総本部掌握
アクセサリーがいっぱい付いた大型ダンプトラックに乗り込んで、魔物を牽いていく。
ミンサーにはでかいスピーカーを取り付けて、大音量で"ワルキューレの騎行"を流している。
ヒーローの登場っぽいでしょ。
セバスチャンは、足が速くて逃げる魔物をアサルトライフルで撃ってもらう。
ドビーは荷台に固定しておいた。
ジェットコースターを楽しんでくれ。
街を2周する頃には魔物も逃げていき、残ったのは動けなくなった魔物だけだ。
こんなもんでいいだろう。
門の前にミンサーを停めて、メガホンで街に開門を呼び掛ける。
「ミヤジマ支国の国王、ケン・ミヤジマだ。 組合総本部は俺を"ここでも"待たせるのか」
「ケン…ミヤジマだ……と………。 直ぐに門を開けろ!! 超超超超VIPだ!!」
アクセサリーが増えたミンサーでギリギリサイズの門をくぐり、案内にしたがって組合を目指す。
「うわぁ!! なんだあれ怖ぇ!!」
「ヒィィィィ!!」
「あれがミヤジマ王………………」
ばかでかい組合総本部の前にミンサーを停め、組合員に頼んでミンサーの掃除をお願いした。
俺はできれば触りたくない。
「ミヤジマ陛下。 本日は遥々ようこそおいでくださいました。 直ぐに総裁、並びに上の者を呼んで参りますので、談話室でお待ちください」
「分かった。 戦争帰りで疲れているから急いでこいよ」
「は、はい!!」
組合に入ると、ここでも数人の冒険者が整列して俺を出迎えてくれる。
やっぱり俺を癒してくれるのは愉快な動物たちのようだ。
分かっているね?
そうだ勧誘だ。
ジャックの1.75リットルをいくつか出して、冒険者に渡す。
アウェーだから多めに出しておこう。
友達を増やすんだ。
組合員に案内されて談話室に入ると、1分も経たずに息を切らせたジジイが入ってきた。
「誠にすみませんでしたぁ!!」
「分かっているなら早く進めてくれ。 魔法国はもう口出ししてこない」
「はい!! 直ぐにでも!!」
話している途中にも何人かジジイが現れて、次々に整列していく。
多いな。
場所を移すか。
広め会議室に場所を移して、たまっている仕事の指示を出していく。
「まずは魔石の売買だが、これは魔道具が広がると同時に値段が正常に戻るはずだ。 売らずに貯めておけ」
「ヒールの魔道具でですか?」
「他にも魔道具は作っている。 一般に使うにはまだ値段が高いが、冒険者は荷物を大分減らせるようになる。6日ぶっ続けで使用できるんだ。必要な時だけ使えば1月は持つ。 供給量から考えればゴブリンの魔石でも30f以上にはなるな」
「2倍………いやミヤジマ陛下が買い取る前の三倍か………」
「貯めておく気になったか? 次にヒールの魔道具だが、できているものは俺の収納に入っている。 もう500ぐらいはあるから買い取れ。 1つ30fでかまわない」
「それは安すぎです!! 魔道具なんて普通は10万f以上するものですよ!?」
「言っとくが、作るのは簡単だぞ? うちでも引退した冒険者が作っている。 これから一般に普及すれば、必ず人は足りなくなる。 引退した冒険者で来たい人間はどんどん連れてこい。 仕事なら準備してやる」
「そこまでですか………。 かしこまりました。 すべて購入させていただきます」
「ダンジョンについてだが、もう道は敷いてある。 あとは入り口を開くだけだが、腕っぷしの立つ組合員を寄越せ。 強い魔物が出没する地域にあるから、それぐらいできる人間が必要だ。 しかしまだどういう素材が手に入るかはわからない。もしかしたら何も残らない可能性もある」
「分かりました。 出なかったらまた考えます。 伝説だと思っていたダンジョンが本当にあるとは………」
どうやらダンジョンの話を知っている人間もいるようだ。
昔は冒険者もそれなりに多かったが、ダンジョンの閉鎖と共に稼げなくなって廃業した冒険者が多かったらしい。
そのうち組合も縮小、消滅していき、新しく組合を起こした時にダンジョンについても知っている人間がいなくなったようだ。
「手引き書はさっさと広めろ、あと作る人間も必要だ。 手さえ動けばできる仕事だ。 物は見たんだろ?」
「拝見致しました。 組合員手引き、冒険者手引き、どちらも直ぐに広めます。 して料金は………」
「材料費と人件費が出ればいい10fで十分だ」
「それも安すぎます!」
「新人冒険者にいくらで売るつもりだ? 貧乏でも買えるようにしておかなければ意味がないだろ。 新人を育てることを考えろアホ」
「………………おっしゃる通りです」
「ヒールデラックスは貸し出しだ。 電池も切れた物と交換制にする。 間違っても一般に出すなよ? 魔道具とくっつけたら死人が出るぞ?」
「かしこまりました。 徹底致します」
「あと魔道具をかき集めろ。 俺の研究に必要だ」
コンコン!!
「………失礼します」
「どうした? 会議中じゃぞ? それともまた魔物でもでたんか?」
「いえ、ミヤジマ陛下の魔道具の馬車に、魔物じゃなくて人間の死体もついているのですが………」
「………………」
「すまん。 戦争帰りでそのままだった。 丁重に埋めるか、魔法国に返すかしてくれ。 経費はこちらで持つ」
「かしこまりました」
「今度は3人で戦争してきたのですか?」
「いや2人だ。 こいつは魔法国で拾ってきた」
「2人………………」
こんなもんか。
もうぱっぱと帰ろう。
組合のホールに行くと愉快な動物たちが見送ってくれる。
よし、総本部も制圧したな。
魔道具を売却して、綺麗になったミンサーを収納する。
まだ血や肉片はついてるが、これくらいはこっちで綺麗にしよう。
魔物の素材やなんか寄付するから冒険者に餌でもあげてくれ。
細かいことは手引き書に書いてある。
ハイラックスに乗り込んで、出発しようとするが、なついた動物が何匹かついてきたいらしい。
荷台に6人乗せて、ようやく出発する。
武装した人間を乗せたハイラックスとかどこのテロリストだよ。
テレビで見たことあるぞ。
道中は人数が多いからか、飽きることなく家に帰れた。
基本飲んでるだけだが、冒険者は愉快でいいな。
俺も下級冒険者だけど。
ドビーは相変わらず口が悪くてたまにイラッとするが、そういう時はハイラックスの屋根に張り付けにしている。
さすがはジェイソン2号だ。
張り付けが様になっている。
もしかしてその道のプロかもしれない。
あー風呂入りたい。