88 妖精のイタズラ
今回の執筆者は、鵠っちさんです。
挨拶が済んで満足げな表情になったアリスは、なぜだかタタタっと駆け寄ってきて、俺達の方へとダイブしてきた。
アヤノはギリギリで回避したので衝突を免れたが、おかげで俺一人でアリスを受け止めるはめになってしまった。後ろ向きに倒れたが、頭は打たずに済んのは訓練の成果だと信じたい。
「いたたた……」
「おー……。だいじょうぶ?」
とりあえず、目的の人物と接触できわけだが、なぜか物理的に(直接的な言い方をすれば肌と肌で)接触中なわけだが、正直どうしていいのか分からないのでアヤノに目線で訴えてみた。
「いいのです。いいのです。私だって、いつかは……」
虚ろな目でこちらを見てはいるが、全然目が合わない。しかも、なにやらブツブツ呟いていて、正直ちょっと怖い。まあ、今の状況を考えれば、女の子に裸で抱きつかれているのだから、見たくもない光景だろうとは思う。
「ちょっと見ない間に氏景もいい男になったみたいだねえ。うん」
「部長、一人で納得してないでどうにかしてください」
部長は部長で、呆れたような顔をしてこちらを眺めている。早く助けて欲しい。
「アリスさん。妙齢の女性がはしたないですよ」
言われてハッとしたかのような仕草をして、今度はアヤノの方へ向かった。積もる話でもあるのだろうか。今は気にしないでおこう。過ぎ際に、小声で「妙齢か」と言って小さく微笑んだのが妙に色っぽかったのも気にしないでおこう。あれこれ気にしていたら理性がもちそうにない。
いや、300年生きていて「妙齢」というのもいかがなものか? ……これも気にしないことにしよう。
二人でなにやら話し始めたのを確認して、こちらも本題に入ることにする。
「で、部長。どうして部長もここに?」
「それはこっちのセリフでもあるんだけどねえ。まあ、俺の事情から話すよ」
この話が長かったらのぼせてしまいそうな気もするが、部長は入ってきたばかりだし……と、遠慮していりうちに、「やっぱり風呂上りに話しましょう」と言うタイミングをはずしてしまった。
次回の執筆者はまーりゃんさんです。