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第9話 親友

妄想の産物第9弾です。約束の21日です。

新キャラ出てきます。


やって来ました約束の21日‼


結局嘘から出た真というかあまがやと一緒に来た日から学校の課題が山のように出たせいで今日までアネモネに来れなかった。


でも、今日はずっと2人きり!この数週間分なんてあっという間にチャラだ。


そういえば、あの日コンビニから帰ってきたらあまがやはにこやかに笑ってて禁断症状はどうしたって感じだったし、ゆうちゃんはなんとなく顔色が悪かった。というか険しい顔をしていた。まぁ、私の観察眼なんてあてにならない。


今日を楽しもう!


あーもう、にやにやが止まらない。

昨日はパックしたし、今日はいつも以上に気合い入れてメイクしたし、手土産だって持ってきた。昼の1時からの待ち合わせだからもしかしたらお腹が空いてるかもということでデパ地下でサンドイッチを買ってきた。前にゆうちゃんが美味しかったって言ってたやつだ。


今日は何もかも完璧!スキップしながら歌いたい気分だ。


ゆうちゃんの家は店のすぐ上らしいのでいつも通り店に入る。もう慣れたものだ。


カランカラン


「こんにちはー。」


返事がかえってこない。もう一度さっきより声を大きくしてみる。


「こんにちはー‼ゆうちゃんー?」


何も返ってこない。そもそもそんなに大きな店じゃないんだから聞こえないはずがない。


おそるおそる店に足を踏み入れる。営業中じゃないため電気が点いてなくて店内は薄暗い。自然光は入ってきているが、曇っているせいで弱い。


嫌な汗をかく。誰に対してかわからないが足音を立てないように、気づかれないように歩く。


と、テーブル席の座席で寝転がっている人がいることに気づく。

体がビクッと跳ねた。

べべべべべべ別におどろいてなんかないしぃ‼‼


来るのが遅くて寝ちゃったのかな?


起こしても悪いからそっと近づく。日除けにかけているタオルで顔が隠れていて見えない。


近くの席に腰を掛ける。


穏やかな時間が過ぎている。

天気は悪いけど心の中は冴え渡っている。


じっとゆうちゃんの方を見つめる。

と、ここでおかしな点に気づく。


ここにいる人=ゆうちゃんだと思っていたが、体格があまりにも違う。

私の記憶の中のゆうちゃんはこう、ガッチリとしていて肩幅が広かった。だが、この横たわっているゆうちゃんはそれに比べるとあまりにも貧相だ。それに肌が白い。あの小麦色の肌ではない。


ガダンっと音をたてて椅子が倒れる。


ちょっと待て。こいつ誰だ。


嫌な汗が再び吹き出す。

体表は冷たいのに内側はあり得ないくらい熱い。


ドクン…ドクン…ドクン…


心臓の音うるさいよ。これじゃあまるでホラゲの主人公みたいじゃないか。1歩2歩後退りする。

と、何かに衝突した。


「きゃああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!」

瞬間的に悲鳴をあげていた。




「それであんな悲鳴をあげたのか。」

ゆうちゃんがゲラゲラ笑う。


いや、笑い事じゃないから。めちゃくちゃ恐かったんだから。


それにこの店どことなく非現実感あって二次元みたいなことが本当に起こりそうなんだもん。


むくれながら紅茶を一口飲む。今日は定休日だからコーヒーもお休みらしい。

市販のティーパックでもきちんと手順を踏むと格段においしくなる。


飲みながらちらりとゆうちゃんの隣の人物を観察する。


杉田さんという彼はゆうちゃんの高校の同級生らしい。

ゆうちゃんと同じくゲーマーで自然と仲良くなり、今も付き合いが続いているそうだ。なんでも前の職場も一緒だったらしい。


で、彼はなんで今日ここにいるんだろう。


そのままゆうちゃんに目線をスライドさせる。


すぐにそれに気づくとゆうちゃんは申し訳なさそうに説明を始めた。


「昨日こいつが閉店間際にいきなり来てさ、新発売のソフト持ってきて…ってなったらやらないわけにもいかないじゃないか。酒も飲みながらそのままプレイし続けたら気づいたら朝で…こいつに留守番頼んで急いでありさの所に行ってさっき帰ってきたんだ。」


なんか目が泳いでるし、普段そんな風に長く喋らないのにやたら長いしなんか怪しい。というか何か隠してる…?


ジトーっと見つめるが分からない。


まぁ、ゆうちゃんがそう言ってるんだから信じよう。


で、ここからが問題だ。


明らかに杉田さんに帰る気がない。

私が手土産に持ってきたサンドイッチ食べてるし。多めに持ってきたんだから構わないっちゃ構わないんだけどね?!

ちょっとだけ思うところはあるよね。


というかサンドイッチ持ってっていいから帰ってくれないだろうか。

ゆうちゃんと2人っきりを楽しみにしてたんだよ‼後生だから‼


まぁ、心の中でどんなに叫んでも通じるわけないよね。


あーもう。


サンドイッチを1つつまむ。

卵とキュウリというなんてことない組み合わせだけどおいしい。


こんなサンドイッチ、前なら1口で食べてたのに最近は少しずつ、味わうように食べるようになった。


正直、婦女子になるためには何をすればいいかわからなかったし、そもそも婦女子ってなんだ?って所から始まったから、とりあえず女の子っぽい仕草はなんでも取り入れた。

これもその一つだ。


よく咀嚼して飲み込む。


ゆうちゃんはハムサンドに手を伸ばした。

そして、口をつけよう、としたその瞬間に

杉田さんが何かを口にねじ込む。


一瞬静止するとが、おそるおそる咀嚼を始めるゆうちゃん。

咀嚼を進めるにつれて眉間のシワが深くなっていく。


バンッ


勢いよく立ち止まりどこかへ走っていく。


「…あの、何食べさせたんですか?」


ニヤニヤしながら走っていったゆうちゃんを見ていた杉田さんに尋ねる。


「これだよ」


差し出された手のひらには赤黒い細長い物体が…これって鷹の爪?


「なんでこんなもん持ってるんですか?」


杉田さんはニヤニヤしていた笑顔を引っ込ませ穏やかな笑顔に変わる。

否、笑顔ではない。

どこが、とは言えない。ただ、恐い。

さっきまで暖かかったのに、急に寒くなった。


「キミと二人きりで1度話しておこうと思って。」


ヒュっと呼吸がつまる。

そんな私にお構いなしに杉田さんは続ける。


「俺最近忙しかったせいで昨日久しぶりに中野に会ったんだよ。そしたらさぁ、いつの間にか小娘が入り浸ってるって聞いてさぁ…」


そこで口元の笑みも消して続ける。


「端的に言うともうここには来ないでくれるかな?」


…は?

なんでそんなこと言われるの?


「キミはまだ若いんだから他にも色んなコミュニティがあるだろ。そっちに戻りな。そっちの方がたのs…」


バンッ


机を叩いて立ち上がった。


「どこが楽しいかは私が決める。部外者が指図しないで。」


「そうはいかない。キミ、中野のこと好きだよね?ちょっと見てただけでわかったよ。キミに中野を幸せにできるわけ?」

そこで一度区切る。

「…中野は大切な…親友なんだ。キミみたいな若い子に預けられない。」


この人はただ単に私が気に入らないわけじゃないのか。

本当にゆうちゃんのことを大切に思っているからこそ私にこの質問を投げかけたのか。


それなら私も本気で答えなきゃ。


「確かに私はたかだか19年しか生きていない、お二人から見たら子供にしか見えないかもしれません。でも、19歳ってそんなに子供でもないんですよ。法的に守ってもらえるわけでもない、私は学生だけど働いている人だっていくらでもいます。それにあと4ヵ月もすれば20歳になります。」


ここで一呼吸置く。


「私はゆうちゃんに幸せにしてもらうつもりもするつもりもありません。…ただ、私がゆうちゃん…悠司さんといると幸せなんです。それに今は無理でも必ず『ゆうかがいれば幸せだ』って言わせてみせます。」


静けさが二人を包む。


沈黙を破ったのは杉田さんだった。


「…と言ってますが、それを聞いて中野さんはいかがですか?」


杉田さんは再びニヤニヤしながらドアの方を見ている。そこにはさっき出ていったゆうちゃんが立っていた。


みるみる顔が熱くなっていくのを感じる。

「う、あ、あ、あう、う…」


意味不明な呻き声しか出てこない。


…よし、逃げよう。


素早く荷物を掴み玄関へ向かう。

さよならー┌( ┌ ^ω^)┐


「逃がすわけないだろ。」


アサイ ハ スギタ ニ ホカクサレタ‼


「頼む‼逃がしてくれ‼それかいっそ殺してくれぇーーー‼‼」


私の願いも虚しく椅子に再び座らせられる。しかもどこから出したのか紐で縛られ逃げれない。


…もう少しきつくしてもいいのに。


じゃなくて‼後生だから!帰らせてー!

まだ言うつもりじゃなかったの‼自分でもこの展開予想してなかったのぉ‼


私の願いなんて完全に無視して杉田さんは自身の帰りの支度を始めた。


「じゃ、俺帰るから。きちんと2人で話し合えよ。」


とゆうちゃんの肩を叩きながら玄関へと向かう。

と、そこで1度Uターンして私の目の前にやって来た。そして少しかがんで私にしか届かないほど小さな声で呟く。


「中野…悠司のことよろしく頼むよ。悠司の兄として2人のこと応援してるから。」


最後にニヤっと笑って帰っていった。


というか今とんでもない爆弾投下していきおった。


え?兄?兄って兄弟ってこと?

でも高校の同級生って紹介してたよね。


んん?


もしかして漢字変換ミスった?


兄じゃなくて…義兄?

…ってことはありささんの…?!


私とんでもないことしちゃったんじゃ…


嫌な汗が止まらん。


「ゆうか。こっち向け。」


いつの間にか目の前に座っていたゆうちゃんが声を掛ける。


「これからの話をしようか。」


それは正しく笑顔のはずなのに、あまがやより、杉田さんより、今まで見た笑顔のどれよりも恐ろしかった。


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