Chapter:0 〜Prologue〜
2008年某日、深夜。
「ふぅ…。」
と夜空に向けて溜息を吐く。
今日も悪友の光と遊び、また帰りは深夜になってしまった。
明日は休みだから、遅くまで遊んでもあまり問題はないのだが。
光とは、いつも待ち合わせに使っている駅で別れ、俺は今から一人で歩いて家に帰る。
駅前から商店街を抜け、裏路地に差し掛かろうとしたとき、
「こ、困ります…。」
と、声がした。
路地に入ると、数メートル先で3人があれこれやっている。
2人は男で、1人は女。
「いいじゃーん。これから俺たちと遊ぼうよ〜?」
「そーそー。楽しいとこ連れてってあげるからさぁ。」
男2人が言った。
「でも、もう家に帰る時間なので…。」
2人に囲まれた女が言った。
「そんなことないよー。まだまだ夜はこれからじゃん!」
成程。
どーやらあの男AとB(仮)は、あの女の子をナンパしているらしい。
それにしても、人通りの少ないこの裏路地でナンパか。
まぁ、俺には関係ないか。
そう思ってその集団の前を通りすぎようとしたが、
「ん?あ、お前ちょっと待てよ!」
Aが言った。
俺のことか?
いや、違うよな、俺はあんな奴らと面識ないし。
「お前だよお前!」
だが、Aは明らかに俺を指差している。
「何?」
指名されてはしょうがない、俺は立ち止ってAたちのほうに向きなおった。
「あのさー、悪いんだけどお金貸してくんない?今からこの娘と遊ぶのにお金なくてさー。」
と言って肩を組んでくるA。言葉とは裏腹に、悪びれる様子など皆無。
香水の匂いがキツく、非常に不快だ。
つーか、いつ遊ぶの決定したんだ?
さっきの様子じゃ、その娘は嫌がっていたようだが。
改めてナンパされていた娘を見る。
年は俺と同じくらいで、結構可愛い。
まぁ、ナンパされるほどだもんな。
といっても、やはり俺には関係ない。
「金が欲しいなら働けば?俺、今帰るとこだから。んじゃ。」
俺がそう言ってAの腕を振りほどき立ち去ろうとすると、Aが俺のほうに寄ってきた。
「いいから金出せっつってんだよ!」
と言って、俺の背中を蹴った。
俺はそのまま地面とキスする破目になったのは言うまでもない。
「ったく、最初からおとなしく金出さねぇからだよ。」
と言って、Aはハハハと笑っている。
「おいおい、いつもみてぇにやり過ぎんなよ〜?」
といいつつBも笑う。
俺は無言で立ち上がり、服の汚れをパッパッっと掃った。
そして、そのまま何事もなかったかのように立ち去ろうとする。
だが、今度はAが俺の胸倉を掴んだ。
「てめぇ!金出せつってんのが判らねぇのか!?」
と言って、掴んだ手に力を込める。
「何だよ、折角人が穏便に済まそうとしてるのに。」
俺が言うと、
「ああ!?」
と言ってAは手の力をさらに強くした。
「…うぜぇな。」
俺はそのままノーガードのAの鼻に頭突きをお見舞いした。
「ぐぁっ!」
と悲鳴をあげて、Aは俺を掴んでいた手を話し、地面に倒れた。
「てっ、てめぇ!」
と言って、女の子を逃がさぬように引き止めていたBが俺のほうに走り寄って来る。
走る勢いそのままにパンチを繰り出したBだが、モーションが大きすぎてかわすのは他愛もなかった。
そのままBの鳩尾に一発お見舞いし、蹲ったところに蹴りを入れて、Bはノックアウト。
そして、鼻血を垂らしながら向かってくるAの胸倉と袖口を掴んで、投げ飛ばし、Aもノックアウト。
俺は乱れた服を直して、チラっと女の子を見る。
どうやら何が起こったのかイマイチ判っていないらしい。
だがすぐに我に帰り、俺の目の前に寄ってきて、
「あ、有難うございました。」
と深々と頭を下げた。
結構礼儀正しいらしい。
「別にアンタのためにやったわけじゃないよ。とりあえずもう夜も遅いし、さっさと帰った方が身のタメだよ。」
と言って俺はまた歩きだした。
「あ、あのっ!せめてお名前だけでも…。」
後ろから声がしたから、俺は立ち止った。
「沖田 翔。市立高校に通ってる高校生。んじゃ、俺は帰る。」
そう告げて、再び家に向かって歩きだした。
「おきた…しょうさん。」




