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ep4・登校する、呼び出される。

ブクマ評価感謝です。

 翌日学校へ到着すると、いつも通り、誰とも挨拶をかわさず席に着く――はずだった。


「あっ、おはよう。コウくん」


 道中そう声をかけてきたのは満面の笑みをうかべるマヤさん。

 これに際しては思わず動揺してしまう。


「お、おはよう」


 普段一人でいる冴えない奴。

 そんな俺に突然挨拶をしたマヤちゃん。


 これだけなら、クラスメイトからは特に何も思われなかっただろう。

 思ったとしても「あ、喋った」と、むしろ俺に対して意識が向く。


 マヤちゃんのコミュ強っぷりは、それほどなのだ。

 冴えない奴をあだ名で呼ぶなんて、それほど気に止めることではない。


 が、こんなことを言っているということは、それだけでは済まなかったということ。


「今日は一緒に帰ろうね」


 刹那、空気が凍る。


「あ、え、あ、う、うん」


 何とか言葉を絞り出すとマヤちゃんは嬉しそうに微笑んだ。


「良かったぁ。昨日振られちゃったから今日は朝一番に言おうって決めてたんだぁ」


 のほほんとしている。

 マヤちゃんだけが、のほほんとしている。


 ここで一つ、後で知ったマヤちゃんの噂話をしよう。

 曰く、マヤちゃんは放課後は女子とたまに帰る程度で、それ以外は全て断っているのだとか。


 当初は他校に彼氏が……と疑われたものだがマヤちゃんの口から「母子家庭だから、家の手伝いをしている」と否定の言葉が出たため、男子達は酷く安堵したとかなんとか。


 これを『あわや大惨事、浅間ヶ原の戦い』と言うらしい。


 考えたやつは相当の馬鹿だ。


 まぁ、とにかくそんな逸話を残すマヤちゃんが、自ら男子を下校に誘った。

 これがどういう状況を引き出すのかと言うと、こういう状況だ。


「え、え!? 浅間さん!?」


「マジか!? もしかして洗脳でもされてるのか!?」


「なんであんな奴と……!」


「喰らえ、我が滅法呪殺陣――ッ!」


 洗脳なんて在らぬ疑いをかけるのは止めて欲しい。

 出来たら滅法呪殺陣も止めて欲しい。


 と、そこで俺のスマホがバイブレーション。

 液晶に浮かぶのはライン通知。


 お相手は褐色ギャルである。


『昼休み、屋上に来い』


 なぜに不良の呼び出し風。

 チラリと視線を詩織に向けると、教室の後ろの方で友人ギャルズと楽しく談笑していた。


 それが逆に怖いんだよなぁ……。



  †



 針のむしろとしか形容できない状況の中で無事に授業を乗り切り、俺は菓子パンを持って教室を出る。

 目指すは屋上。

 スタコラサッサと教室を後にして、屋上へと続く階段へ。


「コウくん、そっちは立ち入り禁止だよ?」


「ヘァッ!?」


 驚きのあまりヒトデマンのような声を出してしまう。

 振り返ると、そこに居るのはマヤちゃん。


 満面の笑顔である。


「もう、そんなに驚くなんて酷いなぁ。でも、とにかく屋上は立ち入り禁止だよ? それとも、普段優等生のコウくんが校則を破ってまで行く用事が何かあるのかな?」


 めっちゃ鋭いんですけど。


「あ、いや、ははっ。用事なんてないよ? ただ、時にはやんちゃしたくなると言うか」


「……へー。じゃあ、私も行っていい?」


「えっ?」


「やっぱり校則違反は見過ごせないし、でも告げ口するのも嫌だから……それならコウくんと一緒にやんちゃするのもいいかなぁって」


「い、いや、マヤちゃんはご学友の方とお食事をとられた方が、い、いいのでは?」


「コウくんもご学友だよね!」


 マヤちゃんの勢いに頭がどんどん真っ白になって行く。

 でも、詩織との関係がばれるのは駄目だ。


 正直なところを言うと、俺が調子乗るなと叩かれるくらいは良い。

 だが、詩織が友人ギャルズから馬鹿にされるようなことがあったらと思うと……やはり隠すのが得策だろう。


「ごめん、今日は一人で食べたいから」


 すると、マヤちゃんはスッと目を細め――かと思うとにこっと微笑んだ。


「そっか、じゃあ仕方ないね。コウくんの嫌がることがしたいわけじゃないからね。でも、放課後は約束だからね!」


「う、うん」


 頷くと立ち去って行くマヤちゃん。

 ここまで来ると『もしかして俺の事好きなんじゃね?』と思ってしまう。


 だって昨日は俺のことばかり質問して来たし、その後に誰も誘わないことで有名な彼女が下校に誘って来た。

 断れば朝一番で約束を取り付けてきた。


 今朝のクラスの様子から、あれがドッキリの類ではないことは確かだ。


 となると……いや、そんなはずないだろ!

 だって昨日初めて話したんだぞ?


 こんなのあれだ、童貞がちょっと仲良くなった女子に対して『こいつ俺の事好きなんじゃね』と思ってしまうのと同じだ。

 わかってる、わかってるんだけどなぁ。


 けど一度考えたら妄想は止まらなくて、恥ずかしさから逃げるように屋上へと駆け上った。

 詩織が何故呼び出して来たのか、その答えを求めて。

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