ヘミングウェイ
双子が帰っていったので、内装をもう少し弄る。
トイレはレンガで高くしてあり、キャンプ用のポータブル便器の高級な奴を設置。
キッチンを出て直ぐの所に立って入るテントを設置して、足踏みポンプ式のシャワーを取り付けた。
なんとか文明的サバイバルブックや食べられる野草なんかの本をリビングに置いといて暇なとき読めるようにする。
ワン○ースの続きが読みたい。
ピッケルを持って庭に出て土を耕す、昨日鍬で試したときは固すぎて難しかったので、トレーニングがてらピッケルを振るう。
日本刀よりも重いのでいい筋トレになるなこれは。
一回で耕せる場所は狭いが、斑にでも耕せれば鍬が入るようになるだろう。
とりあえず2畳分ほど掘り返し、鍬で全体を耕すが、やっぱり浅い。
ミミズも必要だなこれは。
掘り起こした所を畝にして、ラディッシュを植える。
はつか大根とは呼ばれているが、実際には1月ほどかかる。10日で一回間引きをするが、1月で食べられればいいだろう。
唐辛子とトマトも植えないとな。
米はどうしようもないがたまに非常食で食べてはいる。新しいサイトにも向けてレベルもあげたい。
米を食べたくなってしまったので、晩飯は非常食の鳥チャーハンと照り焼きチキンご飯を作り、スープと食べる。
「この白い穀物は美味しいですな」
「故郷の主食だからね。セバスチャンは何か食べたい物はないの?」
「今は無いですが、魚が好物ですな」
「今度作るよ。土間にも食品置いておくから好きに使ってくれ」
キッチンの棚にはご飯系非常食とフリーズドライの野草を並べた。
スティッキーマンゴーライスという物も見つけたが、日本人の口には合わなかった。
タイ風インスタントラーメンやパッタイ、フォーも美味しそうだったので追加。
ビーフジャーキーはつまみだな。
スモークサーモンやサーモンの缶詰も置いておいて、取り敢えずは大丈夫。
港だし釣りでもするか。
カヌーボートも売っていたし釣りセットはサバイバルパックにあったけど竿が無いな。手袋で引いても絡まりそうだし、明日は鍛練だから明後日にでも竿買いに行くか。
25fの缶に入ったサバイバルキットに針と重りとサルカンが4つとテグスが入っていたので、仕掛けを4つ作っておく。餌釣りになるが竿が4mとして4.5m分ぐらいの長さが限界かな。
翌日、前回と同じメニューを行う。
先に打ち込みを行い、身体が温まったところでセバスチャンと打ち合う。
日本刀一本ではそこそこのスピードについていけるので二刀流で行うことにする。
遅いスピードから段々速くし、ギリギリのスピードに慣らしていく。
左を防御のみと考えずに、刀で防いだ隙に籠手を狙ったり、剣を弾いたりして、防具ではなくサブ武器として利用する。
刀は相手の足を狙ったりして防がざるを得なくしたりして、餌としても使う。
慣れてきたらスピードを上げ、セバスチャンの攻撃に対応できるまでまた慣らす。
今日は鉈だけでの攻撃も練習する。
スピード重視の練習で、相手の攻撃を防ぐことよりも避けることに注意し、避けながら攻撃をしたり、急所を狙うことを意識する。
セバスチャンも専門だからなのか、教えるのが上手い。
セバスチャンが両刃のナイフなのは、ナイフを行ったり来たりさせることで何回も切れるからだという。
セバスチャンに突きを放つと、腕の両側を1本ずつ切られ、あげくのはてに脇の下を突かれた。
なにこのアサシン。
それを終えたら今度は畑を耕す。
左手だけを基本的に使い、右手は添えるだけ。セバスチャンも手伝ってくれて、今日は昨日の倍耕せたので、トマトと唐辛子を植える。
失敗する可能性が高いが、物は試しだ。
来い!! ご都合主義!!
予定よりも早く終わったので、釣具を見に行く。
港で釣具屋を聞いて向かい、木製の釣竿を2本買う。糸は4.5mぐらいの物を2本貰う。
4.2mくらい残して縛れば、仕掛けを入れて2.5mほどになるだろう。
餌として鶏肉を買い、家で塩漬けにしておく。
早朝に目覚ましで起きて、セバスチャンと釣りにいく。まだ暗いが、釣りはこんなもんだ。
桟橋に着いて、朝買ったクーラーボックスに海水を入れ、釣りを始める。
椅子を出してタバコ…無いな。
釣りの待ち時間にタバコを吸いながら中島みゆきを聞くのが好きなのだが、こちらでタバコを吸う人間を見たことがない。
中世イギリスでは薬として子供でもパイプでプカプカやっていたようだが、あるのか分からない。
魔法瓶に入れたコーヒーを飲むと余計に欲しくなる。
「なあセバスチャン」
「なんでしょう?」
「タバコって知ってるか?」
「はい。存じ上げておりますが」
「あるんだ……。どこで買えるの?」
「基本的に貴族の方しか吸われませんので、取り寄せる形になりますが、この町にも領主様がいらっしゃいますので、探せばあると思いますが」
「釣り終わったら、買いに行くか」
「吸われるので?」
「前世じゃあ28だからな」
「?」
「どうした?」
「タバコに年齢が関係あるので?」
「あぁ。そうか」
セバスチャンに地球でのタバコ、アルコールの扱いについて教えると言った意味が分かってくれたようだ。
4時ぐらいからアイナメ2匹とメジナが7匹釣れたので、海で血抜きを済ませて10時ぐらいに帰ってきた。
ストレージに入れて帰ってきたので新鮮だ。さっさとさばいて、食べる分以外はストレージへ。
醤油は無いので、ニンニクと塩、レモン汁を合わせたタレで頂く。
「生の魚は初めてですが、美味しいものですな」
「酒が飲みたくなるな」
昼御飯として刺身を食べて。タバコを探しにいく。まずはブロンズ商会へ。
「タバコですか? 当店では置いてないですね。商業組合へ聞いてみた方がいいかと思います」
「分かりました。ありがとうございます」
「あと納品も近々お願いします」
「分かりました。明日か明後日にはお持ちします」
商業組合で聞いてみるとここで扱っているようだ。結構するが、税金だと思えば高くない。
なんでも乾燥で味が落ちるので、扱いが難しく高くなってしまうようだ。
大きな木箱からグラムで500gほど買い、パイプも買って帰る。
家に帰ってさっそく吸ってみる。
この身体では初めてのタバコだ。
扱いは難しかったがたまに吸う分には問題ないだろう。
セバスチャンをつれて宿に行き、おやっさんに刺身を食べさせる。
生の感触が嫌で受け付けてもらえなかった。
やはり生食を広めるのは難しいな。俺でも冷蔵庫が無い時代に刺身出されたら食えるか分からん。
「このタレは旨いな。肉にも合いそうだ」
「タンとか旨いな」
「そうなのか」
「薄く切って、さっと焼いてこのタレで食うんだ。でもさっぱり食べるだけならどんな肉でもいけると思うぞ」
「なるほど。やってみる」
そのままセバスチャンと晩御飯を食べて、家へと戻った。




