第3話 ウツキ、戦闘スタイルが決まる
目が覚めたらいつもと違う見知らぬ天井だった。
俺は驚いて飛び起き、周りを見渡す。
「どこだよここは」
そして、窓から外をみて、やっと気づく。
「俺、冒険者になったんだった」
シロ・ウツキはそういって、2度寝の準備に入った―――
……
…………
「って違うそうじゃなかった、まだやることがいっぱいあるだろ、二度寝しようとしてどうするんだ、俺」
一人でそんなことをしつつ、俺はステータスを確認した。
ステータスが見たいと思うと、目の前に現れる。
「えーと? レベル2で、気力2・力1・防御力1・俊敏性2・器用2・運2ねぇ」
まだレベル2だしこんなものだよな。
いろいろ見るところはあるっぽいが、とりあえずスキルというのが気になった。
「確か昨日説明の時スキルがあるとか言っていたな。ちょっと見てみるか」
『スキル』というところを押してみると、スキル、という欄にはまだ何もなかったが、パッシブスキルという欄には何かがあった。
「パッシブスキル?スキルとは違うのか?」
説明を見てみると、常時発動しているスキル、書いてある。
「んで、えーとなになに? 看破眼?なんだこれ」
看破眼は、『冒険者』になったときに与えられたものらしい、敵の名前や状態異常、興奮具合、体力も理解できるようになるようだ。敵でなくても、花の名前や知らない道具なんかも理解できる。
つまり、この世界で生きていくために最低限の情報を与え、この塔に来る前では持ちえない知識を補ってくれるスキルというわけだ。
「まぁ確かに、~が必要、なんて言われたときにわからなかったら困るしな」
看破眼の説明を最後まで見ると、あることに気づいた。
そこには、発動条件「スキルを確認する」と書かれている。
「発動条件なんてものがあるのか。となると、スキルは発動条件を満たさないと解放しないのか」
もう一度スキルを確認していくと解放条件が書いてあるものと書いてないもの、鍵のようなマークがついたものもある。
「ん? 取得制限?まさかスキルを得る人数が限られているやつがあるのか?」
最初のほうは所得制限がなかったが、下のほうに行けば行くほど、所得人数が少なくなっていき、1人だけなんていうのもあった。
「一人だけのスキル、かっこいいなぁ、手に入れられるなら手に入れたいもんだ」
そんなことはないだろうけど。
そして俺は他の確認作業に移った。
* * * * *
「ふぅ」
俺はいろいろな確認作業を終わらせ、一息ついていた。
少し体の疲れが抜けたところで、このままベットで寝てしまおうかと考えたが、そろそろ宿を出る時間だ。
「さぁ、行きますかね」
俺は宿屋の主人に鍵を返し、都市周辺のモンスターの討伐に向かう。
街には俺以外の冒険者が4,5人になって行動していた。
まだこの都市にはほとんどの冒険者が留まっており、周りを見渡せば冒険者だらけだ。
そんな人たちの横を縫うようにして通り過ぎ、目的地に到着した。
俺が向かっていたのは、昨日とは違い、都市の北門からでてすぐのところだ。
ここには、俺の狩りの仕方に適した場所があり人もいない、危険はさほどないだろう。
「よし、始めるか」
身を潜め、息を殺し近づき、モンスターを倒す。
「これで1体目、はい、次~」
俺は次のモンスターを見つけ、息を潜めた――――。
* * * * *
そして、6時間ほど休息を挟みながら狩りを続け、周りにモンスターがいないことを確認し、座り込んで干し肉を食べつつ、ステータスを確認するとスキルが追加されていた。
「えーとレベルが8で、おお、やっとスキルが使えるようになるのか、何が使えるんだ?」
スキル欄に『潜伏』『モーメントスレイ』の二つが表示されている。俺はそのスキルの説明を開いた。
『潜伏』:周囲に溶け込み、気配を消す。解放条件、敵に気づかれずに100回接近する。
『モーメントスレイ』:標的に一瞬で距離を詰め、斬撃を放つ。斬撃の意思の有無で、斬撃を放たずに移動できる。 射程距離10m 解放条件、敵に気づかれづに接近し、100回敵を倒す。
「潜伏にモーメントスレイね、これで狩りが楽になりそうだ」
そして俺はスキルを試すため、周囲にモンスターがいないか見渡す。
「お、いるな、よし『潜伏』」
全く音を立てずに移動できるようになり、簡単に敵に近づくことができる。
潜伏の状態で敵に近づくと、敵の警戒範囲が見えるようになっていた。
モンスターの半径2あたりが黄色く光る。
「これがあいつの警戒範囲か、よし『モーメントスレイ』」
体の重心を前に倒すとスキルが発動した。
体が一時的に軽くなり、狙いをつけた場所に一瞬で距離を詰めた。そしてスキのない滑らかな動きで、敵を斬り付けた。
モンスターは悲鳴を上げることすらなく、消滅した。
「これはすごい、今までに体験したことのない感覚だな。だが体は自然にその動きに合わせられる」
初めてのスキルの使用で興奮していたが、それも少ししか続かなかった。
激しい運動はしていないはずだが、なぜか息が上がっている。
「はぁ……はぁ……。あーくそ。まさかスキルの使用は気力を使うのか……」
レベルが上がればかなり使えるようになると思うが、今はレベルが低い、連続で使えて3回までだろうか。
「使いどきを選んで使うことにしよう。ふう。スキルの使用で疲れたな。そろそろ戻るか」
俺は荷物を回収し、都市へ向かった。