緊張と緩和
俺は今必死に衛兵に説明している。
「だから町の道路に管を埋めていたのは便や使い終わった水を流してるんです!」
「なるほど………?」
「トイレも湯あみできるように工事していただけですって!!」
「屋根のあれは?」
「太陽の光を集めて湯あみの水を温めてます」
「ワケわからんが、なんで下級冒険者が6人も奴隷を持ってるんだ?」
「それはブロンズ商会との商売で稼いだお金です。ほら、これみたことありませんか?」
「おぉ!! メタルマッチとやらの出所はお前か!!」
「そうですよ。これで安心していただけましたか?」
「しかしな……。上司にこんなこと言っても信じてもらえるか……」
「どうしても無理なら家でもなんでも見せますよ………」
なんとか帰ってもらったが厳しい言い訳だな。
太陽光発電とかどうやって説明すんだよ。てか俺も原理しらねぇよ。
水道は手動ポンプに換えておいて、ソーラーパネルはその下に水が入ったタンクでも置いとく。
夏だしある程度温まるだろ。
下水管はそのままでいいとして、トランポリンとバドミントンもいいか。
銃とボウガンもストレージに仕舞って、ジェイソンの装備は剣以外全没収だな。
「旦那様、衛兵が戻って参りました。上官もいっしょのようです」
「通してくれ」
なんか性格キツそうな男が来た。
ジロジロ見るな。明かり系は後で配線めんどくさいからしまってないんだ。
「初めまして、私クリスと申します」
「ケンです………」
「まあまあそう堅くならずに、問題が無ければすぐ終わりますから」
「はぁ………」
そこからもう一度説明をするが、質問が多い。
「この下水管というのはなんの素材で?」
「植物から作ったとは聞いてますが、自分も作ったわけではないので詳しいことは分からないです」
「このポンプはどういう原理で水が上がってくるのですか?」
「上に持ち上がる時だけ水を吸って下ろす時には吸わないとかなんとか」
「あの板でどうやって太陽の光を集めるのですか?」
「黒い服を着てる時に暑く感じるのといっしょだそうです」
「では最後に、貴方がブロンズ商会で稼いだ金額と使った金額が合わないのですが、このお金はどこから?」
「スキルの収納からです」
「ほぅ………」
俺はネットショッピングから金貨を出す。
これも考えていた。
持ち込んだ形跡の無いものが多いうえに大きすぎる。
ソーラーパネルなんて持ち込んだら一発で分かってしまう。
なら持っていたと言うか作ったと言うしかない。
作ったは面倒な注文が来そうだし、これしかない。
「なるほど分かりました。興味深いものが多く質問ばかりしてしまい申し訳ありません」
「誤解が解けたようで何よりです」
「新しい物が怖い人間も多いということです。邪教徒じゃなくて良かった」
「少し派手にやりすぎたようですね」
「表から見えない分余計考えてしまうのでしょう。他にも色々ありそうですし」
そう言ってあのクリスは帰っていった。
絶対めんどくさいことが起こりそう。
「どうしよう? 教えてセバスチャン先生」
「ほっほっほ。最悪逃げてしまえば良いでしょう」
「そうだな。まだほかの町行ってないしな」
「みんなで自転車の旅というのも面白そうですね」
「それいいな!!」
「ジテンシャ?」
みんなに自転車を見せる。
反応薄いな。まあ猫車とか台車見てるしな。
漕いでみせると、やっと反応が返ってきた。
丁度ポンプも給湯器も止まってるし、色々家電でもお披露目するか。
今日1日で一生分驚かせてやろう。
そこからドライヤーを出したり、掃除機を使ってみせたりしながら過ごし、ジェンガやビリヤード、ポップコーン作りなんかもやったが、一番驚かれたのは俺が本当は28だということだった。
まあ見た目は15だからな。
その後、俺のことをもう少し紹介するために日本の国旗を出してあげたり、日本地図が描かれた絵を出したり、着物を着た人形を出したりした。
その日の夜はギフトバスケットの中からステーキセットを購入し、みんなで宴会をする。
たまにギフトから食材提供をしたりしていたがみんな地球のご飯は好きなようだ。
アメリカの分厚いステーキに、オニオンソースをかけて提供し、セバスチャンにだけサーモンのハーブ焼きを出してあげる。
俺はみんなにコーラを飲ませてみたが、反応はいまいちだった。
ホームデポにあるジュースはエナジードリンクとスポーツドリンクとコーラしかなかった。
後でお茶でも出してあげよう。
クリスが二度と来ませんように。
もっとすごいの来そうだけど。




