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ep14・ストーカー対策会議2。

ブクマ評価感謝です。

 手紙を見るとすぐに、スマホを取り出す。

 持ちろん連絡相手は詩織だ。


 俺は彼女に電話を掛けようとして、寸前で手を止めた。


 待て、このことを詩織に告げていいのだろうか。

 彼女は以前、何かあったらマヤちゃんに相談しろと言っていた。


 逡巡した後、俺は一つの電話を掛けた。

 相手は……。


『なに?』


「詩織か、少し話がある。今どこだ?」


 詩織だった。



  †



 「浮気になるぞー」と言ってきた褐色ギャルを呼び出したのはいつも使うファミレスだ。

 まだ登校までには時間がある為、ドリンクバーを注文して切り出した。


「今朝、こんなものが投函されていた」


「ん、どれどれ」


 一枚目の封筒を詩織は見る。

 それは『浅間マヤと別れろ』と書かれた手紙だった。


「わざわざ浮気覚悟で呼び出して、内容がこれ? こういう相談は彼女にしろって言ったじゃん」


「あぁ、そっちは後でマヤちゃんに言うけど……もう一個の方を見てくれ」


「はいはい、っと……」


 詩織は封筒を手にして僅かに固まった。


「それも一緒に投函されてたんだ」


「……そっか」


「そっかって、あんまり驚かないのか?」


「そりゃあ、まぁ。だって同じ中学の奴は大体知ってるし、人の口に戸は立てられないって言うしね。浅間さんって言う前例もあるし、いつかはこうなると思ってたよ」


 シレッと言ってのける詩織に、逆にこちらが驚かされる。

 だって、もしこれが学校にばれるようなことがあれば……。


「……俺が浅間さんと別れたら、バラさないで貰えるのかな」


 思わず口から零れ出ていた。


「何言ってんの。私がそれを望むと思ってんの?」


「……でも」


 わかってる、俺を幸せにしたいと口にする詩織が、自分のことで迷惑をかけるのを嫌うことくらい。

 でも、俺は大切な親友が破滅するかもしれないってのに、ただ黙って見ているだけ何て、そんなのは嫌だ。


「私のことは放っておいていいから。ばれたとしても、弁明すれば案外何とかなるかもしれないしさ」


「だったら、その時は俺も一緒に言って周るよ」


「……」


「何か言えよ」


 俯き気味にストローに口を着けていた彼女は、数秒の間を開けてから一言。


「ごめん」


 最近謝られてばっかりだ。



  †



 学校に到着して暫くすると、マヤちゃんが登校してきた。

 俺は彼女の手を引いて、普段人気の無い廊下へと移動する。


「どうしたの? コウくん」


「実は……」


 俺は二つの封筒と今朝の詩織のことを説明。

 浮気するつもりはなかったが、心配だった。と素直な気持ちを吐露した。


「……」


 無言で封筒を見下ろすマヤちゃん。

 彼女が注目していたのは『浅間マヤと別れろ』と書かれた紙だ。


「えっと、マヤちゃん?」


「あ、うん。ごめん。ちょっと考え事してた。……それで、コウくんは詩織さんを助けたいってことなの?」


「うん」


「それは友達として、何だよね?」


「うん」


 力強く、マヤちゃんの目を真剣に見つめて返事をする。


「俺は、脅迫とかもっと言えば身近な人が悲しんだり苦しむのが嫌だ。……マヤちゃんならわかるよね?」


 以前、彼女から俺のことは全部知っていると聞いた。

 だから確信して言う。


 俺の過去を知っている彼女なら。

 俺の両親の死を知っている彼女なら。


「わかるよ。コウくんのそう言うところも好きだから」


 絶対にわかってくれると確信していた。


「マヤちゃんにも、犯人を突き止めるのを手伝ってほしいんだ」


「それはもちろんだよ。こっちの封筒の犯人も突き止めたいしね」


「そうだね、そっちの方も……さすがに住所までばれているとは思わなかったよ」


「ほんとだよね! ストーカーだよ! ストーカー!」


 お前が言うか。

 とは喉下まで出かかったけれど、飲み込んだ寸感であった。


「あ、あと私から一つお願いしても良い?」


「なに?」


「あのね、この件が片付くまで何回か詩織さんと会うことになるでしょ?」


「そりゃあ、本人は別にいいって言ってたけど……俺はそのつもりだったよ」


 でもそれがどうしたのだろうか。


「それでね、あの……我儘なのはわかってるんだけど、その時は私も呼んでほしいの。あんまり参加できないかもしれないけど、出来るだけ二人きりで会わないで……」


 マヤちゃんは俺の袖をキュッと掴んで、懇願してくる。

 信頼しているけど、何処か不安の色を帯びた瞳は、絶対的な安心感を与えたくなる。


 俺は周囲に目が無いのを確認してから、彼女を抱きしめた。

 めっちゃ照れくさいけれど、強く、強く。


「不安にさせてごめん。約束する。二人きりは出来るだけ無しの方向だね」


「うん、ありがとう……コウくん大好き」


 人の足音が聞こえるまで、そうして彼女を慰めつつ、思った。

 詩織もマヤちゃんも、どちらも驚くほどすんなりと話し合いが終わったな、と。



  †



 その日の午後。

 この日は五限目に総合学習を用意していたのだが、身近に迫った校外学習についての話し合いが行われるとの事。


 当学校の二年生の行先はクラスごとに自由で、五人から六人の班に分かれて行動することになっていた。

 本日は班決めである。


 しかしここで緊急アラート発生である。


 班決めは自由に行われる物であり友人知人と皆班を組む。


 結論を言うと、俺は余った。


 当たり前である。

 元々冴えない奴と言う事で余ることは確定していたのに、最近では学校一の美少女と付き合い始めたのだ。浮きに浮いていた。


 そしてもう一つ、俺が余っている理由がある。


 それは……。


「やったぁ、このまま私とコウくんの二人班だね」


 俺の首に抱きついて歓喜の表情を見せるマヤちゃんである。

 だれがこんなバカップルの所に入るんだって話ですよね、はい。


 でも人数上、数名余りが出ることになり、俺たち以外にももう一人あまりの人間がいた。


 そいつがテクテクとこちらに近付いてくる。


 それは少年だった。


 金髪に吊り上った目付き。

 目の下には隈があり、不良然とした姿格好。

 学ランの前は開け放たれ、中には赤いTシャツとジャラジャラとしたネックレス。

 いつの時代の不良だと突っ込みたくなる指ぬきグローブと、『暴飲暴食』と書かれたマスク。


 そいつは俺たちのすぐそばまでやって来て一言。


「喰らえ――滅法呪殺陣」


 そりゃ、余るよな。

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