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冒険者と稼ぎ

翌日は鐘の音と共に起きる。基本的にこの世界の家はガラス窓ではなく、木窓で空気を入れ換える時に開くような物らしい。



「今日は冒険者組合と、先に買い物だな」



朝食はパンにスープでこちらも大変おいしかった。おかみさんに商店の場所を聞いて、そちらへ向かう。



「とりあえず鍋か飯盒、あとタオルか昨日のような布切れ、着替えも欲しいな」



目的の商店に着いた、なんでも朝から動き始める冒険者向けに早朝から開いているらしい。

中に入ると、右手に武器や道具類、左手に消耗品、奥に衣服類が置いてあった。

買い物をする前に冷やかす。武器はものすごく高く、自分が槍に使ったような一番安いナイフでも200fもする。

飯盒もあったが50fもする。基本的に金物は全部高いようである。

飯盒と木製のカップ、布切れは古着から取っているようで大1枚3f小1枚1f、下着は1枚20fでシャツも古着で30fであった。布製品も高いらしい。


買ったもの


飯盒 50f

木製カップ 10f

布切れ大2枚 6f

小5枚 5f

パンツ1枚 20f

シャツ1枚 30f

麻袋小1つ大1つ 20f



合計141f 残金509f



お金は100fだけ麻袋に入れ、残りの持ち物は大きい麻袋に入れロープで口を縛って担ぐ。

今の装備は腰ひもに斧を差し、槍を手に大麻袋を担いでいる。

財布となった麻袋小とサバイバルバッグに付いてきた小さな万能ナイフはポケットに入っている。



これでどこに行っても異世界人だとは思われないだろう。厄介ごとは御免である。



その足で冒険者組合へ向かう。組合は木造の大きな平屋で、看板には異世界の文字で冒険者組合と書かれている。文字も読めるし問題ないな。



早速組合の受付で、新規登録をお願いする。

美人な受付なんておらず、普通のおばちゃんが受付をしていた。期待した俺がバカだった。



「冒険者のランクは分かるかい?」


「すみません。説明お願いします」


「まず新人は下級から中級、上級、高級と全部で4つ、毎年審査があるからそれに受かったら上の級に上がれるよ」


「組合カードは失くすとお金かかるから失くさないでね。穴が開いてるからヒモでも通して首にかけときな」



おばちゃんからの説明が終わり、加入料10fを払ってクエストを確認する。

下級は雑事や薬草採集、スライム討伐などが多いようだ。ゴム手袋が切れているので馬糞いじりは諦める。その中から近場でできるコラン草という薬草採集を選び、受付をしてもらう。



南門から出て直ぐの草原で採集できるようで、ギルドから出て直ぐに向かう。

南門から出るとそのまま街道脇の草原に入り、教えられた特徴を基に探し始める。

5本1セット10fなので宿代を稼ぐには最低でも25本必要だ。

探しはじめて直ぐにコラン草を見つけ、ストレージに入れて確認する。



コラン草

胃薬になる。そのままでも効果あり。


売却値を見ると、組合と変わらないようである。

スライムを何匹か見かけたがスルーしてできる限り採集し、夕暮れと共に組合へと戻る。



結果32本、1セットを越えれば端数も計算してくれるようだ。

64fプラスされ現在563f、宿代を抜けば14fしか儲かっていない。

仕方ないが、宿のグレードを下げよう。受付のおばちゃんに安めでご飯が美味しい宿屋を聞くと、組合の近くに30fで食事付きの宿屋があるらしい。



おばちゃんオススメの宿に着いた。旅人亭というその宿は、一見ボロ屋に思えるが、手入れはしているようで現状最高を維持しているといった感じ。

宿に入ってみる。



「いらっしゃいませ!」

「ませ!」



7才位の元気な男の子と女の子の双子が出迎えてくれる。

思わずニコニコしていると、奥からアメフト選手のような巨漢のオッサンが現れ、こちらを睨んでいる。



「ひぃぃぃぃぃ!」



思わず叫ぶと、双子がオッサンに近づき



「お父さん! お客さんが怖がるから出ちゃダメって言ったでしょ!」



男の子がオッサンに怒る。



「いや、ユマとユナが心配で…」


「大丈夫だから! 隠れて!」



オッサンに酷い言い様である。隠れたところで見てしまったんだが、ユマと言われた男の子が慌てて戻ってきて、



「お父さん居なくなったから! 怖くないから!」


「大丈夫だから! 1泊お願いね!」



すると双子の顔はパァと明るくなり、ニコニコと対応してくれる。この笑顔で30fなら安いもんだ。

直ぐに食事ができるというので、部屋に入る前に食事にする。



出てきたのは、昨日と同じメニューのスープとパンだが、量が多い。パンも2個ついている。

一口食べてみると、魚介の出汁がしっかり出ているし、野菜も玉ねぎを多めに入れているのか甘さが出ていて美味しい。なんなら昨日よりうまい。



一人で静かに食事していると、双子がカウンターからこっちをこそこそ見ている。かわいい。

ふと気づくが、昨日宿はこの時間帯だと他にもお客さんが居たが、ここは店に自分1人である。

無粋だとは思うが、双子にお父さんを呼んでもらう。



「すいません。お酒っていくらですか?」


「…エールしか無いが、一杯3fだ…です」


「2つ頼むので、少しお話ししませんか?」



店主のダニエルさんの話を聞くと、昔は奥さんが接客、旦那さんが裏方で冒険者中心にそこそこ賑わっていたそうだ。

それが奥さんが2年前に病気で他界、接客が全然できない、しかも強面のダブルパンチでお客さんが減っていき、今では双子を食べさせるのもやっとという状況らしい。

奥さんの友人だったギルドの受付おばさんが、野菜を持ってきてくれたり、お客さんを紹介したりでいろいろ手伝ってくれているそうだ。



もともと飲食店で副店長をやっていた身としては、何か手伝えることは無いかと考える。

オッサンよりも双子を助けたい。



「俺も故郷で飲み屋の手伝いをしていたんですけど、良かったら雇いませんか?」

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