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魔剣との出会い

ニヴルヘイム。

それは漆黒の霧と、氷で覆われた小さい街の名前だ。その街では、【漆黒のドラゴン】と称される魔物が、街を支配しているという噂があった。だが、これは噂に留まることではなく、現実に起こっていることだった。その影響からか、別の街に移り住む住民もでてきた。挙句の果てには、ニヴルヘイムをドラゴンに明け渡す有様だった。そのことを迷惑に思った人達が、そのドラゴンを倒す為に、何人もの人を集めることにした。集められた人々は、己の力の限りを尽くして立ち向かったという。だが、誰ひとりとして生きて帰ってくることはできなかった。


【始まり】

1

今日もまた、何人もの兵者が集められた。その中には子供までいたが、女子供関係なしに集められた。集められた人々はドラゴンを倒すか、この街で死ぬかしか道は残っていなかった。何故なら、ニヴルヘイムを出るには、何らかの理由が無ければ城壁の外にも出られない。理由を付けて出られても、期限を決められている。それに逃走しようとすると、城壁を出る時にかけられる魔法でニヴルヘイムにワープされるからだ。期限切れでも同じことになる。

今回集められた中の1人、三鷹志郎(みたかしろう)、それが俺の名前だ。

俺と一緒に集められたのは、俺を入れて30人。この30人でいくつかのチームを作り、そのチームでドラゴンを倒すまでの間生活していくらしい。

俺のチームは、女の子が2人、子供はおらず、あとは男が3人の5人編成のチームだ。

どうにもみんなシャイなのか話がなく、無言のまま向かい合って、輪のような形で座っている。何もすることが無く、誰一人微動打にしない。

「とりあえず、まずは自己紹介をしよう。俺は三鷹志郎。一応、職業は"アタッカー"だ。よろしく。」

場の空気を良くするために、と考え、話題提示も兼ねて自己紹介を提案した。お互いを知らないチームというのも変だ。

職業と言うのは、ひとりひとりに決められた役割の様なもので、能力値に応じてその職業が与えられる。これはこの街だけのものではなく、魔物狩りをする者には誰にでも与えられているものだ。

俺に与えられた"アタッカー"は、剣術や体術を主に使う職業だ。アタッカーでも、大剣か短剣に別れる。短剣はスピード重視で、大剣はパワーを重視する。力のない俺は短剣だ。

「じゃあ次は私で。坂本奏(さかもとかなで)です。職業は"ヒーラー"です。」

おどおどしながら自己紹介をしたポニーテールの女の子。この娘の職業の"ヒーラー"は、回復魔法や防御魔法の能力値が高い人が選ばれる。冒険のチームでは一番重要な職業だ。回復が出来ないといつ死ぬか分からない。

「僕は桐谷斗真(きりやとうま)。職業は"ランサー"。よろしくね。」

明るく自己紹介をする男性。桐谷斗真。この人は有名なランサーで、他の街でもいくつもの討伐の依頼を受ける人だ。ランサーは、文字通り槍を使う職業で、俺のアタッカーとほとんど同じ職業だが、正直この人がいて心強い。有名なランサーで、頭もいい。

だが、この人が呼ばれるということは、相当な敵というのは確かだ。第一、何千人も立ち向かったのに勝てなかったドラゴンだ。生きて帰れるかも危うい。

その他にも、俺と同じアタッカーの増田章悟(ますだしょうご)や、マスターの広瀬奈々(ひろせなな)がいる。

マスターとは、簡単に言えば魔法使い。魔法で相手に攻撃を与えたり、相手の動きを封じたりする。魔力が高い人ほどなれる。

俺と同じアタッカーの章悟は、大剣を使うパワー型のアタッカーだ。

チームのバランスは凄くいい。相手が「強い」以外の情報がない時点で、勝てるという確信はないが、普通のクエストなら余裕でクリアできるだろう。そんな感じの見本的なチームだった。職業だけは…。


2

自己紹介が済んで、ひと段落ついた翌朝。相変わらず朝か夜か分からないくらいに黒い霧がこのニヴルヘイム全体を覆っている。

俺達のチームは、ある程度お互いの力を見るという事も兼ねて、隣町の森に行って狩りをする事にした。食料も必要な今だからこそ、このような狩りが重要になる。ドラゴンの前に死んでは意味がない。

「今回の目標はゴブリンだから、そんなに強い方ではない。落ち着いて行こう。」

そう言ってみんなを落ち着かせる。

今回のクエストはゴブリンの討伐と、ゴブリンの所持品の剣の回収だ。ゴブリンの剣は特殊な鉱石で出来ている。その鉱石の入手は、今では困難とされており、とても貴重である。その上、ゴブリンの剣を回収して来ることによって、ゴブリンを討伐したという証拠にもなる。ゴブリン自体は、この世界で最も弱い魔物で、緑色っぽい体と、その体と同じくらいの大きな剣を持っているのが特徴だ。

ゴブリンは身長が人間の半分位で、大きくても1メートルにも満たない。

「これなら楽勝だな。」

笑みを浮かべながら呟く章悟。それに対して冷静で、自己紹介の時とは一変している斗真。他の2人は、出会い始めと変わらずおどおどしている。

森につくと、動物の気配はなく、ただただ大自然という感じだった。植物も豊かで、山菜がちらほら見えている。そこで少し山菜を取ることにした。食料はいくらあっても困らない。


一時間近くがたち、ある程度山菜を集めたその時だった。

「あぁぁぁーーーーーっ!」

それは章悟の悲鳴だった。みんながその悲鳴が聞こえたのか、その方向にすぐに駆けつけた。

「章悟!」と駆け寄る俺と斗真。目の前にはゴブリンが1匹。章悟の足には深い切れ目。周りには血が飛び散り、ゴブリンの剣にも血がべっとりと付いている。

「奏、すぐに治療を!斗真、行こう!」

咄嗟に支持をする。奏はすぐに回復魔法で章悟を治療する。その間、奈々が防御障壁を展開する。

俺は今なら勝てると確信して、ゴブリンに飛びかかった。何しろ一匹だ。負けるわけがない。

「慌てるな!引け、志郎!」

斗真は焦りと衝動でゴブリンに飛びかかる志郎を止めようとするが、志郎はゴブリンに一直線だ。するとゴブリンの後ろの木の影から、多数のゴブリンがでてきた。ゴブリンは全て志郎に襲いかかる。咄嗟に後ろに下がる志郎。

数は全部で6匹。先程とは違い、警戒している俺の後方で何か声がした。

それは奈々の声だった。少ししてから、それが呪文だと気付いた。

奈々が呪文を唱えたあと、ゴブリンの足元には魔法陣が浮かび上がる。その後、魔法陣から炎が吹き上がり、炎は徐々にゴブリンを包み込む。

数秒後、炎が光を放って消えていった。ゴブリンは灰になって風に少しづつ溶けていった。章悟は奏の治療により、足の傷はふさがって、傷は見当たらなくなっていた。

それからゴブリンの剣を回収し、ニヴルヘイムの隣町でクエスト完了の報告をしたあと、ニヴルヘイムの拠点に戻った。


3

いつも通り、今日も狩りをする。ここに来て今日で3日目。やっと生活にも慣れてきた。

そんな矢先に俺らを襲ったのは、強力な魔物であるペリドットと呼ばれる魔物の討伐依頼だ。その名の通り、宝石のペリドットが腕に付いている。ペリドット(宝石)は、この世界では武器を作る時に使う。ペリドット以外でも、宝石は魔力を込めるためのコアと呼ばれるものに、一番ふさわしい物なのだ。

魔力を武器に込めることによって、耐久性を増したり、攻撃力を増したりできる。

いつもの森に行くと、ペリドットはすぐに見つかった。だが、その姿を見て唖然とした。

「で…でかい…。」

胴体は黒ぐろとした鱗のようなもので覆われていて、背中からは大きな羽が生えている。両腕には禍々しい光を帯びたペリドットが輝いている。

「こいつは腹の当たりを狙うんだ。それ以外は硬すぎる。」

斗真の言うように、腹の当たりには鱗のようなものも見当たらなかった。

腹だけを集中攻撃するが、やはり硬い。簡単には刃が通らない。

その時だった。

ペリドットが痛いのか分からないが、暴れだした。殴りかかってくるペリドットに、必死で応戦する。だが、やはり強いものは強いのだ。

「ゴホッ、ゴホッ、オェッ。」

1回だけではあったが、ペリドットに殴られた。そのたった1回が、戦況を大きく変えた。

剣は粉々に折られ、殴られた痛みで立ち上がる事もできない。

次の瞬間。

轟音と共に、爆風が広がる。

俺の目の前に広がっていたのは、ペリドットの死体だった。

「何やってんだ、お前ら。」

あきれたような顔で後ろに立っていたのは、別のチームの火神玲弥(かがみりょうや)だった。

俺達は、火神とペリドットを交互に見るが、驚きで声も出なかった。

あれだけ強い相手を最も簡単に倒してしまったのだ。驚いて当たり前だ。


4

ペリドットに剣を折られたせいで、狩りにも行けない。剣のない剣士なんて笑いもんだ。だから今日は剣を作ることになった。幸い、ペリドット(魔物)のおかげでペリドット(宝石)があるから、武器の材料は揃っている…たぶん。

隣町の武具屋に行くと、そこには沢山の剣が置いてある。

「初めて見る顔だね。俺はデルタだ。よろしく。じゃんじゃん金を使ってくれよー!」

テンションが高いし、凄い筋肉が盛り上がっている。

「これを使って武器を作れる?職業はアタッカーなんだけど…。出来るだけ軽い武器で。」

ペリドット(宝石)を出すと、デルタは嫌そうな顔をして「分かった。」といって奥にこもった。

武器が出来るまでは、二三日かかると言われた。その間は、ベビーダガーという短剣を使うように言われた。ベビーダガーは、普通の短剣よりも二回りほど近く小さい。このダガーでは、まともに戦うのはきつい。

だが、何もしないなんてできるわけが無い。生活するにも食料が必要だ。最低限のクエストだけでもいい。やるしかないのだ。

3日ぶりのゴブリンだ。前より早く、数分で倒せた。次の日も、そのまた次の日も。

そんな事を繰り返しているうちに、剣は完成していた。ペリドットをコアに使った、黒い剣と、同じペリドットに特殊な魔力を込めて白くしたものをコアにした白い剣の2本。どちらもダガータイプで、とても軽い。

「これが…俺の新しい剣…。」

何か変な違和感がある。剣自体は凄くいい。前回のダガーよりも切れ味もいいし、断然軽い。なのに変な感じがする。あまりに言葉にできない、というより、表現できない違和感があった。それは生まれて初めて味わう感覚だった。

「まあ、いっか。」

そんな小さな違和感だけで、こんなにいい剣を売る気にもなれないし、売ったら剣がない。そう思い、気にしないことにした。

違和感が拭いきれないまま、店を後にした。その店を後にしてから、この魔剣との旅は始まった。これから先、どうなるか予想もつかないが、それでもやるしかない。そう思い、足を進めた。

この度、初めての作品を投稿させていただきました。幻影と申します。

あまり、他の作家さんと比べて面白くは無いと思いますが、少しでもこの作品を見て「面白い」と思っていただけると嬉しいです。

人に感情や気持ちを伝えるのも得意ではありません。

ですが、できる限り全力を尽くして皆様に面白いと思える作品を目指していこうと思っていますので、暖かく見守っていただけると嬉しいです。

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