マップ制作
館に戻ってきたが、冒険者はまだ到着していない。
朝8時に出発しても、到着は16時位だろう。
それまでに一回情報を整理する。
「多分1層目にそこまで強い魔物は出ないはずだ。 今回はゴブリンだったからドロップが魔石と腰布だったけど、他の魔物の場合の調査が必要だな。 宝箱があるかも調べたい」
「なんで魔物が消えたんじゃ? それにあんな洞窟で何を食べておるんじゃ?」
「ダンジョンだから多分魔物は湧いてくるし、肉は残らないのかもしれない。 毛皮なんかも残るか調査が必要だな。 後どれくらいでリポップするのかも調べないと」
「ふむ………。 調べる事が多いの」
「一応ダンジョンはうちの領地じゃないからな。 そこも確認しないといけない。 最悪権利で揉めるかもしれない。 買収出来ればいいけどな」
「面倒じゃのぅ。 内緒で進めたらいかんのか? どうせ湖を通るんじゃし………」
「まあ責任を押し付けてみて、手放すかどうかだな」
「相変わらずエグいのぅ………」
管理も押し付けて、うちの国を通る場合の通行料金もべらぼうに取ってやろう。
管理出来なければ国から文句言われるだろうし、道路を敷くにも金がかかる。
魔石はまだ金にならないので税収も上がらない。
こんな金食い虫がほしいならあげよう。
俺は魔道具の販売で儲けられるし、そのうち手放すだろう。
冒険者が到着した。
総勢17名で、全員そこそこ腕も立つようだ。
全員に今日探索して分かった事を伝えて、夕食を済ませた後に明日の予定を決める。
3組に分けて1組はグスタフと新しく門を設置するのを手伝い、後の2組は俺達と探索に向かう。
1組はセバスチャンと、1組は俺と移動だ。
明日の予定を決めて軽く宴会し、就寝する。
二日酔いになったら門の設置に回そう。
グスタフがいて飲み会にならない訳がなかったな。
翌日、幸い二日酔いは出なかったので、適当に組分けして探索を開始する。
無線はちゃんと繋がるか確認をしてから探索を始める。
広場から2手に別れ、セバスチャンは昨日進んだ道を俺は新しい道をそれぞれ進む事にした。
セバスチャンには昨日のゴブリンと同じ場所にゴブリンがいるか見てもらい、リポップかは分からなくても当たりだけ付けよう。
俺は戦士型の冒険者に前を進んでもらい、他の冒険者に簡単な地図を書いて貰う。
コンパスを使いながら地図を埋めていけば帰れなくなることはないはずだ。
しかし、出て来るのは昨日と同じゴブリンだけ。
というか昨日よりも多い気がする。
入る人数で増えるのか、もしくは昨日が少なかっただけなのか。
実験でしか検証できないので、取り敢えず行けるところまでいってみよう。
進むこと1時間、そろそろ何かあってもいいと思うが、未だにゴブリンが出るだけで何も進展はない。
出来るだけ右に進んで来てはいるが、方向が変わっても階段か何かが出て来ることもない。
「旦那様!!」
「セバスチャンか。 合流出来たということは、1周回ったという事だな」
「おっしゃられた通り左に進み続けたので、その通りかと。 何かございましたか?」
「いや、別の層に出る階段も小部屋も無かった。 この外周の中に何も無ければ、ここはこの階層だけで終わりだな。 さすがにそれだとダンジョンとしてどうかと思うが」
「1時間ほどで合流できたという事は、大きさはそれほどではありません。 地図を埋めて行きましょう」
「そうだな。 一回グスタフにも確認してみよう。 門の設置が終わっていれば、今は中にいるはずだ」
徒歩で1時間なら無線も………繋がらないな。
やっぱり電波がとどかないか。
入り口と奥じゃあ違うよな。
取り敢えず一回来た道を戻って合流しよう。
話はそれからだ。
入り口に戻ってくると、グスタフが広場でこちらを待っていた。
どうやら門はもう設置し終わったようだ。
まあただのフェンスだしな。
「戻ってきたか。 なんぞ見つけたか?」
「いや、外周を回ってきただけだ。 両方1時間だから外周8kmってところか。 階段も部屋も何も無かった。 魔物もゴブリンだけだ」
「それなら手分けした方が早いの。 どれ、地図を見せてみろ」
地図には方向と見つけた時の時間が書いてある。
グスタフはかかった時間を元に縮尺を合わせた1枚の地図を作り、それを冒険者に写させていく。
2人1組を作り、外周の分岐点からそれぞれ侵入させていくみたいだ。
後でまとめて地図を書き込んでいくらしい。
「リポップはどうだった?」
「あの場所にはゴブリンはいませんでしたが、反応には近くに出ました。 探しには行っていませんが、ゴブリンも移動したら分かりません」
「取り敢えず1日として考えるか。 今日は出来るだけゴブリンを減らして、明日また確認しよう」
広場で一回昼食を取り、全員に何か見つけても地図に書き込むだけで帰って来てもらい、外周の分かれ道にはそれぞれ出口の方向と番号をスプレーで書いて貰おう。
各交差点にも自分の番号と何個目の交差点か書いて来て貰い、同じ場所を通らないようにしてもらう。
無線は使えなかったので、各自に笛を渡して集合と緊急事態の合図を決めておく。
外周8kmだとして円で考えた場合、半径は1.3km位か。
20人いれば聞こえた笛を全員で吹いていけば全体に聞こえるかもな。
20人1組で考えると、外周の交差点の方が多い。
バランス良く配置して、人がいない交差点にもマークを書いて行き、俺と冒険者の2人は最奥からスタートする。
基本は地図に方向と時間を書き込んでいき、交差点に番号を振っていくだけ。
ゴブリンは出て来るが、これはあまり足留めにはならない。
「思ったんすけど。 これがゴブリンの巣っていう可能性はないんですか?」
「あり得るが、洞窟の明かりの説明が付かないし、死体が消えるのもあり得ない」
「それもそうっすね」
「だがいい質問だ。 ビールをあげよう」
「あざっす!!」
途中で他の冒険者が進んだ交差点に出た場合も地図に書いて引き換えし、他のルートを進んでいく。
冒険者と最近の稼ぎについて雑談をしながら進んでいき、途中で休憩を挟みながら進んでいく。
休憩時間ももちろん地図に記入する。
じゃないと地図が狂うからな。
途中で小さな部屋に出てきた。
他のどこにも通路がない行き止まりの部屋。
その部屋の中央には未開封の宝箱。
罠を警戒して慎重に開けてみると、中には黒い指輪が1つ入っていた。
収納に入れて鑑定してみると、早さの指輪と出て来る。
こんな物もあるのか。
後で調べてみよう。
3時頃に、別の外周の交差点にたどり着いたので、そのまま集合の合図を笛で吹く。
吹き終わると、少し離れたところからも集合の合図が鳴り、他の場所からも聴こえて来た。
この合図も冒険者の手引き書に書いておこう。
俺達は広場に出るのに40分かかったが、まだ中にいる人間は出て来ていない。
結局全員集まるまでに1時間半かかった。
結構奥まで進んで行ってきたみたいだ。
そのまま帰宅して、装備をおろして体を拭いてから夕食にする。
今日は肉を多めに入れたスープとパン、それに大きめのステーキをつけて少し豪華に。
「何か見つけたか? 俺は宝箱で指輪を見つけた。 後で調べてみるつもりだ」
「こっちは上りの階段を見つけました!!」
「こっちも宝箱を発見しました。 開けてはいないです」
「罠が怖いからそれでいい。 明日確認しに行ってみよう。 グスタフは地図を頼む」
「あい分かった。 時間と方向を計算してあるし、大体はこれで出来るはずじゃ。 後は穴埋めを明日すればええ」
グスタフと大きめの紙に地図を鉛筆で描いていき、多少ずれても冒険者同士が重なったポイントを記入して行くと、ざっくりとした地図が完成する。
それを写真に撮って印刷し、冒険者に渡していく。
全体と明日埋める部分を書いた物だ。
俺は一回グスタフと帰って物資を卸してから、指示だけ出して直ぐに戻ってくる。
移動に6時間かかるが、グスタフのバギーで交代に乗れば多少は楽できるだろう。
組合にも報告しにいかないといけないが、ちゃんとダンジョンが生きていることを伝えれば喜ぶだろう。
ある程度進んだら俺もダンジョン攻略を本格的に進めたい。
最近運動不足なんだ。
ジム代わりにちょうどいい。
夕食後、早さの指輪を見てみる。
鑑定には早さが1.1倍になる魔道具だと書いてあるが、模様が見当たらない。
魔石を嵌め込む場所も見当たらないし、どうやって起動するのか分からん!!
試しに指輪を嵌めてみると、たしかに少し動きが早くなった気がする。
分解も出来ないし、これ以上調べようがないな。
黒い色を剥がしてみるか?
いや、同じものが出て来たらにしよう。
模様まで無くなったらさすがに痛い。