89 もう一人の自分
今回の執筆者はまーりゃんさんです。
「本当は氏景に聞きたい事があって来た」
部長は聞きずらそうな声で俺に尋ねて来た。以前俺が村人に袋叩きにあった時、暴走と言うのか、俺の中にある意思“もう一人の自分”の事を聞いた。
「あの時はあんまり覚えてないです。当時のことはルクレツィオが知っているはず……」
「ああ、ルクレツィオに聞いた。普段の氏景ではなく周囲の奴等をやってしまった事は」
その件で来たと言う部長。
それを聞いたアリスは「待て、お主起こしたのか? お主の中のアレを…」と驚愕な顔で氏景に迫った。
その古めかしい口調は、さっきまでの不思議ちゃんな性格とは似ても似つかないものであった。
「いや……わからないんだ。あの時の事は……」
「アリス殿は知っているのですか? その訳を」
今度は部長がアリスに迫った。
「うう……その事はこの件が終わってから話そうとしたのじゃが。だが何故今に聞きに来たのか?」
「実はその時の被害者が氏景が救世主ではなく悪魔とか、奴等の手先だと言い降らしていたんだ」
「そんな俺は……」
当時の自覚が無かった俺は何も言えなかった。
部長はアリスに「知っているなら教えて貰えないか?」と聞いている。アリスは腕を組み考えていた。
「じゃが、その前に氏景と二人にさせて貰えぬか」
「えー、うー?! 背中流して上げたかったのに」
アヤノは膨れていた。だが極めて重要な話し故にアリスと氏景以外の者達は風呂から上がった。
「真実を語る前にお主は中に……もう一人の自分と会わなくてはいけない。何故主が救世主と選ばれたのか、神を越える力を持っているか知らなくてはいけない」
「ど、どうやって……」
アリスは氏景の胸に手をかざした。
「これはAIを創る時に偶然知った神域の仮の鍵となる言葉であるが後はお主自身で決めるしかない。……………神无威」
アリスの言葉で俺は真っ暗な闇の中に誘われた。
◆◆◆◆◆
『この世の救済たる我が者よ』
「えっ、誰?」
『人ガ神ノ理を極メ、又神ヲ作リ出ストハアリエン。ダガ人々ガ信仰二アリシ神々ハイル。人ガ神域ノ座ヲ作リ上ゲラレルノハ***ガアリ奉ラレ世界ノ在リ方ヲ知ラネバナラン。ソレニ……」
***の部分は聞き取れなかったが、デウス・エクス・マキナはアリスや教団関係者が創り上げたが、それは思想の果てに出来た物だと云う。
次回の執筆者は、企画者の呉王夫差です。