冒険者の天国
5月の始めごろ、下の村から村長と門番さんがやってきた。
どうやら村人たちが風俗を作ることに合意してくれたようだ。
税金無しで場所代だけ何もしなくても入るんだ。
若い人たちが村に来てくれるだけで悪くない話だと思ったらしい。
話し合いのために村長を連れて町に行く。
話し合うのは前回行った店のオーナーだ。
店に入り、オーナーと会議を始める。
「で、村に払う場所代だが、1月2万fだ」
「2万fは家賃としては少し高いのでは? 何もない村ですよね?」
「いいか? 湖の冒険者はわざわざ馬車に乗って町に来るんだ。近くにあれば馬車代を上乗せしても客は入る。できれば上乗せした金額よりは安い方がいいがな」
「なるほど、それならば2万fも高くないかも知れません」
「かもじゃない。いいか? うちの国は小さいから税金が無いんだ」
「税金が無いのは魅力的ですが………」
「そこじゃないわ!! 要は運転資金、投資として村に金を送れば………」
「町の税金が安くなる………」
「だけどバレないようにうまく帳簿に載せろ。村で運営する店からの上納金を低くして、運転資金としてこちらから送れ。こちらの店は赤字に見せかけるんだ」
「入っていけないのじゃが………」
「是非やらせてください!! 場所代は3万f払います!!」
「………いい子だ」
「増えよった………」
小さいタックスヘイブンみたいなものだね。
お主も悪よのう………。
グヘヘ、陛下ほどでは………。
村長を村に送って、ついでに前祝いとして酒と肉を置いて帰った。
農業でもなんでも困ったら言うように。
ケビンをたまに派遣しよう。
肥料や道具なんかを持たせて講師として派遣することを村長に伝え、家に帰る。
ケビンも元農家として派遣には乗り気だった。
ついでに魚を取る罠や調味料なんかも持っていってもらおう。
まだ村に何もしてあげられてないしね。
冒険者には、こっそり下の村に風俗ができるらしいと噂を流しておく。
宿も1つだけだし直ぐに広まるだろう。
というか冒険者また増えたよな。
どうしようか?
村にもキャンプ場でも作るか?
旅人亭はキャパ的にも人の多さ的にも限界だしな。
それがいいかも知れない。
明日組合に聞いてみよう。
キャンプ場なら公衆トイレと流し場だけで良いしな。
「是非お願いします!! 今組合では泊まる所が無いので、来る人間を許可制にしてるんですが、それでも限界が近いです」
「分かりました、しかし一応テントも有料なので、できれば買い取っていただきたいのですが………」
「………料金を教えてください」
「一回外で見せますね」
セバスチャンと二人で、14人用の大きなテントを組み立てる。
十字型の1つ230fのやつ。
230f!? 安いな!?
「完成しました。これで詰めれば10人ぐらいは入れるかと思います」
「………大きいですね。………ちなみにこれはおいくらで?」
「230fです」
「はっ?」
「今回は原価で良いです。祭りも考えれば元々必要なことなんで」
「これが230f………。組合長に聞いてみますが、この値段なら多少多めに買っても問題は無さそうです」
「取り敢えずこのまま置いておくのでよろしくお願いします。後組合長が来たらお話がありますので、こちらに伺うようにお伝えください」
俺はまだ庭いじりで忙しいんだ。
セバスチャンと一緒に、紫陽花や皐月なんかの低木を植えていく。
まだプランターに入っていて小さいので、成長を見越して隙間を空けながら植えていき、細かく切った苔なんかも岩の隙間をなんかに詰めていく。
枯れなければ良いけどまだ分かんないな。
その後ろの方にも盆栽なんかを植えていく。
大きくなってきたらロープか何かで圧をかけて曲げていく予定だ。
「なるほど、あまり高くしないのですね?」
「奥行きを出すためらしい。成長してみないと分からないけどな」
今日は植え替えだけで終了。
明日は枯山水の模様を描いてみて一回バランスを見たい。
難しいなおい。
今夜は、冒険者組合から頂いたモツ野菜炒めだ。
ちゃんと小麦粉を使ったようで、臭みも無くて旨い。
「モツなんぞ貧乏な奴が食うものじゃと思っておったが、中々旨いな!!」
「動物が内臓を先に食らうのは、そこが一番旨いかららしいぞ」
「なるほどのう。確かに臭くなければ旨いわ」
「道は順調か?」
「今10kmといったところかのう。先がどこまであるか分からんし、問題無いわい」
「10km超えたらうちの領地じゃないだろ? 進んでいいのか?」
「なんか言われたらその時はその時じゃ」
明日は柔道の授業があるようで、グスタフは柔道のDVDを見ている。
あの道場を使うのはセバスチャンとグスタフの2人だけ。
俺も参加してみるか。
子供たちと一緒に、受け身の練習をする。
昔中学校でやったなそう言えば。
受け身の練習を終えて、次は技の練習。
俺はグスタフに背負い投げをされる。
「おぉー!!」
「すごーい!!」
セバスチャンとグスタフは、二人で柔道と合気道で勝負している。
しょうがないので俺が子供たちに、ゆっくり一人ずつ教えてあげ、なんとか全員がゆっくりとだがちゃんと投げられるようになった。
お互いに投げ合って、感覚を掴むように。
グスタフが伸されていた。
ちゃんと教えろよ。
グスタフとセバスチャンは一緒に道場に入れたらダメだな。
俺ももう少し鍛えよう。
その後、そのまま勢いに乗ったセバスチャンの授業になり、合気道も教えていく。
子供たちで押さえられている状態からの逃げかたなど護身中心だ。
投げ技は教えていない。
俺もグスタフで練習する。
「おっ、おっ、おっ?」
「力つえぇよ!!」
合気道が効かない。
こんなばか力想定してないもんな。
何かの器具で固定されてるみたいだ。
午後まで授業を続け、お昼を食べてから枯山水を描いていく。
描き終わったところで、一度縁側に座ってスケッチブックに描きながら将来像を相談する。
「あそこは寂しいけど。あの花が成長したらこれぐらいになる。そうすれば見栄えもよくなるはずだ」
「そうですね。ですが、これはこれで綺麗だと思います」
「そうだな。ここで酒を飲むのも楽しそうだ」
少しずつ楽しんでいこう。




