開拓って言いたいだけ
出発の日、みんな朝食を食べる。
「これから開拓………」
「なんじゃジェイソンなっさけないのう」
なんとかみんな自転車に乗れるようになった。1番はロビン君次がなんとドワーフのグスタフ。
最初自転車にびっくりしながら、構造を理解しようとしていたが、理解してからは1時間ほどの練習で乗れるようになった。
グスタフに俺のことを説明しても、お主も災難じゃったな。で終わり。
多少はびっくりしてほしかった。
服を買うにもサイズが無く。
自転車もBMXに乗っている。
貫頭衣に長髪に髭じゃあ様にならないので、半袖ツナギを短くして縫った。
武器は斧。
「作りは粗いが見たこともない鉄じゃな。まあしっかりしとるし、後で研ぎ直しちゃる」
「一番いい奴なのに………」
そして何より銃への食い付きは凄かった。
貰って直ぐにばらし始め各部を観察して戻す。
もちろんショットガンだ。
あげく弾まで分解して火を着けた。
「なるほどの~、エグい武器を考えるもんじゃ」
そして何より酒だ。
「美味い………」
泣き始めた。
髭がベチョベチョだぞ。
他の2名はその間に自転車に乗れるようになり、こうして出発となった。
俺はその間に家のキットを買ったり、定規で間取りやらなんやらを描いてグスタフと相談している。
暇じゃないってすばらしい。
もう夏も終わる。
早めに建築してしまおう。
ジェシカさんとしばしお別れ。
今は銃の扱いも覚え、大概の敵なら問題ないだろう。
なんかあったら連絡取れるように、40マイルのトランシーバーも買った。前のが35マイルで湖ギリギリだったので、なんとか繋がる計算だ。
繋がらなくても3日に一回、朝連絡を取ることにしている。
今日はセバスチャン以外とは初めての遠出なので、余裕を見て村に泊まる。
「やっぱり自転車は素晴らしいのぉ」
「俺はまだ怖いっす」
「長距離乗ってれば慣れるさ」
「私もまだまだですが、楽しいです」
俺は立ち漕ぎを披露する。
みんなを買った責任として、笑顔でいてほしいと思う。
主人公みたいに成功ばかりではないが、今はそれが楽しい。
銃っていう強い武器があるからかもしれないが。
とか言いながら、みんなでレースが始まる。
立ち漕ぎで火がついたようで、みんなスピードを出して追いすがってくる。
グスタフよ。
その足の短さでどうやってそのスピードを出している?
なるほど、ギアを上げてパワーで勝負するようだ。
俺は前傾姿勢になり、立ち漕ぎをしながらギアを上げていき、馬糞を踏む。
後ろから悲鳴が上がった。
俺に勝とうなんて100年早い。
村につく頃にはみんなヘトヘトになっており、部屋に入るなり椅子に座り込んでしまった。
酒とおかずを出して晩御飯にする。
ロビン君は普通にパンだ。
「あそこでスライムは無いっすよぉ」
「そうじゃ! あれは卑怯じゃぞ!」
「あの技はすごいですね!」
「あんなスピードで漕いでたらそりゃあスライムも踏むさ。あれはわざとだけど」
「やはりヘビを討伐した時も思いましたが、凄まじいですね」
「ヘビとはなんじゃ?」
「実はですね………」
俺があのヘビを倒した時の話だ。
「………魔物ながらメガスネークが不憫じゃな」
「お前らなら正面から戦うか?」
「そもそも戦わんな」
まあ挑まぬ者の戯れ言はスルーして、日本酒を飲む。
酒をビールから日本酒に変える。
「うまい」
「………儂にもくれ。………いつも飲んどるものより薄いが、澄んでるの」
「おぉ、本当に美味しいですね」
テーブルに小型のガスストーブを出し、さきいかを炙る。干し魚とマヨネーズも置いておこう。
みんな各々炙り、マヨネーズを付けて食べる。
ロビン君もおやつ感覚で食べている。
「なんじゃ………、こういうつまみが一番ええのぉ」
「日本酒に合いますね」
「干し肉貰っていいっすか?」
こっちで普通売られている干し肉を出して炙る。ビーフジャーキーは味付けが洋風だから日本酒にはこっちだ。
「ぷはぁ。最高っす」
「案外知らなければ、調味料なんて少なくてもなんとかなるな」
「でも醤油はほしいっすね」
「鳥の内臓をな、醤油に漬け込んで干すんだよ」
「旨そうじゃの………」
「それを半渇きぐらいで燻製にかけてな、上から唐辛子ちょちょっとかけて食べるんだ」
「明日は鳥っすね。照り焼きが食いたいっす」
「お前の意見は聞いてない」
翌日は歩きで森に入っていく。
2時間弱ほどで湖に出て、トランシーバーを起動する。
ピーピー
「こちらケン、どうぞ」
ザッ
「こちらジェシカどうぞ」
「そちら問題はないですか?」
「今のところ大丈夫ですね」
「分かりました。拠点に着いたらまた連絡します」
今のところちゃんと繋がるようだ。
湖の反対側にたどり着いても、トランシーバーはちゃんと動いた。
これで連絡は問題ないな。
拠点のテントを組み立てる、今回は5人なので2つだ。
近くにタープを張り、したにテーブルと椅子、作業台を置いておく。
今回は長くなるうえに人数も多いので、ちゃんとした物に換えた。
さすがに地面に毛布、アルミストーブでは開拓しに来たのか、難民しに来たのか分からない。
テントにマットと寝袋を設置、外にはソーラーパネルも置いておく。
明日から開拓、それが終わってから建築だ。
俺のホームデポが火を吹くぜ。
その日の夜は魚になりました。
翌日朝から起きて、チェーンソーで木を切っている。倒れる方向も計算しないと大事故だ。
場所は、湖のそばに道を作る予定なのでその奥、湖から10mぐらいの場所。
木を切って森を開拓していく。
「倒れるぞー」
ていうか家1軒分なんてすぐ終わる。もう少し森に入れば木が増えるがここは家一軒分に3本ってところ。
問題は切ったあとだ。
大きい枝はチェーンソーで切っていき、細かいのは鉈やマシェットで切る。
数が多過ぎて時間がかかる。
切った木もある程度の長さで切って、後で薪にする。
切り株は、まだ生きているので収納できない。
ネットショッピングで切り株で調べると。除草剤が出てくるが、そのあとここに畑や井戸を掘ることを考えればできない。
掘り起こすしか無いのか………。
サイトをいろいろ調べて良いものがないか探す。
普通はどうしてんだろ?
「切り株ですか? 燃やしてますが」
ホームデポさん出番は無いみたいですよ。




