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王都にサンタがやって来た。

3月の始め頃。

まだ寒いなか早朝に出発する。



ナビゲーターは大きくてくつろげるな。

日本車でも良かったけど、狭い道がないならアメ車の方がいいだろう。



みんなに見送られるのだが、朝が早いので子供たちは眠そうだ。



「じゃあいない間は頼むぞ」


「かしこまりました」



ナビゲーターに乗り込んで出発する。

グスタフにも運転させたかったが、身長が小さすぎて前が見えない。



湖を半周して川を下っていく。



車が大きいとスピードが出ていても遅く感じる。

そのまま森を抜けて村を越え、林道を進む。



そこからスピードを上げて、時速60kmぐらいで進んでいく。

町も素通りして、そのまま北へと進み、森をぐるっと回って西にある王都をめざす。



「快適じゃな。こんなスピードで走っているのに」


「馬車は揺れるからな」



空調もサスペンションもない馬車なんて地獄そのものだろう。

車があって良かった。



実は車を購入したあと、防具を考えていたときにsecurityproのサイトに新しい項目が増えていた。

防弾車だ。

まあこの世界では一般車でも壊すことは難しいと思うが、防弾車はちょっとロマンを感じる。

まあまだ値段が付いてなくて買えないのだが。



昼は、車の中で食事にする。

今日はジェシカさんが作ってくれたサンドイッチだ。

ハムときゅうりにからしマヨが俺の好み。



「しかし、みんな見てたな」


「そりゃあこんな箱が走ってきたら驚くでしょう。中には泣いてる人もいましたし」


「これに馬車とバイクが付いたらどうなるんだろうな」


「ガッハッハ!! 心臓止まるんじゃねぇか?」



来る途中すれ違った馬車や旅人の反応が多種多様で面白かった。

逃げるもの、土下座するもの、泣き始めるものなど、中には応戦しようとするものまで。

大体は顔を出して手を振れば収まるのだが。



もう森の北端は越えた。

後は南西に走っていけば王都につくはずだ。

3時前には到着できるだろう。



窓を開けながら走行すれば、排ガスとは無縁の空気が車内に入ってくる。

まだ冷たいが、眠気覚ましには調度いい。

建物も何もないから眠くなってくる。



「ポアソン、王都が近くなったら教えろよ。お前以外王都に行ったことないんだ」


「私も1回しか行ったことありませんので、大体の位置しか知りません」


「まあ人が増えてきたら乗り換えればいいか」



それから1時間ほど走り、遠くに王都が見えてきたところで停車。

トレーラーを出して車に接続する。

みんなそれぞれの衣装に着替え、ジェイソンとシードはバイクに、俺は馬車にそれぞれ乗る。



「ジェイソン、シード、準備ができしだい出発してくれ」


「かしこまりました」


「ポアソンはバイクの後ろについていけばいい。スピードは出しすぎるな」



トレーラーが動き出したが、車より揺れがひどい。

まあ人が乗るものじゃないしな。

ソファーが固かったら尻が破壊されていたところだろう。



しばらく進むと、トレーラーの外から人々の驚く声が聞こえる。

防音なんてしてないからな。

多分バイクのジェイソンたちにも聞こえてるだろう。



カーテンを少し開けて外を覗く。

右側に受付待ちの人々が並んでいるのだが、俺たちはその横をすり抜けていく。

まあすり抜けなくてもこんなドクロまみれの物体が近づいてきたら道空けるだろうな。

俺でも地球でこんな車が走ってたらハロウィーンか映画のどっちかだと思うだろう。


じゃなかったら正気を疑う。



やがて門にたどり着き、ジェイソンが衛兵の対応をしている。

クラクションでもならしてやろうかな。



その時詰所から1人の男が出てきて、ジェイソンに近寄っていった。

なにか話したあとジェイソンと男が一緒にトレーラーに近づいてくる。



「陛下、ギナルが案内を準備していたようです。そちらについていってもよろしいですか?」


「元々宿は決めていない、案内してもらえ」


「かしこまりました」



案内の男をバイクの後ろに乗せ、ジェイソンが先導する。

王都に入ってからも人々の視線は俺たちに釘付けだ。

俺たちが進めば道行く馬車までもが道を空ける。

そのまま王城に近づいていくと、途中から大きな屋敷ばかりの区画に入った。



多分ここら辺が貴族が住む場所なのだろう。

そのうちの一軒に入り、庭から屋敷のロータリーに車を止めた。

馬車より速すぎたためか、使用人たちが大慌てで出てきた。



こちらの様子を見て面食らっていたが、直ぐに普通の表情に戻った。

ちゃんと訓練を受けているようだ。



セバスチャンが車から降りて、トレーラーのドアを開ける。



「陛下、到着致しました」


「分かった」



セバスチャンに教わった通り、時間をたっぷり使ってトレーラーから降りた。

………面倒臭い。

普通に降りさせてくれ。



「本日、陛下のお側に付かせていただきます。よろしくお願い致します」


「良きよう頼む」



使用人の一人が俺の前に跪いて紹介を始めた。

どうやらこの屋敷に泊まるようだ。



屋敷の中に案内され、そのままリビングに通された。

リビングにはギナルが待機しており、俺に向かって跪く。



「お久しぶりでございます陛下。陛下の無事のご到着何よりでございます。………その………皆様のお姿は?」


「久しぶりだなギナル。これはただのイタズラだから気にするな。ここは貴様の屋敷か?」



今回からは俺の方が立場が上なので、タメ口で話す。



「いえ、ここはお客様がいらっしゃった時だけ解放する迎賓館でございます」


「なるほどな。じゃあ警備は万全だな」


「………………はい」



ここで俺に何かあったら国の面目が立たない。

ギナルの屋敷とかにしておけばいいのに、俺みたいなトラブルを迎賓館に呼んじゃダメだろ。

特に今回は帝国からも人間が来るんだ。

ここまで言ってギナルも今頃気づいたのか。



「この迎賓館は俺が貸し切ったことにしておけ。それで国の面子は守れるだろ」


「………ありがとうございます」


「ホッホッホ。陛下は襲われる確信があるようですな」


「可能性は高いだろうな。何も無ければ一番いいが、俺に暗殺の疑いがかかってるなら何かしら反応はあるだろ」



それからパーティーの予定を伝えて、タヌキは帰っていった。

帰りにうちの車たちを見て、顔を青くして急いで出ていった。

多分王城に報告に行くのだろう。



トラブルが死神担いで遊びに来たと。

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