る。
やはりこの模様に意味があるようだ。
拡大して見てみる。
全然解読できない。
少し大きめ金属に同じ模様を描いて、電池で光らせてみる。
今度は溶接用のマスクを装着してだ。
ピカァァァァァン!!
「おお!!」
光っている所を観察してみると、模様が光っているのだが、光っていない場所もある。
今度は光っていない場所を消して、また光らせてみる。
やっぱり光が大きくなった。
意図的か知らないかは分からないが、余計な線が模様に描かれている。
これと同じ模様を本物と同じ大きさの金属に書き込んで、もう一度魔石で光らせてみる。
今度はさっきよりも明るくなったな。
そのまま光らせ続け、持ちの長さを見てみる。
結局明かりは2日後の夜までもった。
普通に優秀じゃないか。
取り敢えず模様について調べないといけないので紙に書き起こし、セバスチャンに聞いてみる。
「この模様ですか? はて、見たことありませんな」
「魔道具を解体して分析した結果、出てきた模様なんだがなんの模様だかさっぱり分からん」
「冒険者に聞いてみてはいかがでしょう?」
冒険者に聞いてみる。
「私はそんな模様見たことありませんね。教科書にも出てこないです。魔法国だったら分かりませんが、あの国は魔法覚えた者の出国を禁止していますから」
「そうか………。ありがとう」
さっぱり分からんな。
取り敢えずここまでにしておくか。
また分かるような奴が出てきたら進めよう。
俺は道場に向かい、セバスチャンと庭の手入れを続ける。
道場までの道にも、低木を埋めて邪魔な木は切ってしまう。
後から生えてくる分には、長さや育ちかたを変えて庭に合うようにすればいい。
それが終わったら、今度はセバスチャンと道場で稽古をする。
最近ちゃんと訓練してなかったからね。
王都での模擬戦ももうちょっとかっこよく戦いたかった。
銃が無いにしても盾に対しての戦いかたが特に酷かったからな。
「盾の抜きかたですか? やはり時間がかかるのはしょうがないですな。それこそ抜きやすかったら意味がございません」
「たしかにな」
「どうせ武器を抜いた戦闘では負けませんし、ここは不意を狙ってきた相手に徒手で勝つことを目標にしましょう」
「そういうものかね?」
「いきなり襲ってきた相手に剣など抜けませぬ。取り敢えず徒手でも戦えるようにしておくべきです」
そこから剣や槍で襲ってきた相手の対処や、殴られた時の対処なんかを訓練して終わる。
ゆっくりだったらできるけど、今はまだ実戦じゃあ使えないな。
使えたらカッコいいけど。
帰って夕食にするが、村の風俗が完成するらしいとケビンから聞いた。
はやく冒険者に伝えてやらないとな。
早速テントにも人が入っているようで、また冒険者が増えてきている。
今旅人亭の普通の部屋を取るのは困難を極めるらしい。
キャンプ場からタコ部屋、一般の客室と倍率が全然違うみたいだ。
宿も増やした方がいいかな?
でも祭りが終わった後を見てみないと怖いな。
建ててみたがシーズン以外は暇じゃあ建てた意味がない。
夕食後、ポアソンに道具の卸す数を増やすよう言われた。
売れているらしい。
ジェイソンからも、罠の数と燻製器を増やさないと供給が追い付かない状態らしい。
みんな人間が増えるにつれて忙しくなっているようだ。
翌日、ポアソンに頼まれた物資を家の前に山積みにして、俺はジェイソンの燻製器を作る作業に入る。
といっても作るのは簡単なので問題は無いのだが、ジェイソンの魚を捌くのが追い付かないようだ。
俺が横について、捌きかたを見ていく。
やはり鱗が問題か。
後仕事はまとめた方がいいな。
「まず背鰭は先に全部切ってしまえ、1回1回ハサミと包丁を持ち替えてたら時間が掛かってしまう。次に鱗も全部の魚取った方がいいな。そしたら捌くんだが、もう頭は取ってしまった方がいいだろう。数が多過ぎて割ってられない」
「はやいっすね!!」
「これで食ってたからな。で、最後にひっくり返して残ってる鱗がないか触って、残ってたら包丁で取る。今日は手伝ってやるから練習しとけ」
2人で魚を引き上げ、エラをハサミで切って桶に入れていく。
そしたらデッキの上で鱗を取っていき、水を抜いて家に持ち帰る。
家の中で捌いていくのだが、水は出しっぱなしでまな板に鱗や血が残らないように作業する。
ジェイソンは一回頭を完全に落としてから開いていたが、俺が頭を半分落としてそのまま包丁を横に向けて開き、その後反対側も同じ要領で頭を完全に落とすようにさせた。
最初は難しいかも知れないが、後々そっちの方がはやくなる。
ひっくり返して腹に残った鱗を落としたらそのまま漬汁に放り込む。
二人でやればあっという間だ。
「なれるまで大変っすけど。頑張ります」
「お前が数捌けるようになったら燻製器も燻製室に変えないとな」
「そんなに捌けるまでは大分遠いっす」
ジェイソンは一旦放置して、グスタフの切った木を回収しに向かう。
少し間が空いていたから数が多めだ。
今20kmぐらい。
やっぱり広いな。
20kmほどの地点にポールを立てておく。
これ以上は1日で移動するのは厳しいので、できればここに空き地を作ってキャンプ場にしたい。
今日はもういい時間なので一回帰ろう。
明日から少し捜索が必要だ。
翌日、セバスチャンと一緒に道の先まで来ている。
後どれくらいか、町はあるのか調べるためだ。
「後どれくらいあると思う?」
「山が西より東に見えるということは、あまり遠くないと思いますが」
「取り敢えず2時間ほど進んでみよう。それで見つからなかったら、1度南北に分かれてみた方がいい」
「かしこまりました」
歩いて2時間ほどの所に川が流れていたので、それを北へ下っていってみる。
川の途中で森の中にできた集落を発見した。
徒歩で3時間10kmって所か。
一旦集落に挨拶しに向かう。
「すみませーん」
「おやおや、こんな辺鄙なところにお客様とは珍しい」
「自分たちは今、森の西から東へ街道を設置していまして、それで森を抜けた最初の村がここだったんです。良ければ村の長と一度お話しできませんか?」
「まあ!! 森の西からかい? そりゃあ大変だ。直ぐに村長を呼んでくるよ」
「よろしくお願いします」
しばらくすると、体の大きいおっさんが出てきた。
村長って言うより用心棒だろ。
「初めまして、村長代理のアッシュと申します。村長の父は今体が悪くて歩けないんです。自分が家まで案内しますので、ついてきてください」
デカイ割にはちゃんとしてる。
「ご丁寧どうも、森の西にありますミヤジマ支国より参りました。ケンと申します。よろしくお願いします」
「西に国なんて無かったと思いますが………」
「実は去年独立致しまして、そこから街道を東へ伸ばしていたところ、この村にたどり着きました。ここから東へ10kmの所まで開拓は済んでおりますので、ここへも1月ほどでたどり着けるかと思います」
「なんと!!それは大変だ!! 直ぐに案内しますので、詳しいお話はそこでお伺いします!!」
村長宅に着き、そこで自分が王であることを伝えたのだが、逆に怪しまれてしまった。
そりゃ怪しいわな。
俺だったら100%追い出してる。
「ということで、一応こちらを目指して街道を敷かせていただこうと思います。街道ができれば、この村へ来る人間も増えると思いますので、その報告に参りました」
「本当に街道ができるのですか?」
「信じられないと思いますので、できてから確認していただいても結構ですよ。それができれば東と西を繋ぐ唯一の街道になりますので、空き家なんかを有料で貸し出したり、宿などができればこの村にも悪い話ではないと思います」
「それはそうですが………」
「計算ではこの村まで40km。丁度馬車が動けなくなる場所に村がございますので、宿泊する人間は多いはずです」
「やはりできてみないと何も言えないです」
ということで報告だけ済ませて家に帰る。
この時間から歩いて3時間、バイクで1時間。
帰ったら真っ暗だな。
40kmは道路作ったら大変だろうな。
いや、うちの国じゃないから10km作ればいいのか。




