社会科見学
家を出て北に向かう。
今のところ山以外にレベルを上げられない。
途中までロビン君とジェイソンも一緒だが、そこからは俺とセバスチャンだけで行く。
さすがに13歳を連れてはそんなに奥まで行かない。
今回はちょっとした社会科見学だ。
「3匹のコボルトだ。槍を使うから間合いが長い。大丈夫かいロビン君」
「行けます!!」
「よっしゃ行ってこい」
俺たちは後ろで見守る。
俺とセバスチャンはライフルを構えていつでも対処できるようにし、ジェイソンもいつでも駆けつけられる。
「やぁ!!」
「キャウン!!」
なんとか避けているが、囲まれていて不利だな。
そろそろか。
カシャン!!………カシャン!!
「そこまで!!………相手の数が多いときは囲まれちゃダメだ」
「………はい」
「よし。一回セバスチャンにお手本を見せてもらおう。同じ長剣だし為になるだろう」
「かしこまりました。囲まれない戦いかたを見せれば良いのですね」
「そうだな。あと少し遅く動け。セバスチャンは速すぎる」
「ならば、最初は攻撃をいなしながら対応しましょう」
セバスチャンの感知を頼りに4匹のコボルトを発見、セバスチャンが一人で対応する。
セバスチャンは槍の間合いの外で常に場所を変えながら相手が重なるように動く。
なるほど、勉強になるな。
相手が槍を突きだしてきたら、飛び込んで一刺し、足を殺す。
焦れて飛び込んできた獲物には剣で槍を弾いて切る。
ゆっくりと堅実的な戦いかたを実践してみせ、誰にでも分かりやすく対処している。
「ロビン君、分かったかい?」
「はい。別に急がなくて良いんですね」
「急いでも怪我するだけだ。自分のやりやすい方法で対処しなさい」
「ちなみに主様ならどうしますか?」
「遠距離から殺すか、負傷させてから1匹ずつ確実にやるね」
「なるほど………」
いろいろと自分の戦いかたを考えているようだ。
次はチームでの連携を訓練してみる。
これに関しては俺もやったこと無い。
「前衛がジェイソンだろ。俺が後衛。セバスチャンとロビン君がジェイソンの後ろから攻撃。これが一番無難じゃないか?」
「しかし、後衛ができるので?」
「殺さないエアガンにしとけばいい」
「なるほど、いい考えですな」
エアガンなどの古い装備はまとめて売ってしまうので新しく購入。
ゴブリンの団体さんを見つけたので、訓練の相手になってもらう。
ジェイソンが前に出て盾で攻撃を受ける。
セバスチャンとロビン君はその後ろから攻撃しては隠れてを繰り返す。
俺は後ろから回り込もうとしているゴブリンをパンパカ撃つだけ。
「まあこんな感じだな。ロビン君どうだった?」
「普段の訓練とは違ったいい経験になりました」
「まあやってれば慣れるさ」
「そういえばケン様が戦うところって見たこと無いっすね。訓練は知ってますけど」
「多分面白くないぞ」
「僕も見てみたいです!!」
「まあ別にいいが………。セバスチャン」
「直ぐ近くに別の団体がいますね」
5匹のコボルトがいた。
俺は拳銃で適当に撃ち、鉈で息の根を止めていく。
我ながら酷いと思う。
「こんなもんだな」
「ホッホッホ。前よりも楽になりましたな」
「前はエアガンだったからな」
「早いっすね………」
「参考にならないです………」
「俺たちがフル装備の時は全員拳銃持ってるからな。多分一方的だぞ」
「それもそうっすね………」
いい時間になったのでジェイソンとロビン君を家に帰す。
明日からが本番。
一応今回は行けるところまで山を登る予定だ。
麓まで歩いて2日ほど。
テントを取り出し、タープを張って晩御飯にする。
今日はシンプルに焼き魚とスープ。
俺とセバスチャンの時ぐらいしかこんなシンプルな晩御飯は作らない。
「………美味いな」
「そうですね………」
「うちの欠食男児たちには物足りないだろうがな」
「そのうち分かります」
食後に魚の燻製をだして齧りながら晩酌にする。
皮がチリチリ言うだけで両方一言も会話しない。
身をちぎり、齧りながら酒を飲む。
「これが終わったら次は何して遊ぼうか」
「それでしたら冒険者として違う町に行ってみては?」
「んー、王都でも行ってみるか?」
「ホッホッホ。何か面白い事が起きそうですな」
「………悪い予感しかしないな」
「旦那様の予感はよく当たりますからな」
これが終わったらしばらく休もう。
いろいろ遊びすぎた。
「これは………。大量の反応です」
「何かの群れか?」
「分かりません。行ってみましょう」
反応の方へ行ってみると、地面に大きな穴が開いており、そこから1mもあるアリが出入りしていた。
チャンスだ。




