懐かしいな
「じゃあちょっと悪い子叱ってくるわ」
「ホッホッホ。 叱ってくるで更地にするんですな。 痛く厳しい罰ですな」
「優しくしたら他が真似しちゃうでしょ!!」
バイクで西の王都側に向かって出発する。
必要なことは昨日のうちに終わらせたし、金もガッツリ置いてきたので問題はないだろう。
馬車でひと月だとだいたい1000kmくらいかな?
まあ2日3日ぐらいで着くか。
一回冒険者組合の本部にも顔だしていこう。
ゴリラに総本部との話を進めてもらわないと困る。
バイクで来るのは初めてだが、意外と止められること無くすんなり入れた。
そういえばジェイソンたちはバイクだったか。
前のような凶悪な装飾は無くなったが、代わりに凶悪な武器がついた。
まあこっちの方がたち悪いな。
組合に入るとまた何人かの冒険者がシュバッと起立して俺たちを出迎える。
ご苦労様。
ご褒美をあげて、ちゃんとみんなで分けるように伝える。
「ワイトさんはいるかい? ケンが激オコだって伝えてきてくれ。 直ぐに降りてこないとカムチャッカインフェルノだ」
「は? まぁ………伝えてきます」
「流行るかな?」
「無理でございます」
野生の動物たちと戯れていると、ゴリラ本部長がすごい勢いで降りてきて、俺にスライディング土下座をかましてきた。
意外と動き速いね。
「この度は………」
「いいから、総本部と話進めておいて。 俺が魔法国と話つけてくるから。 終わったら直ぐに動けるように段取り組んでおいて」
「………………可能なのですか?」
「可能もなにも今回は縛りプレイで2人で行ってくるよ。 楽しみだなセバスチャン!!」
「左様でございますな!! ハッハッハッハ!!」
「………………かしこまりました。 直ぐに総本部に連絡致します」
「総本部のトップにも、終わったあとまだモタモタしてたら全員ハゲにするぞって伝えておいてくれ」
「ハッ!!」
「じゃあ俺このまま魔法国乗り込んでくるから。 魔法国が何言ってきても乗るなよ!! 全部こっちと話せと伝えておけ!! 逆らえないとか弱みを握られてるとか適当に言っていいから」
野生の動物たちとお別れして、組合を出ていく。
全員で見送らなくても大丈夫だぞ。
ご褒美ならあげるから。
そのままバイクで国境を越え、そのまま燐国に入る。
さすがに国境は素通りできず誰何されたが、魔道具に乗っている時点で普通じゃないからな。
証明を見せただけで通らせてくれた。
ここからこの国を横断した反対側が魔法国なのだが、総本部はこの北の国にあるらしい。
ここからもう600kmほど進んだところに魔法国の国境があり、そこから都までもう150km。
向こうが俺と同じころに出発したとして、落ち合うのは魔法国内だな。
もう100kmぐらい進んだところで、今日はキャンプにする。
木にタープを張って、下はそのままマットを敷いただけ。
なんか懐かしいな。
「昔を思い出すな」
「1年も経っていません」
「………………」
焼き魚と日本酒で夕食にする。
最近酒を飲む時にあまり食べないようになってしまった。
シメだけガッツリ食べるけど。
塩をキツめに振った焼き魚だけでも十分つまみになる。
焼き魚と駒を交互につまみながら夜をすごす。
駒が魚の油で汚れてくると、セバスチャンが濡れティッシュで拭いてくれる。
「おい、拭くフリして移動すんな」
「グヌヌ………………」
油断も隙もねぇな。
まあ移動されても勝つけど。
「今日は少し距離延ばして魔法国の国境近くまで行くぞ」
「かしこまりました」
バイクで長距離もキツイからな。
ちょっとスピードを上げていこう。
やっぱり未舗装の道で飛ばすのは難しく、50も出ればいい方だ。
ナビゲーター2台をシードとケビンが使っているし、リーフはジェイソンが食品輸送に使っている。
NーONEも納品のために湖に置いてきたので、今手元には60kmしか出ないダンプとバイクしかない。
あまり車ばかり買っても邪魔だし、この後使うことが無いから勿体ないよな。
金は問題ないが、自分で使うとなるとちょっと気が引ける。
一応道ではあるので50kmぐらいのスピードで走っているが、おしゃべりもできないし両方常に運転しているので交代で運転というのができない。
やっぱり車買ったほうがいいかな?
「車の方が楽だよな」
「それはそうでございますが、買われますか?」
「どうしようか迷ってる。 帰ったあと使えないしな」
「使える車を買われては?」
「使える車………。 荷台付きトラックだったら使えるか」
ということでハイラックスを購入。
ほら、俺ら一応テロリストだし形から入った方がいいよね。
狭いけど後部座席もあるし、これなら雑に扱っても良いしね。
早速運転してみると、やっぱりこっちの方が楽だ。
スピードを出した時の安定感が違う。
これならもっと飛ばせそうだ。
「今年は2回戦争することになるかもな」
「あと1月半ございます。 欲張ればもう一回できるのでは?」
「増やそうとするな」
「帰りに冒険者総本部に寄って帰るというのも良いですな」
「それは賛成だな。 一回顔でも拝みに行ってやるか」
3時間ほど運転して、セバスチャンと交代する。
俺は窓を開けて、タバコを吸いながらテレサ・テンの蘇州夜曲に耳を傾ける。
渋い。
おっさん臭い。
walmartで日本の歌手を探していく。
海外でも有名な歌手って意外と少ない。
ワンオクとかクロスフェイスのCDは売ってるが、セバスチャンが困惑するな。
ここはNUJABESのアルバムでも流しておこう。
もう夜に差し掛かるぐらいで国境近くに到着する。
運転で疲れて飯を作る気力が湧かないので、適当にwalmartでサンドイッチとつまみを買って車内で酒を飲む。
学生のころこんなことやってたような気がする。
「懐かしいな」
「私は存じ上げませんが」
「………………」
この俺のノスタルジーを共感してくれる友はどこぞにおらんのか。
「取り敢えずここで使者とやらを待つか。 それとも乗り込むか」
「時間も無いですし、途中で拐ってもよいのでは? 荷台に積めば6人くらいなら大丈夫だと思いますが」
「そんな使者を荷物みたいに言うのはよくないぞ。 荷物に失礼だろ」
「そうでしたな。 馬車でも車に繋ぎますか?」
「スピードに耐えられなくて大破するぞ。 別に縛って荷台でいいよもう」
明日豪華な馬車を見つけたら取り敢えず縛って都まで運んでやろう。
使者さんも仕事が早く終わって良かったね。
2人で乗り込んで大丈夫かな?
まあなんとかなるか。
マガジンに弾を込める内職をしながら、ファイアボールやストーンボールが飛んできた場合の対処を考える。
目で追える以上、そこまでスピードは無いが、魔道具なんかを連射されたらキツイかもしれない。
やっぱり戦闘はできるだけ控えて、テロでもやって住民を外に出してから考えるか。
取り敢えず都の外に拠点だけ作っておこう。
向こうの魔道具技術がどれくらいか分からないが、遠距離ならこちらの方が有利だ。
破壊工作で勝つのが一番ベストだな。
汚く行こう。
勝てばいいのよ。




