冒険に行こう‼
「分かるか? 肉の供給が足りない以上、家畜の生産だって利権だし、魔道具が広まれば魔石の供給だって組合が握っている。魔道具だってここで生産するし、調味料だってこの湖で生産する。どれだけ作り方が広まったって、生産地には変わりないんだ。ちゃんと利益は出てくるはずだ。こいつらは別に冒険者に売ったって構わない。地産池消じゃないが、全部自分たちで回したって構わないんだ」
「組合からでもちゃんと利益は出るってことですね」
「下がったって家畜を食えばいいし、調味料だって普通の麦に育てればいい。魔道具なんてこの値段で出せる奴がいるのかさえ疑問だ。魔石に限っては組合以外に卸せない」
「普通の村に戻しても食べていけますね」
「そういうことだ」
今日もガゼボでパーチュに講義を行なっている。
共産主義は、会社のみで成り立つものだと俺は思っている。
給料制、時間固定、福祉や補助。
これが国じゃあデカ過ぎて難しい。
でも組合を会社とすれば問題はなくなる。
俺は湖の産業の利点や弱点についてパーチュに説明していく。
これが終われば本格的に隠居生活だ。
あとはご意見番として生きていける。
金はあるし、毎日風俗いって暮らしてやる。
転移したってぜんぜんモテねぇじゃねえか。
ラノベなんてウソつきだ。
最近じゃあ風俗で変態な衣装ばっかり持ってる金持ちなんて言われてるらしい。
コスプレぐらいオプションにつけとけよ。
「そろそろ彼女ほしいな」
「17ですし、そろそろ結婚するべきでは?」
「17なんて子供だぞ? 25ぐらいでいいだろ」
「子供に見えません。というか子供からこんな講義は普通聞けません」
「てめぇ反抗期なめんなよ? 明日には魔王になってるかもしれないぞ?」
「ホッホッホ。魔王が可哀想ですぞ。旦那様」
言いたいこと言いやがって。
俺なんてただの卸しじゃねえか。
………卸しでいいんだよな?
むかついたから町で爆買いしてこよう。
海賊料理に使う海鮮が切れそうだ。
セバスチャン、アマンダ、パーチュを連れて町に乗り込む。
蟹、エビ、貝なんかを片っ端から買っていき、収納にしまっていく。
全部walmartで買えるが、やはり生鮮食品は新鮮なほうがいい。
冷凍だと塩茹でしたあとの風味が違う。
海もきれいだしね。
「どんだけ買うんですか?」
「仕入れだ。金が余って困ってる」
「大量の魔石を購入してるのに、まだお金あるんですね」
「いっただろ? 売るあてがあるんだ。ちゃんと利益は取っている」
もう数えてすらいないが、ポアソンには100万f渡してあるし、今の手持ちも370万fある。
今でも毎週魔石をネットで販売しているので、お金は増える一方だ。
もうネットで買うものもあまりないし、毎日宴会でも開いてやろうかな。
「旦那様、骨董品など買われてはいかがですか? 高いものでも買えば、多少は消費できるかと思います」
「よし、目についたもの片っ端から買うぞ」
全員で骨董品を見に、そういう店が集まっている通りを練り歩く。
壺なんかの陶器はまだ白磁器がないので、そこまできれいじゃない。
基本的に絵画や本、燭台なんかの高いものを中心に見て回り、収納で鑑定してから購入するが値段はあまり変わらず、少しの上がり下がりがあるだけだ。
収納使って最初からここで転売ヤーしてればよかった。
「古文書のようなものがほしい。もしかしたら魔道具研究で使えるものがあるかもしれない」
「そっち関係の本は、すべて魔法国が買い占めています。見つけるのは難しいでしょう」
「魔法国乗り込んでやろうかな」
「お供しますぞ」
あるのは昔の貴族の日記や仕事なんかのハウツー本ばかりで、ろくなものは見つからない。
魔法関係の本もあるが、模様については何も書いていなかった。
というかほとんどが数をこなせば新しい魔法が使えるようになるとか書いてある。
俺は全然あがってないけど。
どこにも魔道具なんて置いていないし、金ぴかのインテリアなんて買ったところで意味がない。
骨董品なら何か見つかるかと思ったんだけどな。
「魔道具って発掘とかはされないのか?」
「その一大産地が魔法国です。あそこにはこの大陸で一番大きな遺跡がありますから」
「ダンジョンか?」
「ダンジョンってなんですか?」
「地下洞窟で、階層になってて魔物が出る奴」
「住処としての洞窟はたまにありますが、階層になってたりはしませんね」
「つまんねぇの」
もうちょっとファンタジー色強めにしとけよ。
転生者へのサービスというものがなってないな。
妖精とかダンジョンとか聖剣とか魔王とかいろいろ足りないだろ。
まああってもめんどくさいから関わらないけど。
骨董品も飽きたので、そろそろ帰るか。
絨毯や金の指輪なんていらないしな。
やっぱりどこかで模様については調べてもらおう。
組合に頼めば何かしら手がかりは見つかるかもしれない。
家に帰ってくると、さっそく組合に向かう。
一番簡単な光と発動の模様を提出して、これが書いてある物に1万fの懸賞金をかける。
あと遺跡や迷宮の発見にも懸賞金をかけておいた。
「山の途中に建築物? それ本当か?」
「はい。 冒険者が発見したみたいで報告が上がってきています」
「一回調査してみないとな。 腕利きを何人か集めてくれ。 俺も調査に行ってくる」
「かしこまりました。 いつまでですか?」
「明後日出発したいからなるはやでよろしく」
冒険者が遺跡らしきものを発見していたようだ。
もっと早く教えに来いよ。
魔道具のヒントが見つかるかもしれない。
「儂も行くのか?」
「山は魔物が強いからな。 できればグスタフとシード、ジェイソンにも参加してもらいたい」
「明日引き継ぎすれば1週間は大丈夫じゃと思うが、食糧はどうするんじゃ?」
「ナビゲーターを置いていくから最悪ケビンに町に買い出しに行ってもらう。1週間ならぎりぎり持つと思うけどな」
「本当にぎりぎりじゃな」
「冒険者も連れていくし、急いで行ってちゃっちゃと終わらせて帰るぞ」
明日は1日準備と引き継ぎにあてて、明後日早朝から出発する予定だ。
明日は冒険者にも会わないといけないしな。
遺跡とかワクテカじゃないか。
行く以外の選択肢が見つからない。
翌日、組合で冒険者から詳しい話を聞いてみる。
どうやら、俺がムカデさんを倒した場所の近くにあるようだ。
ムカデさんもう出ないでほしいな。
タフすぎてつらい。
ついてくる冒険者は5人。
見つけたチーム丸ごとこっちについてきてくれるようだ。
腕も今組合にいる人間のなかでは一番いいらしい。
とりあえず明日の朝出発するので、今夜までに準備を終わらせてうちに泊まるように伝える。
「やっと旅人亭の部屋とれたのに………」
「じゃあ取っとけ、1週間分ぐらいこっちで払ってやる。明日の出発にさえ間に合えば別に旅人亭に泊まっててもいいぞ」
「いえ、ケンさんの家に泊まったほうがお酒がいっぱい飲めると思うので、泊まります」
「行きはある程度自重するが、帰りは飲み放題だぞ」
「の、飲み放題だと………?」
「食い放題の飲み放題、ウイスキー付きだ」
モチベーションも上がったようなので、そのまま家に帰って装備の確認をする。
対人じゃないので口径も大きくていいし、グスタフとジェイソンのショットガンはスラッグ弾にしておこう。
シードは対物とAR10があるし大丈夫
俺とセバスチャンはAR556だけど、弾だけいっぱい持っておけば大丈夫だろう。
冒険者たちには悪いが、最速で向かわせてもらおう。
ダートでキャンプ場まで行って、当日中には山の下までは行きたい。
そこで1泊して、翌日には遺跡に到着する。
ドラゴンとかいたらどうしよう。
777fダンプでいけるかな?
全長10mのダンプで自爆特攻。
いける気がしてきた。




