受け入れ体制よーし
冒険者組合の組合長が来た。
朝の馬車で来てくれたようだ。
「お久しぶりね。あのテントのことなんだけど、取り敢えず20個ほどお願い。祭りになればもっと増えると思うけど、今はそれで十分だわ」
「分かりました。それでお話についてなんですが、今素材って町に行った後どうしてますか?」
「どうするってそりゃあ加工業者に卸してるわよ? どうかしたの?」
「この国には税金が無いことはご存じですね?ということで冒険者組合を独立させませんか?」
「………私たちはこの国の組合から素材を買っていることにするのね?」
「その通りです。逆に魔石はこの国が冒険者に渡している同額で買い取り、俺が1.5倍で買い取ります。冒険者と同額で買い取っていれば組合は利益が無いので税金は発生しません。逆にこの国では50%の利益が出ます」
「………すごい話だけど、私では決められないわ。上と相談してみる。今この国は冒険者たちの楽園になっているわ。できればそのまま楽園のままでいてほしいの」
「自分もそのつもりです。なので組合にもこの国では稼いでいただかないと」
「フフフ。この話をすればきっといい関係が国と組合とでできるはずよ。直ぐに上に通すから待ってて頂戴」
組合に脱税のお誘いが終わったので俺は組合に行って、テントを19個売却する。
ついでに来ていた冒険者を拉致して、空き地で一緒に組み立てていく。
ある程度できたら冒険者に任せ、炊事場の建設に入った。
祭りを考えて大きく作る。
まず土台だが、これはそこまで重い物を置くわけではないので、下水管を通してそのままコンクリートを流す。
ついでに公衆トイレの土台も作っておく。
固まるのに時間がかかるからね。
翌日から建設に入るのだが、炊事場は簡単だ。
固定した柱に屋根を乗っけただけの物でいい。
だが全長15mぐらいある。
シンクはレストランの厨房用の足付きを、両側に向けて中央に2列設置していくだけだが、水道管の設置が難しい。数が多いので、絡まった蛸足みたいになっている。
次に竈だが、これは煙を考えて両側に内向きに設置する。
冒険者にレンガをセメントで重ねさせていく。
中には真ん中に隙間を空けたレンガを1段設置して、灰が下に落ちるようにした。
薪もガレージを1つ設置して中に山積みにしておく。
問題の公衆トイレは大きく作らないといけない。それこそ男子トイレはパーキンングエリアのトイレぐらい必要だ。
建てた後に全体をセメントで固めていく。
これはコンクリートだと染み込んで臭くなるので、プール用のコーティング材で壁を塗った。
先に塗ってから便器を取り付ける。
大便器10の小便器20。
組合に頼んで毎日冒険者に掃除させよう。
決める方法は組合に任せる。
女性用トイレは小さくて大丈夫だ。
10もあればいいだろう。
冒険者の男女比は20対1。
500人来たって25人しかいない。
最後に全体をペンキで白く塗っておく。
さすがにグレーは色が悪い。
完成したら掃除を組合にお願いする。
家に帰り、一休み。
ケビンに村に持っていく肥料をお願いされたので、車に小さいトレーラーをつけてそこに出していく。
ついでに調味料と衣類なんかも出しておこう。
道場に行ってセバスチャンとお茶にする。
結局将棋になるんだけどね。
最近次の手を考える時間が延びた。
その間ぼぉっと庭を見ながらタバコを吹かす。
組合が来るまではお休みかな。
グスタフの道作りも手伝わなくちゃいけないし。
パチ
そこに打ってくるか………。
ふむふむ。
まだ穴があるな。
パチ
「ほぅ………」
また熟考に入った。
庭に埋めた低木はそろそろ咲く頃に入るはずだ。
まだ寂しいが、花が咲けば少しは華やかになるだろう。
将棋を終えて、家に帰って食事にする。
最近は女の子達も料理のお手伝いをしているらしい。
今度クッキーの焼き方でも教えてあげよう。
「ケビン。村の様子はどうだった?」
「もう風俗の建築は始まっていましたね。結構大きい建物のようです。農業は少し土が痩せていましたので肥料を少量撒いて、様子を見ようと思います。お土産も喜んでました」
「そうか。他に必要な物は?」
「ポンプとじょうろ、後明かり用の油をください」
「ついでにオイルランプも各家に持っていけ」
これで多少生活は良くなるかな?
一回行っていろいろいじってきてもいいかもな。
「セバスチャン」
「村にですね? かしこまりました」
よく今ので分かったな。
なに考えてるか読めるんじゃないか?
そこでニコッとするな!!
翌日村にやってきた俺たちは3人でチャッチャとポンプを取り付けていく。
ついでに蓋もつけてゴミが入らないようにね。
外に出て畑の様子も見てみる。
農業用水は小さい水路で川から引いているようだ。
水は大丈夫そうなので、リヤカーや農具なんかをプレゼント。
ついでに長靴と軍手も置いておこう。
村に入って色々見てみるが、若いやつがいない。
村での生活に旨味が無いんだろう。
狩人のおっちゃんにくくり罠と魚用の罠を渡して使い方を教えてあげる。
魚なんて取り放題だよ。
足が悪い人間には杖やら車イスやらをあげ、腰痛持ちにはサポーターを渡す。
ついでにお菓子も山盛り渡しておいた。
「こんなもんかな。何か必要なものがあったらケビンに伝えな」
「いいんかいのぉ。こんなに貰ってしまって」
「数少ない国民だからな。子供や孫に伝えときな。いい国だから戻ってこいって」
「これなら呼び戻せるかも知れないですのぉ」
「ここの村人は全部で何人だ?」
「47人ですじゃ」
「60と考えて………60人までだったら毎月一人500f以上入るぞ。若いの呼びやすいだろ」
「絶対戻ってくるですじゃ!!」
そのまま村を後に湖に戻る。
若いやつが冒険者相手に商売でも始めれば仕事には困らないだろう。
屋台とか研師とか、思い付くだけでも仕事は山ほどある。
村も活気づけばいいな。
家に帰ると、組合員が俺を待っていた。
さすがに独立の答えが出るのは早すぎる。
いったいなんの用だ?
「魔道具が手に入りました!!」
「でかした!!」




