あの世へのナビゲーター
グスタフが捕まった。
子供たちが足跡を追跡して捕獲したようだ。
みんな楽しかったようなので、これから毎年開催しよう。
子供たちとは別で、冒険者にも有能探索者を決める大会として、賞金付きのイベントを行うことを伝え、今年の夏に開催が決定した。
隠れている間にグスタフが作り上げたモニュメントは、木の中をくり貫いて中に生首が敷き詰められているという物だった。
色をつける前から不気味すぎる。
湖の入り口に置くには怖すぎるので、我が家の前に置いておくことにする。
こんなもん夜中に見たら小便漏らすぞ。
冒険者組合に行き祭りのことを伝えると、メチャクチャ乗り気だった。
直ぐに組合に確認しますと言っていたので、明日明後日には結果が分かるだろう。
近くで聞いていた冒険者も参加に前向きだ。
賞金1万f。
優勝者には次の年の鬼になってもらおう。
初年度は俺が鬼だ。
ギリースーツを装備して本気で隠れてやろう。
冒険者は優勝賞金1万fよりも名誉の方が嬉しいらしい。
武闘会は今まであったらしいが、冒険者としての力量を競う大会は今まで無かったようだ。
喧嘩が強くても魔物を見つけられない冒険者なんて兵士にでもなった方がいいだろう。
大会中は旅人亭は関係者宿泊施設として貸し切り、冒険者にはテントでも貸しておこう。
出店は組合に呼んできてもらうか。
食材と屋台ぐらいは準備してやる。
宿泊費と参加費、屋台の場所代を決め、ちゃんと商売として成り立たせてやろう。
そうすればこれから組合が祭りを盛り上げてくれるはずだ。
賞金を出しても利益の方が大きい。
組合が食い付かないはずがない。
我が国に税金なんてものは無いんだ。
頭がいい商人ならばここに支店や本社を建てて、上手く税金逃れするはずだ。
組合がそれに気づいてくれることを願おう。
魔王っていうよりマフィアだな。
魔ふぃあ。
なんちゃって。
旅人亭でおやっさんにも話を通し、その準備をしてもらおう。
人も貸し出す予定だ。
家に帰り、みんなに将棋を教える。
最初は子供たちだけだったが、大人もやりたがったのでみんなだ。
そこら辺でパチパチ将棋の音が聞こえる。
俺はその間に晩御飯の準備でもしておこう。
ジェシカさんもリンダさんも将棋に夢中だ。
キッチンに入って鶏ガラスープを作っていく。
今日はラーメンだ。
玉ねぎや人参、ネギなんかも突っ込んで、灰汁を丁寧に掬っていく。
普通の醤油ラーメンにしよう。
タレは醤油に生姜やニンニク、魚のアラなんかを突っ込んで鶏ガラで仕上げる。
茹でた豚バラをタレに突っ込んでチャーシューを作り、メンマが無いので、代わりにエリンギなんかも茹でてタレに入れておく。
油はラードでニンニクとネギを素揚げして味を移し、完成だ。
1回全部まとめて味見をする。
うまみ調味料を入れないと何か物足りなく感じる。
少しずつうまみ調味料を足して、スープは完成だ。
棒ラーメンの麺を茹でてスープに落とし、上にネギとチャーシュー、エリンギを乗せてダイニングに持っていく。
「みんなーご飯だぞー」
「「はーい」」
「今日はラーメンという麺料理だ。フォークとスプーンで食べてね」
「いい匂い!!」
みんな啜れないのでパスタみたいに巻いて食べている。
塩気はちょっと薄いが、日本のラーメンは塩分が強すぎる。
スープとして食べるには薄めないとみんなの口に合わない。
料理チートなんて現地人の口に合わせないとできない。
醤油や味噌よりもみんなはトマトやスパイスの方が合うみたいだしね。
アジア料理は慣れないと外国人受けしないから。
ラーメンを食べ終え、子供たちは映画鑑賞。
今日は指輪物語。
世界観が似ている映画じゃないと何がなんだか分からないからね。
言葉が理解できない以上絵で持っていくしかない。
「向こうにもドワーフがおるんか?」
「いないぞ。向こうにいるのは人間だけだな。これは似せているだけだ」
「なるほど。良くできておる」
俺とグスタフは将棋を打ちながら酒を飲んでいる。
セバスチャンは横で俺の打ち方を見ているようだ。
俺もおっさんだな。
ジェイソンたちはテーブルで大富豪。
こう見ると地球とそんなにかわらんな。
人数はホームパーティー並みにいるが。
こういう時はオセロから始めるんだっけ?
まあいいや。
将棋面白いし。
「王手。詰みだな」
「やはり飛車を取られたのが痛いですな。ここの桂馬はやはり布石でしたか」
「ふむ…。セバスチャン!! 次はお主じゃ」
やっぱり引っ越しして正解だったな。
人数も増えたし、前の家じゃあここまで好き勝手できなかった。
翌日から、木を切ったり、根っこをショベルカーで掘り起こしたりしながら過ごす。
飽きたら釣りをしたり、子供たちを鍛えたり。
計算と文字を教えたり。
王都には誰を連れていこうかな。
ケビンを残して男衆全員連れていくか。
俺、セバスチャン、グスタフ、ジェイソン、シード、ポアソン。
ワゴンでも買って6人で行くか。
みんなにも運転教えよう。
信号も何も無いんだ。
運転だけなら直ぐに覚えるだろう。
翌日、全員を呼び出して運転を教える。
車は扱いやすそうなホンダのN-ONEを購入。
ドアを開けてみんなに見えるように運転を教える。
グスタフは運転よりも構造が気になるらしい。
そのあと、みんなに実際にクリープ状態で軽く運転してもらい。
なれてきたらスピードを出していく。
ついでに希望者にはバイクの運転も教える。
グスタフは足が届かないのでホンダのAPE。
これは俺とセバスチャンで教える。
一応みんな覚えるようだ。
そこから3日かけて男衆全員が車とバイクの運転を覚えた。
「しかし、車はどうするんじゃ? これじゃあ6人は乗れないぞ」
「この車は練習用だ。後で中を見て構造を理解してくれ」
「ばらしていいのか!!」
「見るだけだ。ばらすのはもう少しボロの車を買うからそれで頼む」
「分かった!!」
「それと王都に行く車に装飾もしてくれ。凶悪なのを頼む」
「まかせとけ! 魔王の馬車に相応しくしちゃる!!」
買ったのはリンカーンのナビゲーター。
7人乗りで真っ黒なやつを購入。
後ろには馬車の代わりに真っ黒なトレーラーを購入。
こっちのトレーラーを魔改造して魔王級の馬車にしてしまおう。
今はただの黒い箱なので、入り口を豪華な物に変える。
縁の金属は金色に塗装。
窓もはめて、赤いカーテンをつける。
中には絨毯を敷き、中世風の模様が入った壁紙を張りコの字型にソファーを設置した。
折り畳みテーブルを壁に設置して、屋根にはソーラーパネルも敷いてある。
外観はグスタフがドクロをトレーラーを囲むように設置していた。
車のアンテナには国旗。
本物は大きいので小さい魚の魚拓だ。
グスタフと2人でドクロのステッカーをこれでもかと張っていく。
こんなもんやってきたらあの世からのお迎えだと思うわ。
全員の服装も変えよう。
二度とパーティーなんて呼ばれないだろうな。




