漆黒のポン酢(笑)
「なんだこれスゲェ!!」
モンケが後ろで騒いでいます。
新年最初の仕事がチャリの改造とは………。
後輪のボルトを外し、荷台を装着。
ついでに足を置くために昔トンボと呼ばれたホイールを守るかなんか知らんけどそんな部品を装着。
全員フル装備で自転車に乗る。
カッコ悪い。
モンケは最初皆のフル装備にビビっていたが、ロビン君を見て目をキラキラさせていた。
そのうちな。
俺たちのフル装備は基本真っ黒だ。
中2的にそっちの方がカッコいいから。
俺とセバスチャン以外は顔も隠してある。
俺の武器は拳銃と鉈。
久しぶりの蛮族でちょっとワクワクする。
グスタフの防具が無かったので、普段の黒いツナギにライオットスーツの腿までと二の腕までを装着。
グローブを嵌めればいい感じ。
斧とは別にハルバードも持たせてある。
俺の日本刀はフォーマルの時だけ。
鉈の方が使いやすい。
日本刀を携えたロビン君はやっぱりカッコいいな。
そんなこんなで出発。
今回の目標は冒険者だが、組合にも文句言ってやろう。
ちゃんと管理しとけって。
モンケも最初はチャリにビビっていたが、今は俺の肩に手を置いて立っている。
意外と元気だなお前。
ちょっとスピード出してやるか。
「うわっ! 速い!! 待って!! ひっ!!」
「しっかり掴まってろ!!」
立ち漕ぎで時速30kmぐらい出してみる。
後ろから悲鳴が聞こえるが、いい経験だろう。
結局バテないように普通の速度に戻したが、それでも時速15kmぐらい。
この前町に来たときよりも速い。
10時前には町に着いた。
「なっなんだお前たちは!?」
「ちょっと冒険者組合とお話に来ました。一応町に家もありますよ」
「貴方は………。穏便にお願いします」
「組合次第です」
そのまま冒険者組合へ。
冒険者組合に入った瞬間からメチャクチャ注目を浴びている。
そりゃそうだ。
こんなもん紛争地帯でも注目浴びるわ。
「ど、どういったご用件で?」
俺は事情を説明し、その冒険者の身柄引き渡しを要請する。
魚の餌にしてくれるわ。
「少々お待ちください!! 上のものを呼んで参ります」
「気が立っているので急いでください」
回りの冒険者も話が聞こえたのかその場を動かず成り行きを見守っている。
少しして筋骨隆々のハゲが現れた。
「お前らか? 文句があると言うのは」
「文句と言いますが、これは冒険者の責任でしょう」
「その依頼だがな。依頼完遂として書類にサインまでしてある」
「それは殴られて無理やり書かされたんだ!!」
「だそうですけど?」
「それでも証拠がない以上こちらはどうしようもない」
「その冒険者たちはどちらに?」
「それは教えられん。というか知らん」
「じゃあここで待たせてもらいますね。セバスチャン、ジェイソン、封鎖だ」
「まじっすか………」
「ホッホッホ。これは楽しくなってきました」
「グスタフ、上に向かってショットガンを撃ってくれ」
「あいよ」
ドガンッ
「皆さんそこを動かないでください。動いたら命の保証しません。グスタフ、全員の武器を一ヶ所に集めて全員をこれで縛れ」
そう言ってグスタフに結束バンドを渡す。
「てめえら5人で何ができる!!」
カチン
「いっでぇぇぇぇぇ!!」
「動くなと言ったんだ。じゃあ組合長、ここで待たせてもらいますね」
「お前らこんなことしてただで済むと思ってんのか?」
「済まなかったら喧嘩するまでです」
組合長が俺に飛びかかってこようとしたが、セバスチャンが首にナイフを当てて止める。
「動くなと言ったはずだ」
「ぐっ」
セバスチャン相変わらず怖ぇぇぇぇぇぇ!!
それに速ぇ。
俺全然反応できなかったぞ今の。
この物語のチートはセバスチャンです。
組合のスタッフも冒険者も全員縛り上げ、組合長が持っていた書類に目を通す。
パーティー名「常闇の剣」プッ
リーダー「ポンズ」プッ
なるほど。
真っ黒なポン酢だな。
「お前らこんなこと衛兵に知られたらどうなっても知らねぇぞ」
「じゃあ呼んでみましょうか。セバスチャン、受付の女性を1人解放しろ。………衛兵を呼んできてください」
受付嬢は外に飛び出していった。
そう言えば俺に旅人亭を紹介してくれたおばさんが見当たらないな。後で聞くか。
今はセバスチャンが俺にコーヒーを淹れてくれている。
ついでにクッキーなんかも出して皆で食べる。
「ケンさんすげぇ、ってこれウメェ!!」
「主様は優しいけど怒ると怖いんだぞ」
ロビン君にそう思われてたのか。
怒ると怖いんじゃなく卑怯なんだけどな。
自分から落とす必要もないので言わない。
暫くして入り口から衛兵が5人ぐらい入ってきた。
「お前か!!組合封鎖しt………の…は」
「はい。私です」
この衛兵さんは俺のことを知っているようだ。
話が早くて助かる。
「実は………で、組合に来たんですが、………なんですよ」
「分かりました。オホンッ!!………この件に関して当領、いえ当国は一切関知致しません!! 双方で解決してください!! また、この件に関しての苦情、賠償は一切受け付けません!!」
そう言って衛兵は出ていった。
「なんだと………。お前ら…何者だ………」
「この前領主と喧嘩した愉快な仲間たちです」
「なっ………」
「さっさと冒険者を渡しておけば良いものを。賄賂でも受け取っていたか? だとしたらまとめて海に沈めてやる」
組合長の顔が青くなった。
こりゃあ当たりだな。
「セバスチャン、組合長の部屋を漁ってこい。面白いものでも出てくるかも知れないぞ」
「僕も行ってきます!!」
「じゃあ俺も!!」
孫を引き連れておじいちゃんは奥に消えていく。
どうしよう。
暇だな。
昼時だし飯でも作るか。
こいつらに一番効くのは………焼き鳥でいいか。
串が無いからそのまま焼くのだが、まずはタレ作り。
醤油、砂糖、酒で作る。
本当は味醂があった方がいいが、無いから仕方ない。
鶏ももの皮を包丁でプスプスやり、小型のキャンプ用グリルで焼いていく。
少し焼けたらタレにくぐらせ、また焼く。
いい匂いだ。
遠火でじっくり焼き上げ、最後に強火でカリっと仕上げる。
同時進行で大量生産。
「ホッホッホ。いい匂いがすると思ったら旦那様でしたか」
「めっちゃいい匂い!!」
「照り焼きですか?」
「近いけど、もう少し甘さ控えめかな」
焼き鳥をハンバーガー用のバンズにレタスと一緒に挟み、皆で食べる。
冒険者たちの目はこっちに釘付けだ。
「ウメェ!! こんなうまい飯食べたことない!!」
「主様のご飯はいつも美味しいよ」
「昨日のご飯もケンさんが?」
「ここ最近は基本いつも俺が作ってるな」
「皆より偉いのに料理作ってんのか………」
「ただの暇潰しだ。それより面白い物あったか?」
セバスチャンが見せてくれた書類は偽装や脱税のオンパレード。
こりゃあ俺じゃなくてもいつか捕まってたな。
冒険者がざわざわしだした。
「おい。そんなことしてたのか?」
「今回のことも向こうが正しいみたいだ」
「じゃあここ最近冒険者への当たりが強いのは」
「全部組合長のせいってことだな」
どうやら冒険者たちも目が覚めたらしい。
「このポンズとか言うアホの一味捕まえたら1人につき1000f出す。やるか?」
「まじか!!この街にいるんだろ? じゃあ見つかる可能性も高いな!!」
「全員で手分けして報酬はパァっと使うか!! 俺はさっきので腹が減った」
「全員見つかったらさっきの飯に酒も付けてやる。ジェイソン、組合長以外全員解放しろ」
冒険者が我先にと外に飛び出していく。
残っているのは組合長と俺たちだけだ。
「終わったなお前」
「クソッ………」
程なくして巻き上げた金で飲んでいた全員を冒険者が捕まえ、組合に引きずってきた。
その間俺たちは、組合の外に柱を人数分設置、黒酢を晒す準備をする。
全員柱に縛り付け、首から罪状をぶら下げてそばに側に木の棒やアダルトグッズの鞭なんかを置いておく。
「モンケは良いのか?」
「………行ってくる!!」
モンケに渡したのはスタンガン。
………いい声で啼きよる。




