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商売してみた

次の日朝ごはんとして昨日干した魚を焼いて出してみた。久しぶりの焼き魚である。網も焼き台も無いので、串を打って焼く。

魚から水分が炭に落ちてジュゥという音と共に、魚の焼けるいい匂いがする。これだけで米が食えそうだ。



「ふつうの干物よりもしょっぱくないな」


「まあ保存用じゃないからな」


「じゃあなんで干すんだ?」


「味を凝縮させるためだよ」



一夜干しなんてもって3日が良いところだろう。もっと干してもいいが、身が固くなりすぎてスープの出汁ぐらいにしか使えない。



今日はパンではなく麦粥にした。そっちの方が干物に合うと思ったし、個人的にパン以外の物が食べたかった。



ランチの仕込みを手伝い、双子と部屋の片付けをしたところでお客さんが来た。ランチの時間はまだである。

宿泊のお客さんだ。



受付をして、部屋へ案内する。ついでにどうしてここに決めたのか聞いてみた。



「まだ下級冒険者でね、安くて飯がうまいって他の冒険者にオススメされたんだ」



冒険者さまさまである。これだけ噂が広まれば、残りの4部屋はすぐ埋まるだろう。


ランチタイム中にも2人組の冒険者が部屋を取り、宿屋としてギリギリだが一応利益が取れるようになったらしい。



ランチが終わると、おやっさんが人をリクルートしに行く、その顔では拐いに行くと言われた方が納得できるが。



おやっさんが戻ってくるまで、これからの予定を考える。

冒険者として稼ぐにしても下級のクエストではあまり稼げない。

商売するにしてもネットショッピングの商品を出せば問題が起こりそうだし、中級のパーティーにでも入れてもらえればもう少し稼げるだろうが、できれば1日100fくらいは稼ぎたい。



目指すスローライフをするには、面倒事は全力で避けていきたい。

トマトや唐辛子の種は知らない人間からすれば無価値だし、ナイフや斧はステンレス製のテフロン加工済みでありこの世界で出すには危ない。

サイトを見て売れそうなものを探す。

まずメタルマッチ、火打ち石に比べれば使いやすいしありだと思う。

次にポンチョ、この世界では革のマントが主流でこれも行けそうである。

あとは折り畳み式アルミストーブぐらいしか出せるものがない。



「今夜にでもおやっさんに見せてみよう」

今夜見せるためにメタルマッチとアルミストーブを買っておく。メタルマッチ20f、アルミストーブ14f。残金529f




おやっさんが若い女の人を連れてきた。まさか本当に拐ってきたんじゃないだろうな?

この女性は名前リーファさんといい、なんと組合のおばさんの娘だそうだ。

とりあえず今夜ディナーから働くようで軽く基本を教えることになった。



「リーファさん! そこのテーブル片付けて!」


「はーい!」



リーファさんは飲み込みも早く、美人でお客さん受けもいいので直ぐに俺は必要無くなり、問題があったときだけ対応する形になった。双子とも仲良くやっていて、見ているだけで心が癒される。双子かわぇぇ…



日本のようにサービスにうるさいこともないし、これなら明日からでも冒険者に戻れるな。

リーファさんにセクハラなんてしようものなら、おやっさんが一睨みするだけで収まる。

元冒険者はだてじゃない。



営業終わりでおやっさんに、今日で手伝いを終えることを伝える。



「そうか。本当に助かった。これは少ないが受け取ってくれ」


そう言って硬貨が入った袋を渡される。


「じゃあこれで泊まれる分だけ部屋をお願いします」



断ろうかとも思ったが、結局ここに泊まるつもりなのでそのまま宿泊代に回してもらう。

ついでに、メタルマッチ、ポンチョを見せて売れるか聞いてみる。

アルミストーブも出そうと思ったが、荷物の量的に不自然なので小さい物だけに留めた。



「これは楽だな、家にも1つ欲しい。このポンチョ? だかこれもマントより小さくて冒険者なら欲しがると思うぞ」


「どこに売ったらいいと思う?」



そう言って聞いたのは、俺が下着やらを買ったあの店だった。



翌日、昼前に店にやってきた。ブロンズ商会というこの店は、昔からこの地でやっているようで、住民からも冒険者からも頼りにされている。

さっそく従業員に事情を話し、誰かと商談できないか聞いてみる。

ちょうど代表の息子がいるそうなので、そのまま商談という形になった。



「はじめまして、私当商会副会長のロバートと申します」


「はじめまして、旅の冒険者をやっております。ケンです」


「それで、当商会に販売したい商品とはなんでしょうか?」



俺は営業なんてやったことないが、とりあえず商品の説明を行う。



「ふむ…こちらのメタルマッチとポンチョはいくらの買い取りをご希望ですか」


「メタルマッチは50f、ポンチョは150fです」


下見した火打ち石は10f、マントは200fだった。マントは撥水性が落ちるたび、蝋を塗ってまた撥水性を上げるような形だったので、布マントでもいいようだが、ヒラヒラしてる分革より破けやすく、貴族でもない限り革が普通だと教えてもらった。



「ちょっと安いとは思いますが、当商会としては損はない話なので、その金額でお受けしましょう。いくつほど卸していただけますか?」


言い値がそのまま通ったことに驚きつつ、メタルマッチ20個、ポンチョ2着をこの後持ってくることを伝える。


合計で仕入れが500f、販売価格が1300なので、800fの儲けである。やっと転生時よりも上の金額を稼ぐことができた。

宿に戻り、急いでそれらを購入し、麻袋に全部入れて商会に戻る。今キャンセルされたら残金29fしか残らない。本当にギリギリまで仕入れたな。



商会で商品を渡し、お金を受けとる。やけに軽いなと思ったら銀貨が13枚入っていた銅貨じゃないし軽くて当たり前である。


帰りにパンツをもう一枚買い、布切れ大1枚、小さい袋に入った塩も買う。

装備の棚を見ると、ブーツも置いてあり、ネットでブーツを買っても問題ないかもしれない。


残金1301f。俺はスキップで宿に戻った。

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