また人が増えそうな予感。
燻製作りに取りかかる。
今回は冷燻にしたい。
漬けた魚を取り出し、水に晒して塩抜きをする。
今回も前回と同じくらいの塩加減になればいい。
ちょっと切って火にかけ、味見。
「焼き魚より少ししょっぱいが、長期保存用だしこんなもんか」
水から引き上げて、陰干しする。
今回は量が多いのでエラに紐を通してロープにぶら下げる。
それが2列。
業者かよ。
今回はガッツリ水分を飛ばすので2日ぐらい干すつもりだ。
まあ店で干物を作ったときとは勝手が違うので様子を見ながらだが。
そのまま皆の手伝いへ。
ちょうど床板を上にあげるところだったので、全部収納して上で並べていく。
「主様がいると作業が早くて助かります」
「完全に重機だな。まあ便利人間か」
「いえいえ、そんなつもりでは!」
「いいんだケビン。自分が一番思っていることだ」
「ホッホッホ、確かに便利ですな」
「どんな商売でも1人はほしい人材じゃな」
「食いっぱぐれはなさそうだ」
「ケン様。こちらにも板をお願いします」
「あぁ、シードは仕事が早いな」
「元々木こりでしたので、木材の扱いは多少慣れています」
「それは助かる。それでシード、この後少し時間いいか?」
ちょうど休憩時間なので、シードを連れてガゼボで話をする。
「それでシード、ここでの生活はどうだ? 何か問題はないか?」
「そのようなことはありません。解放もしていただきましたし、仕事も楽しいです」
「元々の性格なのかも知れないが、ここに来てからあまり皆としゃべっていないし、何か悩んでいるように思うが」
「………」
「なんでもいいから言ってみなさい」
「………実は…」
どうやら怪我で奴隷になったが、家族が村に残っているので、それが気がかりのようだ。
早めに言えば良いものを。
「全部面倒見てやるから連れてきなさい」
「………よろしいので?」
「ケビンも一家全員面倒みているぞ。一応嫁さんと娘さんは町に今いるがな。もっとみんなと話せば早く分かったろうに」
「口下手なのは元々なので………」
「まあいい。1万やるから行ってきなさい。向こうが良かったならそのまま向こうで前の生活に戻っても構わない。できれば手伝ってほしいが」
「そんな大金………」
「ジェイソンを付けてやる。途中でなんかあっても大丈夫だろう」
「ありがとうございます。必ず戻ってきます」
「気負うな。ただの道楽だ」
みんなに事情を説明して、ジェイソンと共に出発させる。
町から4日ぐらいの場所らしい。
ジェイソンに酒と魚の燻製を渡しておいてやる。
道中で食べるように。
フル装備ではないが、拳銃とショットガンを装備していれば問題無いだろう。
シードも弓と斧持ってるし。
「ポアソンは大丈夫か?」
「私は親の店を継いだだけの独り身だったので、特に用事はないです」
「何かあれば言えよ」
「ありがとうございます」
また人が増えるが、別にいいか。
午後も床板を張る作業を続けるが、ある程度張った所に床板を全部出し、俺は屋根の設置に移る。
グスタフの指示にそって屋根を出し、金具で固定していく。
「やっぱアニキすげぇ、屋根があんなに直ぐにできるなんて………」
「そりゃあ店に1人欲しいわな」
屋根を出してネジで止めるだけ。
簡単でしょ?
5時間ほどかけて屋根の設置が終了。
いい時間なので家に帰る。
「晩飯なに食べたい?」
「海賊料理!!」
「お前は手間がかからなくていい子だ」
ということで海賊料理、今日はとうもろこしやじゃがいもも一緒に茹で、茹で汁は水とコンソメを足して野菜をいっぱい入れたスープにした。
タレはみんなお好みなので適当に出し、魚の燻製も焼いて出す。
干した魚見るの忘れてた。
いい感じに水分は抜けているが、もう少しかかるな。
みんな帰ってきたので晩飯にする。
みんな海賊料理好きだな。
俺もだが。
やっぱりシンプルな料理は嫌いな人間がいないからいいな。
豪華で男の飯って感じするし。
「明日からは壁も付けていく感じで良いのか?」
「その前に、大きくなった分の補強をしてからじゃな。なんかに斜めに木材を固定して補強するんじゃ」
「予定はあとどれくらいで完成だ?」
「内装込みで1月もかからんじゃろう。全く、規格外の早さじゃわい」
「任せていいか? 一回町に行きたい」
「問題無いぞ。必要な木材だけ置いていってくれ」
「セバスチャンも連れていくぞ」
「分かった」
翌日、朝食を食べた後に干物を収納し、セバスチャンを連れて町に行く。
おやっさんに報告に行くためだ。
自転車に乗り込み、出発する。
もしかしたら日帰りできるかもしれないが、足がパンパンになるだろう。
電動バイクでも買いたいが、充電があんまり持たない。
ガソリンがほしいな。
ガソリンなんてネットで買えるか?
見たこと無かったぞ。
アメリカなら有りそうな気もするが、料金設定が気になる。
いっそ電気スクーター改造するか。
「馬車と自転車だったらどっちが速い?」
「馬車なら急げばいい勝負でしょうが、普通に走るだけなら自転車ですな」
「多分町から家まで40km無いぐらいだと思うが、馬車だと1日どれくらい進むんだ?」
「60kmがいいところですな」
「自転車でもそれくらい行けるが、体力的にキツいな」
「町までどれくらいの予定ですか?」
「今日はずっと平均速度13kmで走っている。4時間はかからないな」
「ホッホッホ、それは速いですね」
町に3時間ちょっとで着いた。
37~40kmといったところか。
東京駅から千葉駅ぐらいだな。
昔震災の時に歩いた。
「意外と早く着いたな」
「これくらいのペースであれば帰ることも可能ですね」
そのまま旅人亭に向かう。
「やっほー」
「お兄ちゃん!! 遊び来たの!?」
「パパー!!」
「ん? どうした………ってお前か」
「おやっさんお久しぶりです。今日は報告と………ジェシカさんは?」
「今は一回家に帰ってるぞ」
「そうですか。一応後1月ぐらいで新しい旅人亭が完成するので、その報告に来ました。一月後ならいつ来てもいいです」
「まだ出ていってから2月ちょっとしか経ってないだろ………」
「一応部屋は15部屋に増やして、水道や下水管なんかも設置したので快適だと思いますよ」
「人が足りなくなるんじゃないか?」
「まあうちに人はいっぱい居るんで貸し出しますよ」
「ジェシカさん1人でも居れば回るかもな………」
「取り敢えず家に顔だしてきます」
裏口から家に入り、ケビン宅をノックする。
「はーい。って主様!! いつお帰りに?」
「ちょうど今だ。一応旅人亭が1月後に完成するからその時にここも持っていこうと思ってな」
「わかりました。準備しておきます」
「何か問題はないか?」
「ブロンズ商会の方に納品する物が少なくなって来たぐらいですね」
「補充しておくが、引っ越しとなったら取りに来てもらわないとな。マリーちゃんもみんなとお引っ越しだから準備しておいてね」
「はい!!」
この2ヶ月ちょっとの間の収益はそのままジェシカさんに任せておけばいいか。
後、顔だす所は………ないか。
一応市場で魚介類と野菜を仕入れておく。
ネットで買うより安いからな。
みんなに挨拶して帰る。
町の滞在時間3時間。
移動6時間。
ふざけてるな。
「セバスチャン、何かやりたいことは?」
「後ろから付けてくる者が居ます。そのまま進んでください」
「………面倒な」
そのまま歩いてると、後ろからウギャッという声が聞こえたので振り返る。
子供のようだ。
というかセバスチャン、どうやって捕まえた。
「用は?」
「金を出せ!! 後離せ!! 仲間がお前らなんかボコボコにするぞ!!」
「金だ。1000fある。だが貸すだけだ。いつか自分で稼いで返しに来い」
「………いいのか?」
「必要なんだろ? だから捕まるようなことはするな」
「………分かりました………」
「セバスチャン、離してやれ。雇ってほしかったら西の森の湖まで来い。仲間も面倒見てやる。その金があれば冒険者に護衛も頼めるだろう」
帰りにセバスチャンにからかわれた。
「お優しいですな」
「子供は好きだからな」
「来るでしょうか?」
「来るだろ多分」
「また面白くなりそうですな」
「いい暇潰しだ」




