盗掘者
「めぼしい物はないな」
「いや、金ぴかの装飾品だらけじゃないですか!?」
「魔道具とか本とか探せ!! 金銀財宝なんかなんの役にもたたん!!」
「本ありました!!」
「でかした!!」
冒険者が見つけた本は、どうやらここに住んでいた人間の伝記のようだ。
ちょっと見てみよう。
住んでいたのは吸血鬼の一族。
勇者が誕生して、資源であるダンジョンを潰しながら魔王が倒されてしまった歴史が書いてある。
ダンジョンも魔族もあったのね。
勇者がダンジョンを潰して回ったせいで、魔石の値段が高騰し、それに伴って魔道具の普及率も低下、魔道具を使った工場なんかも倒産が相次ぎ、各国の経済が低迷して失業者や餓死者が続出したらしい。
完全に害悪だな。
吸血鬼は魔王軍を引退し、家族と使用人を連れて未発見だったダンジョンの近くに居を構えて生活していたと。
それがここ。
しかし、魔道具を作れる人間が居なくて簡単な生活道具しかなく、生活は不便を極めていたそうだ。
魔道具はすべて勇者を派遣した国が独占。
他の国には使うことすら許さず、それを破ったら勇者を使って国ごと潰していたらしい。
子孫を残すにも家族以外の吸血鬼はほぼ絶滅し、最後はおじいさん1人でこの館を管理していたようだ。
魔道具は俺がパクっていくから安心して旅立ってほしい。
俺が組合と一緒に普及させ、独占し、利権を握っておく。
安らかにくたばっていてくれ。
「魔道具あるみたいだぞ!! トイレの中までさがせ!! ジェイソン!!」
「イヤァァァァァァ!!」
とりあえず装飾品も片っ端から収納していこう。
もしかしたら魔道具かもしれない。
右翼はざっと見終わったので、細かいところを冒険者たちにお願いして、左翼の様子を見に行く。
造りは左右対称のようだが、右翼の方が部屋が大きい。
寝室がいくつか並んでおり、一番手前に書斎があって、その奥に寝室がならんでいるようだ。
「なにかあったか?」
「結構魔道具はあったが、どれも明かりと水の魔道具じゃな」
「俺が作った魔道具の改良に使えるかもしれないから全部持っていくぞ」
「分かった。ここら辺の本はどうするんじゃ?」
「もちろん持って帰る」
経営学や数学、誰でも分かる魔道具なんて本もある。
これは魔道具を放棄してでも持って帰らないとだめだ。
まあ全部持っていくけど。
そこから寝室を回って明かりの魔道具を回収。
各部屋に水が出る魔道具までおいてある。
グヘヘ。
一番奥の寝室には、白骨化した吸血鬼の遺体がベッドに横たわっていた。
それも回収して、部屋に置いてあった杖や家具、指輪なんかも回収しておく。
鑑定の結果、この杖もストーンボールを発射する魔道具のようだ。
これで石の模様もゲットした。
全部屋見終わって一回エントランスホールに集まりこの後の動きについて相談する。
「もういい時間だし今日はここで一泊するぞ。 冒険者たちはダイニングの埃なんかを掃除しておいてくれ。 俺は料理の準備に入るから、ほかの皆は隠し部屋や屋根裏、地下室がないか調べてくれ」
「ちょっといいっすか? トイレ調べて気づいたんすけど、 なんかトイレから水が流れる音が聞こえるんすよね」
「分かった。 グスタフと一緒に調べてくれ。 もしかしたら下水に水を引いているのかもな」
「そうなると地下室もありそうじゃな」
ダイニングルームの床ですぐに料理を始める。
石だし土足だしべつにかまわないだろう。
冒険者に家具の残骸を片付けさせて、床にマットと寝袋も設置した。
今日の夕食は雰囲気を出すためにパンとスープに鹿肉のステーキ。
ワイルドだろぉ?
スープもトマトコンソメに根菜とウインナーをいっぱい入れた絶対外さないパターンのやつ。
外も日が沈んで、より一層世紀末の感じが出てきていい。
ゾンビ映画のワンシーンみたい。
バタン!!
「旦那様!! いきなり館に反応が出てきました!!」
「いきなり? とりあえず全員集めろ!!」
トイレにいたジェイソンたちも集合して、全員で一番近い反応の元に向かう。
談話室の中に反応があるみたいだ。
こっそり開けて中の様子を窺う。
ゴーストだな。
白い布から手だけ生えた物が、ふわふわと中を浮いている。
サプレッサー付きのハンドガンでこっそり撃ってみる。
カチン。
通り抜けやがった。
こういう時は光属性と相場が決まっていたな。
デラックススーパーサイクロンヒール砲をゴーストに向けて照射する。
ギャァァァァ!!
「よし、消滅したな。 みんなでゴースト狩りにしよう。 この広さならすぐ終わる」
ほかのゴーストも、白い布から頭だけ生えていたり、足だけ生えていたり、ナニだけ生えていたり。
意外とバリエーションが多い。
ドロップ品は魔石のみだけど。
とりあえず5体ほどデラックススーパーサイクロンマグナムヒール砲で成仏させ、反応がなくなったので、みんなで晩御飯にする。
「どうだ? 地下はありそうか?」
「多分下水道が通っとるじゃろうな。 しかも音の大きさを聞くと結構広そうじゃ。 反響が結構な大きさで聞こえとったからの」
「どっかに地下室への入り口があるはずだ。 見つからなくても場所が特定できれば穴でも掘れるんだがな」
「トイレを破壊して進むのは嫌じゃからな」
夕食後、メジャーを使って家中を測量していき、1ヶ所だけ不自然な空間を見つけた。
その周辺を探してみても、なにもスイッチになるような物は見つからない。
ハンマーで叩いて壁が一番薄い場所を見つけ、ピッケルで壁ごと破壊していく。
なんとか1人通れるぐらいの穴を開けて、今日は就寝する。
ダンジョンも近くにあるみたいだし、やることが多いな。
1週間で帰れるかな。
帰りも2日かかるとして、探索できるのは後3日。
まあ発見だけだったらいけるかもしれないな。
屋根裏や隠し部屋も探さないとな。




