茨城ダンジョン
今、ダンジョンにバイクで向かっているのだが、やはりキャンプ場を越えて上流に向かうと、大きい岩が邪魔で思うようにスピードが出せない。
そういう岩を収納してから穴を埋めていく。
スピードが出せるようになればダンジョンまで2時間もかからないはずだし、工事も進めやすくなるはずだ。
1日使って俺とシードで道を整備していき、セバスチャンとジェイソンには館の掃除をお願いした。
帰りは館からできるだけスピードを変えずに走り、距離を測ってみる。
大体60kmくらいかな。
登山の時間を考えると、ダンジョンから山に入った方が早いかもしれない。
バイクを使った適当測量だが、簡単な地図を書いてみる。
森を東京として考えて、湖を皇居に例える。
我が家は大体国会の辺りで、館に至っては茨城県に入ってしまう。
東にあるタイター村で江東区の辺りか。
キャンプ場が西川口周辺っと。
めちゃくちゃ分かりやすいな。
湖の大きさは皇居のお堀より少し大きいが、それに当てはめて考えると距離感が掴みやすい。
明日は俺とセバスチャンの2人で館の内装工場に向かうが、2人ではやっぱり心もとないな。
トイレの下水道が入り口なだけに、ちゃんとパイプを通さないと臭いで誰も近づかないだろう。
やっぱり2人じゃキツイか。
トイレだけちゃんと作って、後は組合員が来てからにしよう。
水の供給も魔道具にするかパイプを通すか考えないといけないしな。
「儂を連れていけばいいじゃろう?」
「仕事があるだろ? 実質ここの人員をまとめてる訳だし」
「そんなもんザジに任せられるようにしとる。 重機の運転も教え終わっとるし、ガソリンさえ置いておけばええ」
「そうなのか。 じゃあグスタフも一緒に行った方がいいな。 ザジのところにはパーチュを行かせて勉強してもらおう。 後々組合が全部仕切らなくちゃいけないしな」
「組合の人員も増やすんじゃろ?」
「ダンジョンもあるし、増やして貰う予定だ。 来たらダンジョンの確認もしなくちゃいけないしな」
先に冒険者連れて行って開いてみようかな?
ヤバかったらもう一回閉めちゃえばいいし。
明日パーチュに相談してみるか。
パーチュも先に確認できるのであれば確認して欲しいと言うことで、腕利きを館に送って貰った。
こっちは先に内装工場しながら待っていれば、3日後に到着する予定になっている。
パーチュには湖の回し方を勉強するためにザジと組んでもらい、俺達はそのまま館へと向かう。
「そのうち車で行けるようにしとかないと、物資の運搬が面倒だな」
「組合員にも運転を教えるのですか?」
「出来れば風の魔道具を使ったエンジンを開発したいな。 コードさえ引ければ密閉されてても空気が出るんだ。 上手くやれば燃焼機関無し燃料タンク無しのエンジンが出来るかもしれない」
「面白そうなこと思い付くのぅ。 風で歯車をそのまま回すんじゃな?」
「馬力が出るかが問題だな。 水圧の方が馬力は出そうだが、路面がビショビショになるしな」
後はコストの問題もある。
ゴブリンの魔石で5日間空気を出し続けられるとして、2000円で何キロ走れるか。
多少高くても別にいいのだが、2000円で20リットルと考えて、燃費の悪い車で100km位か?
50kmで構わないから、スピードが欲しいな。
燃料の魔石は小さいから大量に持てるし、運転する人間なんて金持ちか企業以外ない訳で、ガソリンエンジンまでいけなくても構わない。
そこは後で勝手に研究してくれ。
3時間ほどかけて、館に到着した。
バイクで下水道に入ろうかとも思ったが、道の半分に水が流れていて落ちそうだったのでやめた。
側溝に蓋もつけないと物資の搬入が難しいな。
せめて猫車が自由に動けるようにしておこう。
駐車も出来ないし。
取り敢えずその日は計画だけ立てて、可能かどうか調べてみる。
「取り敢えずはトイレの設置じゃな。 水洗にするんじゃったら水はどうするんじゃ?」
「魔石で構わないが、出来ればダンジョン入り口の滝の上からパイプで持ってきたいな。 200m位だったらタンクが無くても繋がるだろうし、水を使うのはトイレとキッチンだけだ」
「取り敢えず滝に行ってみるかの」
下水道の向かう方向に行き、滝の上に到着すると、小さい小川が洞窟の天井に向かって流れている。
他に支流が無いところを見ると、この小川はずっとこの洞窟に流れていたようだ。
という事は下水道が流れる前は水没していたのか?
そしたらダンジョンも一緒に水没するんじゃないか?
もしかしたら外には最初から繋がっていたのかもしれない。
小川に太いホースを設置して、そのまま館にホースを引っ張ってくる。
山の斜面があるからホースはそのまま水道に繋いでもちゃんと水はでた。
後はトイレとキッチンに水道と便器を設置するだけだ。
ボットントイレの穴にパイプを通して外の下水道を通し、外の川に排水出来るようにする。
その上にトイレを設置して、水道を繋いだ。
下水道整備で着た服は臭くないが、全部処分。
これは気分の問題である。
結局この仕事だけで丸2日、初日を合わせて3日かかっている。
冒険者も今日到着する予定だ。
「後は家具だけ並べればいいか。 組合としてカウンターや倉庫なんかと、後は2段ベッドだけ部屋に並べておけばいい。細かい所は組合に任せよう」
「そうじゃな。 儂らはダンジョン探索の準備が先じゃ。 あの門はどうするんじゃ? 収納出来るとして、新しく門を付けるんか?」
「行ってみないとわからないな。 セバスチャンはここで冒険者を待っていてくれ。 俺とグスタフで工場が必要か見てくる」
「魔物が出るかもしれません。 私もお供致します」
「………………戦いたいだけだろ?」
「誰も護衛の為にお供するとは言っていません」
たしかに魔物が出るから来るとしか言ってないな。
3人の装備を整えて、ダンジョンの門を確認しに向かう。
入り口脇の池も調べて見ると、飲める水だしとても冷たい。
素材を冷すのには十分だな。
入り口の門は鉄製で、門とはいいつつ1枚で岩肌に固定されている。
収納をかけるしか開く事は出来なさそうだ。
セバスチャンとグスタフが門に銃口を向け、俺が門を収納する。
門と同じ大きさの洞窟がぽっかり空いたが、何か出て来る様子はない。
「セバスチャン」
「反応はありません」
3人で洞窟の中を進んで行くと、徐々に周りが薄暗くなって来るが、見えないという事はない。
壁に手で丸を作って当ててみるが、壁が光ってる訳でもなく、何が発光しているのかは不明。
ファンタジーや。
薄く光ってる中を進んで行くと、上りの階段が出てきた。
「上にいくつか反応があります。 しかし結構距離がありますな」
「………ゆっくり登っていくぞ」
グネグネと曲がる階段を上っていくと、少し広めのホールに出てきた。
ここに魔物はいないが、通路が3つに別れている。
階段を合わせて4つ。
取り敢えず魔物の反応がある方に向かおう。
選んだ通路を進んで行くと、魔物の反応もこちらに気づいたのかこちらに向かってきた。
その場で銃を構えて待ち受け、魔物が見えた瞬間に発砲する。
直ぐに魔物は倒れたので確認してみると、そこにいたのはゴブリンだった。
ゴブリンは徐々に消えていき、魔石と腰布だけが残る。
仕様は分かった。
一旦帰って、冒険者と合流しよう。