水とゴブリンと私
「とりあえず、明日は周辺の探索だな」
街を探そうにもむやみやたらに進むわけにもいかない。街と反対に進んでしまえば最悪だ。できれば水源を見つけ、拠点を水源の近くに移しそこから各方面へ移動しよう。明日の予定を立てていると、ふとテントの塞いだ方からガサゴソと近づいてくる音が聞こえた。
「やっぱり森だし何か居るよな…」
俺は声を殺し、側に置いてあったナイフを左手に、斧を右手に持ち、その音に耳を澄ませる。このテントが気になるのか、傍まで来て匂いを嗅いでいる音がする。俺はナイフをライトに持ち替え、唯一の出口である方へ向け、そいつが姿を現すのを待つ。今か今かと待ち、そいつが姿を現すと同時にライトのスイッチを入れた。
「キュー!!」
そいつはいきなりの光りに驚き、そこから逃げ出した。大きさ、形、どう見てもタヌキである。
「タヌキかよ…」
狼だったら光を浴びせ、一か八か斧で戦うしか無いと思っていた。でもこのままこのシェルターじゃあ心細い。やはり明日探索と同時にシェルターの強化も考えないと。
結局朝までビクビクし、まともに寝ることもできなかった。朝日が昇ると同時に、エナジーバーを食べ保存水を水筒に入れ、シャベルの取っ手に付いているコンパスを頼りに北へ向かう。何故北かというと唯一その方角にだけ山が見えているのである。山があれば湧水でも出てるかもという勘である。
歩き始めて5分もたたず、遠くに4匹の鹿が見え、向こうもこちらに気づいたのか、そのまま走り去ってしまう。
「追いかければ水場あるかな?」
動物がいれば、どこかに水があるはずである。一縷の望みを胸に、鹿が逃げていった方へ自分も付いていくことにした。
「本当にあった…」
そこは川幅5メートルほどの両側が丘に挟まれた場所であり大小様々な岩や流木が両側に落ちている。それより問題なのは、ゴブリンさんという先客がそこでお散歩中いうことであろうか。身長100センチ強といったところ、手には身長の半分ほどの木の棒を持っていて、さながら木の棒で遊んでいる小学生って感じ。待っても仲間がいないところを見ると一匹のようだ。いついくの?
「今でしょぉぉぉぉぉ!」
古いボケをかましつつ、斧をもってゴブリンに奇襲を仕掛ける。ゴブリンさんはビックリしたものの、そこから動かずパニックになっているようだ。
「グギャッ!?」
「アチョー!」
俺は斧をゴブリンの頭へ振り下ろす。斧はグシャっという手応えと共にその頭の中ほどまで食い込みゴブリンはそのまま倒れて動かなくなった。
ピコン!
「レベルが上がりました」
「おヴぇぇぇぇぇぇ!」
レベルなんて関係ないとばかりに俺は吐いていた。それもそうだ。斧が食い込んだ断面はグシャグシャ、目玉に至ってはヨーヨーの如く飛び出している。日本育ち、いくら魚を捌いたことがあっても勝手が違った。しばらく空のお腹から酸っぱい物を出し、水を飲んで落ち着いてから、またゴブリンの死体へと向かう。
「スキルのウプッ確認しなきゃ」
ゴブリンに触り、ストレージに入れる。ストレージを確認すれば、ちゃんと"ゴブリンの死体"と出ている。そこからネットショッピングの売るを選択し、ゴブリンの死体を売却する。
ゴブリンの死体
棍棒5f
魔石20f
腰簑1f
売却しますか?
ゴブリンの死体が売れることを確認し、ネットショッピングから18fの3.5ガロン入るポリタンクを2つ買い、満タンに川の水を入れ帰路に就いた。
残金765f