9 危機感
今回の執筆者は、鵠っちさんです。
「本物の神? 機械仕掛けの神ではなく?」
「ええ、そうです。本物の神。」
俺が疑問を挟む暇などなく、なおも部長と研究員たちの話は続く。
正直、俺は二割ほども理解していない――――どころか、半分くらいは聞き流してしまっている。
「先程、あなたたちが手にしている魔導石程度ならば『敵』に感知されることはないと仰いましたが、それでもある程度集まれば感知され得るのではないでしょうか?」
「あなた方はなかなか鋭いですね。その通りです、この程度でも大量に集めれば感知されるでしょう。けれど現状、ここにあるだけならその可能性は無視できる程に低いでしょう」
意識をふと思考から現実に戻すと、どうやら話は随分と進んでしまったらしい。ついさっきのはずの疑問はすでに頭にはなく、代わりに新たな疑問がふいに口をつく。
「あの、無視できる程低いってことは、ゼロではないんですか」
「氏景お前なあ、そんな当たり前のことを訊いてどうするんだ。話の腰を折るんじゃない」
「いえ、そのことも考えておいた方がいいでしょう。なにせ敵は『機械仕掛け』の神なんですから。破壊された我々の施設よりも、感度の良いものが存在するかもしれません」
とりあえず俺は部長にしたり顔で応戦してみたが、どうやら部長はさらに次の ことを考えはじめているようである。その様子を察してか五十嵐先輩はもちろん、さすがの山野でさえも俺と同じく呼吸を忘れたかのようにその動向を見守っている。
「いつ施設を破壊されるかわからない。とあれば、あまり長居するのも良くない。そろそろ出ましょう」
「そうですか。では、続きの説明は道中にていたします。さあ皆さん、2日以内に次の目的地へ向かいますよ。装備は大丈夫ですか!」
いよいよ本格的に魔獣が蔓延る、文字通り『外』の世界だ。俺たちが魔法を習得するまではこの人たちが守ってくれるのだろう。
不安は募るが、同時に淡い期待も抱きつつ――――――
「いざ行かん、冒険の旅へ!」
俺の心の声は、山野がキッチリ代弁してくれた。さすが腐れ縁なだけはある。
次回の執筆者は、企画者の呉王夫差です。